何かと一筋縄にはいかないのが相続というもの。被相続人の介護に身を焦がしていたからと言って、たくさんの遺産を受け取れるわけではないのだ。

 大阪府の呉服店に嫁いだ宮本由子さん(58才・仮名)は、呉服店を切り盛りしながら、義両親ばかりか義祖父母の介護までしていたが、いずれも死後に1円ももらえず、遺産は義両親の世話などまったくしなかった夫のきょうだいに持っていかれた。夫の家族と血縁のない妻は、相続人ではないからだ。

 2019年7月、相続法改正によって、義両親の介護などに貢献した妻は、相続人でなくとも「特別寄与料」を受け取る権利ができた。しかし、だからといってお金をもらおうとしなかった宮本さんの選択こそが正しかった。

「入籍している以上、戸籍上は家族です。“家族の面倒を見るのは当たり前”とされ、制度上は認められていても、受け取るための要件は非常に厳しい」(『トラブル事例で学ぶ失敗しない相続対策』著者で相続コンサルタントの吉澤諭さん・以下同)

 特別寄与料を受け取るには、扶養を超えた相当な貢献が求められるうえ、もらえる金額も介護報酬の基準額を参考に、一定の裁量割合をかけて計算され、希望通りになることはまずない。期待するほどの額はもらえないと思った方がいい。

「もし、特別寄与料をもらおうとして争っていたら、亡くなった義理の両親から財産を取得したという扱いになり、相続税の申告が必要になる。かかる税金も2割増しです。争っても失うものの方が多い。現在、ひそかに『死後離婚』が増えているのは、夫の死後に夫の親が生きている場合、その面倒を見なくて済むようになるから。義実家と縁を切って、扶養義務から外れるわけです」

 義父母、義祖父母のために“タダ働き”を強いられた当の宮本さんは「お金をもらえなかったのは悔しいけれど、遺産を持っていった夫のきょうだいがお盆にうちに来るたびに胸がスッとします。自分の親の面倒を見ずにお金だけもらったのが相当後ろめたいんでしょうね。お線香をあげに来ても、私の前で義両親の思い出話をすることができないんですから」

 と余裕の表情。お金がもらえたからといって“勝ち”ではない、特殊なケースだといえる。

 相続は「仏様を誰が持つのか」から始めるべきだと、税理士法人アイエスティーパートナーズ代表の高野さんは言う。

「亡くなった人を放り出してまで財産を奪い合わないでほしい。お骨や仏壇、墓石を誰が守るのか。そこから決めていけば自ずと取り分は決まってくるはずです。きょうだいの権利は平等ですが、お金を均等に分けると不平等になる。まず“お墓を誰が守るのか”から進めれば、円満になる可能性は高まるはずです」(高野さん)

※女性セブン2021年3月11日号