アメリカやイギリスの軍人と比べて“安い”自衛官の「“もしも”の値段」 殉職者への賞恤金の支給要件は曖昧で「高額な賞恤金が支払われた事例はほとんどない」
マネーポストWEB6/20(金)7:15

自衛官はほかの公務員に比べて、賞恤金が高額に設定されているという東京・市ヶ谷の防衛省)
「あなたの命はいくらですか?」──そう尋ねられたら、なんと答えるだろうか。とっさに頭に浮かぶのは「命はお金にかえられない」という答えかもしれない。ところが現実世界では、命はお金に換算されてしまう。交通事故、医療ミスや労災などで人が亡くなると、「賠償金」が算定され、その額は性別や職業、年齢によって“差”があるのだ。
では、国や国民のために、自らの命を危険にさらす可能性がある自衛隊はリスクが伴う分、もしもの場合は“命の値段”も重くなるのか。
元陸上自衛官で、自衛官専門のファイナンシャルプランナーの佐々木拓也さんが解説する。
「自衛官は公務員なので、訓練や任務で負傷したり亡くなった場合、基本的にほかの公務員と同様の補償がされます」
佐々木さんによると、公務員が公務に関連して死亡した場合、「賞恤金(しょうじゅつきん)」という見舞金が遺族に支払われる。ただ、自衛官はほかの公務員に比べて、賞恤金が高額に設定されている。
「通常、国家公務員が殉職した場合の賞恤金は490万円から2520万円までを限度としています。しかし、自衛官の場合は、海外派遣など任務の危険度によって最高額9000万円まで支給されることになっています。
賞恤金がほかの公務員よりも高額に設定されているのは、“任務中に万が一のことがあっても国が補償するので後顧の憂いなく任務についてほしい”という意味合いがあるのではないかと考えています」(佐々木さん)
賞恤金の支給要件は曖昧
階級ではなく任務の違いによって差が生まれるようだが、実際には殉職者に多額の賞恤金が支払われるケースはほとんどないという。自衛官の待遇問題を専門とするジャーナリストの小笠原理恵さんが言う。
「私が知る限り、殉職した自衛官の遺族に高額な賞恤金が支払われた事例はほとんどありません。自衛隊の賞恤金は支給要件が曖昧になっています。
2004年に自衛官がイラク派遣中に襲撃され、亡くなったケースでは、賞恤金は一般の公務員と同様の2200万円ほどとされています。遺族年金は10年間までで、高額な賞恤金はなかったと聞いています」
自衛官のための生命保険もあるが、仮に紛争地や災害地域で殉職したとしても保険金が支払われることはないという。
「自衛官のために防衛省が用意している生命保険があり、ほとんどの自衛官は“防衛省で準備している保険なのだから有事の際でも支払われるだろう”と考えています。しかし、約款を読むと、支払いできない場合(免責事項)に『戦争その他の変乱』『地震・噴火・津波』等の記載があるため、状況によっては保険金が支払われなかったり減額される可能性があります」(佐々木さん)
アメリカ軍やイギリス軍は手厚い補償
一方、米軍は、隊員のけがや殉職に手厚い補償をつけている。
「戦死者の遺族には死亡給付金10万ドルと、上限40万ドルの保険金が支払われます(日本円にすると合わせて最大7000万円)。遺族年金は働かなくても充分に暮らせる金額が一生涯支給されるだけではなく、子供がいた場合はさらに年金が付加され、学費や医療保険も付与されます。けがをした場合でも医療費や生活費、住宅の改修費まですべてを政府が補償するのです」(小笠原さん)
イギリス軍でも殉職した場合、一時金は約1億円支給され、遺族年金は妻は一生涯、子供は22才になるまで支払われるという。
小笠原さんは、外国に比べ日本の自衛官の“命の値段”が安いと警鐘を鳴らす。
「自衛隊では上官の責任を回避するため、公務災害などを認めないようにする組織風土があります。そのため、任務中にけがや障害を負っても個人の不注意として何も補償されないまま、生活に困窮している元自衛官がたくさんいます」
対外危機だけでなく、自然災害や事故など私たちの暮らしと命のために働いている自衛隊。置かれている状況への理解を深めたい。
※女性セブン2025年6月26日号











