投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。

そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2023年4月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。

(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信

1.投信市場における資金の流出入動向

「資金流入超を維持」

資金流出入は約570億円の資金流入超となり、前月(約5,760億円の流入超)から大幅に減少したものの、29ヵ月連続で流入超を維持した。

資産別の資金流入では、流入額の大きい順に、外国株式(約650億円)、エマージング株式(約260億円)、外国債券(約220億円)となった。外国株式の流入額は前月の約3,190億円から大きく減少した。

資産別の資金流出では、国内株式(▲約770億円)、国内債券(▲約110億円)、エマージング債券(▲約70億円)が流出超となった。国内株式は前月の資金流入超から一転して5ヵ月ぶりに資金流出超となった。

個別ファンドでは、「インベスコ世界厳選株式オープン(ヘッジなし・毎月決算型)」(インベスコ)(約550億円)が資金流入で1位となった。2位は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(三菱UFJ国際)(約340億円)、3位は「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJ国際)(約330億円)となった。

主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)

※合計には、グラフ表示していない、その他資産も含む

2.投信市場のパフォーマンス動向

「エマージング株式以外はプラス」

4月の金融市場は、米欧の物価指数が市場予想を下回ったことや一部企業の好決算などを受け、過度な景気悪化懸念が和らいだことから株価は上昇したが、金利はまちまちの展開となった。

株式市場は、中国や台湾などを除き、概ね上昇した。月前半は、日米欧株は原油の協調減産による原油高でエネルギー株を中心に上昇したが、その後は低調な米経済指標の発表を受け、全体的に下落に転じた。

月中旬は、米欧物価指数の鈍化を背景に上昇した。欧州株では、中国における高級ブランド品への需要回復を背景とした好決算により、同分野の関連銘柄が上昇に寄与した。日本株では米著名投資家が日本株への追加投資を示唆したことも好感された。

月後半は、米地銀の経営不安に対する懸念が再燃し下落する局面もあったが、一部の米ハイテク企業の好決算を好感し上昇した。日本株では、日銀が金融政策の現状維持を決定したことも追い風となった。

債券市場は、米独金利は概ね横ばいに推移し、国内金利は上昇(債券価格は下落)した。米・独10年国債利回りは、月前半は低調な米経済指標を受けて0.1%程低下したが、月中旬は米追加利上げや欧州利上げ継続観測が高まり、月前半の下落時点から0.2〜0.3%程反発した。月後半は、米地銀の経営不安に対する懸念の再燃や欧州物価指数の鈍化を受けて、月中旬の上昇時点から0.1〜0.2%程低下した。

日本10年国債利回りは、月前半は10年国債入札の低調な結果や、日銀の金融政策再修正に対する懸念により、日銀による長期金利変動幅の上限である0.5%近辺まで上昇した。その後、金融政策決定会合において金融政策の現状維持が決定したとアナウンスされると、金利上昇懸念が後退し、0.4%近辺まで低下した。

為替市場は、米ドル・円、ユーロ・円ともに円安が進行した。米追加利上げ・欧州利上げ継続観測の高まりや、日銀による金融政策の現状維持などが影響した。ユーロ・米ドルは、ユーロ圏の物価指数が相対的に高かったことから、ユーロ圏の利上げが米国よりも長期化するとの見方が広まり、ユーロ高・米ドル安が進行した。

これらを背景に、当月はエマージング株式以外の資産カテゴリーでプラスリターンとなった。REITは、国内REIT中心に上昇した。新年度入りに伴い国内投資家から買いが集まったことや、日銀による金融政策の現状維持が好感された。一方、エマージング株式は中国株中心に下落した。米中関係に改善が見られないことに加え、中国製造業の生産活動が鈍化するとの懸念もあり、マイナスリターンとなった。

パフォーマンス上位5資産のランキングと実績

3.新規設定ファンドの動向

「設定本数、設定額ともに減少」

当月の新規設定本数は18本、設定額は約300億円となった。前月対比で設定本数は17本、設定額は約380億円減少した。設定額は外国株式ファンドが全体の約8割を占めた。

新規設定ファンドのうち、当月末時点の純資産残高が最大となったファンドは、「TRプライス米国中小型株式ファンド B」(Tロウプライス)(約190億円)、次点は同時に設定された「同ファンド A」(Tロウプライス)(約50億円)となった。同ファンドは、主として米国の中小型株式の中で、成長性が高いと判断される企業や、企業の本質的価値に比較して過小評価されていると判断される企業の株式等に投資を行う。

新規設定金額、設定本数の推移

※ETF、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信

最後に、4月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。

資金流入上位15ファンド一覧

(三菱アセット・ブレインズ)