〈トヨタ自動車は高級車「クラウン」セダンの生産を現行型で終了する〉──11月11日付中日新聞のスクープは大きな衝撃を与えた。

 クラウンといえば「いつかはクラウン」のフレーズが思い浮かぶ。1983年発売の7代目クラウンCMで石坂浩二がナレーションしたキャッチコピーだ。以来、ずっと庶民の憧れのクルマであり続けた。経済ジャーナリストの福田俊之氏が解説する。

「1955年から65年もの歴史を有するクラウンは、日本の自動車産業の象徴といえるフラッグシップモデル。『いつかは』のコピーどおりステータスシンボルでもあった。トヨタもそれを意識して開発を続けたクルマです」

 ではなぜ、クラウンは半世紀以上の歴史を終えることになったのか。

「近年はユーザーのセダン離れが顕著で、クラウンの弟分『マークX』も昨年いっぱいで生産終了となった。ユーザーの人気はSUV(スポーツ用多目的車)やミニバンに移っています」(福田氏)

 トヨタ自動車に確認すると「中日新聞の記事の真偽を含め、将来の商品計画についてはお答えできない」(広報部)とするのみだった。福田氏が続ける。

「電動化や自動運転化など、自動車産業は100年に1度の大変革に直面している。無駄を省き将来性のある分野に投資したい豊田章男社長が引き際を検討したのでは。だが、クラウンに強い思い入れを持つ父・章一郎氏(トヨタ名誉会長)の目の黒いうちは公然と“引退発表”するわけにいかない。今回の報道は、生産終了を見据えた観測気球と考えるのが自然です」

「クラウン」の名称は2022年に投入されるSUVタイプの新型車に受け継がれるというが、シビアな声が聞こえてくる。

「クラウンのSUV化は違和感が拭えず、多くの車好きが悲しむでしょう。新たな需要を喚起するとも思えず、いっそセダンのままでその名も廃してほしい」(モータージャーナリスト・清水草一氏)

 新型車が本当に王冠(クラウン)のマークに値するクルマとなるのかが問われることになる。

※週刊ポスト2020年12月11日号