新型コロナウイルス感染拡大を受けての緊急事態宣言発出で、飲食店には午後8時以降の営業自粛が要請された。しかし、午後8時以降に新宿、銀座、新橋など繁華街を歩くと、客で賑わう飲食店がちらほら。その“言い分”を聞こうと40軒以上の店に声をかけるも、取材はのきなみNG。そんななかで取材OKが出た店の店主たちの本音を紹介する。

 まずは、新宿の居酒屋の「鳥田むら」だ。

 同店の創業は1974年。継ぎ足しのタレが絶妙に絡み合う、備長炭を使った焼き鳥が味わえる。昭和の雰囲気がほどよく刻まれた店内は居心地がよく、長年通い続けるファンも多い。田村彰夫社長はいう。

「うちは新宿に2店舗、渋谷に1店舗あり、全部で家賃は200万円。人件費はざっと600万円です。国や都が提示している補助金を満額もらったとしても、とてもまかないきれない。従業員の生活を守らなければならないし、うちが閉めたら仕入れ先の方々はどうするんですか。国の言うことを聞いていたら、こちらの身が持たないんですよ。だから、20時を過ぎても営業します。

 従わないと罰金50万円? もしそんなことを言われたら戦います。弁護士とも相談済みですから、準備はできています」

 いわゆる「夜の店」と呼ばれる接待飲食業にとっては、もともと開店時間が遅いため、実質的な休業要請となっている。続いて、銀座の高級クラブ『ル・ジャルダン』の望月明美ママはいう。

「20時から店が始まるのに、20時に閉めてどうしろと言うのでしょうか。本当は休みたいけれど、休めないんです。前回はある程度の補償金がおりたので、120人いた女の子全員の生活を守ることができた。でも、今回の1店舗6万円の協力金だけでは、家賃にもなりません。

 コロナ前、ウチは4店舗で年商10億円を売り上げ、税金もきちんと納めてきた。納税額に応じて協力金を支給していただけないものでしょうか。大きな店も小さな店も一律6万円では、不公平ですし、無理があります」(望月明美ママ)

取材時の入店客は2組のみ。接待利用はゼロに

 ビルと店の入り口、座席で計3回の検温を行ない、店内は15台の扇風機を稼働させ、三密回避を徹底しているという『ル・ジャルダン』。同じく銀座のキャバクラ『Giraffe』の齋藤祐大店長も、苦しい胸の内を語る。

「休むことを求められているのは、十分理解しています。でも、1日6万円の協力金では、完全にマイナスになってしまう。昨年春の時点で内部留保は使い切っており、20時で閉めるのは現実的ではありません。

 時間で区切るのではなく、席数の50%までとか1平米あたり何人までとか、人数制限する形のほうが良かったのでは。今はお客さんが少ないので、そもそも密にならないんです。キャストは半減し、残った者もシフトを減らさざるを得ないので厳しい状況です」

 取材時の入店客は2組のみ。ビジネスマンの接待利用はゼロになり、客層は落ち着いた大人よりも派手な感じの若者が増えたという。キャバクラも苦しいが、ホストクラブも状況は変わらない。新宿歌舞伎町のホストクラブ『SINCE YOU…本店』の小田桐蓮総支配人はいう。

「現在の状況では20時からの営業を続けざるを得ません。これまでマスク着用や回し飲みの禁止等、真面目に対策してきました。歌舞伎町だけで約200店舗の飲食店が潰れたと聞いています。ウチだって1か月も休業したら、お客さんの気持ちが冷めて、店との関係が壊れてしまう。時短より、思い切って2週間の完全ロックダウンとかのほうが、公平で効果も大きいのでは。今回の時短営業の設定は特に水商売の人間に逆風が強い印象を受けます」

 総支配人の小田桐蓮氏は、接客時もマスク着用を徹底。同店では入り口に設置された、消毒液のミストを噴射する「クリーンゲート」を通ってから入店する。

 こうした状況について、日本水商売協会の甲賀香織代表理事はこう指摘する。

「前回の緊急事態宣言時よりも資金繰りに余裕がない店がほとんど。1日6万円の協力金では従業員の雇用を守れず、時短に応じられない店が続出しています。一方で休業する店の女性が困窮してパパ活やギャラ飲みなどに流れれば、感染が拡大するおそれもあります」

 飲食店の取引先業者には最大40万円の支援金も発表されたが、焼け石に水。“瀬戸際の戦い”は、1か月後に終焉するのだろうか。

取材/西谷格、末並俊司 撮影/末並俊司、小倉雄一郎

※週刊ポスト2021年1月29日号