※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年3月15日に掲載した記事の再掲載です。

株式会社ドーン
代表取締役社長 宮崎正伸

テクノロジーによる社会課題解決への熱い想いから
人々の暮らしの安心安全を守る
―兵庫県― 株式会社ドーン

地理情報システム(GIS)を活用したシステムの開発・販売を行う株式会社ドーンは、創業間もない1995年に阪神・淡路大震災を経験したこともあり、近年は、防災防犯や安心安全に関わるシステム開発に取り組むようになりました。緊急通報システム「NET119緊急通報システム」が全国の消防で採用されるなど、サービスを導入する官公庁や自治体が増えていることでも注目を浴びています。代表取締役社長の宮崎正伸さんに、同社の取り組みと今後の展望について伺いました。

命を守るシステムを消防・警察に提供

――御社は、日本の「地理情報システム(GIS)のパイオニア」的存在と伺っています。

宮崎社長 1991年の創業時から、地図を動かすミドルウェアを作っていました。インターネットで地図を使うとき拡大・縮小したり、上下左右に動かしたりしますよね。その動きを制御するソフトウェアです。こうした技術を消防や警察などに提供したのがGIS事業の始まりでした。

インターネットが普及するようになり、どんどん環境が変わって、十数年前から月額利用料をいただくクラウドサービスを手掛けるようになりました。現在、当社の売上は、ミドルウェアに関する事業が、付帯する受託開発を含め3割、クラウドに関する事業が7割となっています。

――数多くリリースされている防災・防犯関連のクラウドサービスのうち、消防本部向け「NET119緊急通報システム」は全国的に導入されていますね。

宮崎社長 「NET119緊急通報システム」は、聴覚や言語に障がいのある方が、急病やけが、火災などのとき、スマートフォンや携帯電話から119番通報できるシステムです。チャット機能で司令センターの司令員と文字対話をすることができるうえ、写真送付によって状況をより具体的に伝えることができます。司令員は、通報者の居場所をGPSの位置情報で特定しやすくなります。

2010年から提供をはじめ(開始当初の名称は「Web119」)、地元の神戸市を皮切りに、導入いただく自治体が順調に増え、現在、全国の消防本部の管轄人口の約56%をカバーしています。

――ビデオ通報ができる「Live119映像通報システム」「Live110映像通報システム」はどのようなサービスでしょうか。

宮崎社長 119番や110番通報をするとき、通報者は気が動転していたり、焦ったりしていて、状況をうまく表現することができないことがあります。一方、司令センターは、台数が限られている救急車や消防車をどう出動させるか、その通報によって判断しなければなりません。

「Live119」「Live110」を使うと、司令センターが通報者のスマートフォンのカメラ映像を確認することで現場の状況をより正確に把握し、的確な応急処置を通報者に指導することもできます。

事前登録やアプリのインストールは不要で、司令員が現場の状況を映像で確認したほうが適切に判断できると考えた場合、通報者のスマートフォンへショートメッセージで専用URLを送ります。それを通報者がタップするだけでスピーディーにビデオ通話が開始されます。また、隊員が現場に着く前に適切な準備を整えられるように、ライブ映像を現場に向かう救急車や消防車と共有できるようになっています。

実際、けがの重症化を防ぐことができた事例や、命を助けることができたという奏功事例をたくさん伺っています。使い方が簡単で、非常に実効性があると評判で導入が進んでいます。

――現場の消防隊員と司令センターのコミュニケーションにも活用することができるのですね。

宮崎社長 実は、サービス開始当初は通報者と司令センターのみの利用を想定していましたが、現場の方々の声を取り入れて、活用の幅が広がっています。救急車や消防車との状況共有もそうですが、アクションカメラやドローンのカメラと中継できるようになり、災害現場対応での活用も期待されています。こうして、救急隊員の方から要望をいただくと、当社の技術陣も実現しようと頑張ってしまうようです。

――AEDを救命ボランティアが運ぶというクラウドサービスも興味深いです。

宮崎社長 心停止事案で119番通報と救命ボランティアを連携させるシステム「AED GO」ですね。市民が利用できるAEDは国内に50万台以上あります。日本の設置数は世界でも有数なのですが、実は95%以上が使われていません。このような現状の改善に取り組まれている大学の先生と出会い、京都大学環境安全保健機構と共同開発しました。

119番通報を受けた消防は、現場の近くにいる救命ボランティアにスマートフォンのプッシュ通知で現場への駆けつけ要請を行い、アプリでAEDの設置場所と現場までの道案内をします。救急隊到着前にAEDを持って現場へ駆けつけた事案は2021年4月時点で累計9件あり、救助事案も出ています。社会課題の解決のひとつとして活用が進むことを願っています。

ほかには自治体の公式アプリなども手掛けています。たとえば、防災に関するアプリでは「東京都防災アプリ」や「台東区防災アプリ」などがあります。

お客様から学んだ「事業を止めない」ことの重要性

――「Live119」は神戸市で実証実験を行ったそうですね。地元とのつながりの強さを感じます。

宮崎社長 1994年の震災で、神戸市は産官学連携でGISを活用した新たな高密度地盤データベースを構築しました。そのとき、わたしたちのミドルウェア「GeoBase」を活用いただくことになりました。当時は、とにかく困っている人を助けなくてはというマインドが大きかったと思います。わたしたちも苦しかったのですが、途中で投げ出すことなく取り組んだことで、関係者とお互い信頼関係を築くことができました。

こうしたご縁もあり、「Live119」の実証実験は神戸市に協力いただくことができたのです。同じように「Live 110」は兵庫県警において実証実験に取り組みました。1年程度の実証実験の期間は無償提供になることもありますが、機能面や運用面の課題を解決し、サービスの完成度を高める大切な期間になっています。

防災・防犯関連のサービスに取り組むようになって十数年経ちました。自治体の方から、人の命を守る仕事は絶対に止めてはならないのだと教えていただきました。安心安全分野に携わる仕事であることに高い意識をもち、万が一のときでもサービスが止まらない体制にも万全を尽くしています。

――命を守るためのお客様の事業が止まらないように、という点では、「DMaCS災害情報共有・サービス」もそうですね。

宮崎社長 「DMaCS」は自治体の災害対策本部における被害情報等の一元管理や、初動対応の意思決定を支援するクラウドサービスです。たとえば、災害時、どこの避難所で何が足りないとか、どんな問題が起こっているかなどを現場の端末で入力でき、最新の情報がスピーディーに反映されます。

クラウドの長所としては、もし役所の建物が使えなくなり隣接市町村に災害対策本部を移すことになっても、インターネットにアクセスできる環境さえれば、すぐに対策本部の機能を担うこともできます。もし首長が海外視察に出ていても、同じ情報を共有し指揮をとることができるわけです。各地域の自治体で導入していただいており、今後も導入先が増えていくと思います。

――これらのサービスを利用する人には、何か特別なスキルが必要ですか?

宮崎社長 利用される方が簡単に使うことができることが私たちのサービスの特徴です。「NET119」や「Live 119」では、1分1秒が大切なので、最低限の手順で運用できることをポイントにしています。入力に手間がかかるとデータ収集が進みませんし、データ閲覧もわかりやすくなければ、活用しにくいですから。簡単に使うことができてこそ、こうしたシステムは浸透していくのだと思います。

当社が提供しているサービスに、クラウド環境で危機管理情報をポータル化できる「感染症危機管理システム」があります。インフルエンザを例にあげると、ある学校で何人休んだ、その近辺の病院では何人のインフルエンザの受診があったというデータが円滑に集まって一元化されると、どこでインフルエンザが流行りだしているかということが早く判断でき、保健機関による対応や注意喚起につなげられるというものです。導入された自治体では、入力が簡便である点を含めて評価していただいています。

次の社会課題の解決のテーマには「自動運転」も

――今後の事業の展開についてお聞かせください。

宮崎社長 自分たちの技術やノウハウを生かし、これからも社会課題の解決をしていくことに取り組んでいきます。現在市場に出している安心安全分野のサービスを拡充するのはもちろんですが、まだクラウド化されていない分野に当社の技術を活かすことで成長していきたいと考えています。

現在、移動通信システムは第5世代、第6世代に移行しつつあります。たとえば第3世代の通信システムでは通信量の面でも、セキュリティの面でも「Live119」の活用は実現が難しかったと思います。当社の事業は、こうした通信環境の革新に後押しされているところがあると思います。

企業が情報システムで扱う内容は基本的に社外秘であり、全てを自社の監視・管理下に置く、いわゆる「オンプレミス(自社保有型)」がかつての主流でした。現在は、ネットワークを通じて多くの人がサービスを利用できる「クラウド化」が進み、当社の技術が活かせる幅が広がるのではないかと捉えています。

例えば最近では、自動運転のためのダイナミックマップ整備に関わる事業に参画しています。ダイナミックマップは、交通規制や工事などの情報や標識の表示などを組み合わせたデジタル地図であり、自動運転車の制御にかかわる不可欠のデータなのですが、特に交通規制と道路上の表示を地理的に正確な情報として整備する仕組みにもクラウド方式を採用しています。

――ますます暮らしの安心安全を守るサービスが増えそうですね。

宮崎社長 正直に言うと、「安心安全」といっても、はじめは頭で考えていただけだったように思います。ところが、消防の方々と接するようになって、皆さんの真摯な思いに心を打たれました。彼らは、現場に1秒でも早く到着して、1秒でも早く消火や救助などの活動を開始して、1人でも多くの命を助けたいと、日頃から体を鍛え厳しい訓練を重ねています。安心安全を支えるインフラの重要性について、現場の意見に触れることができたのは、わたし自身にとっても社員にとっても「大きな財産」だと思います。

また私たちが開発したシステムも、想像以上に役立っているというのが正直な印象です。そんな使い方をするのか、とこちらのほうが勉強させていただくことが多いですね。わたしたちの技術が人の役に立っていることが実感できると、技術陣のモチベーションも上がります。それこそが、私たちが新しいものを生み出す原動力です。