4月から「70歳就業法(改正高年齢者雇用安定法)」が施行され、いよいよサラリーマンの人生から「定年」という概念が消滅する時代がやってくる。70歳以降も働き続ける人生とは、どんなものになるのか。改正法施行に先立って、70歳以上の雇用を進めている企業の“生涯現役社員”に、話を聞いた。

「70歳過ぎて半世紀ぶりに面接を受けたら、社長から『ぜひともウチでお願いしたい』と、なったんですよ(笑い)」

 笑顔でそう話す渡辺裕之さん(78)は、リフォーム事業を展開するメッドコミュニケーションズで、建築現場の施工安全管理を担うスペシャリストだ。

「現場で足場がきちんと施工されているか、道具が安全に管理されているかなどを確認します。午前8時に現場に到着したら、10時頃までに確認して帰宅。14時から結果を整理して、会社にメールで報告するまでが一連の業務です。16時までにすべての作業を終えます」

 渡辺さんが同社に入社したのは、72歳の時だ。23歳で大手建設会社に就職し、部長まで務めたが50代に転機が訪れた。

「がんを患い、療養のために55歳で早期退職しました。60歳までは仕事をせず、その間に宅地建物取引主任者やマンション管理士の資格を取得しました。

 そのあと、友人から誘われて70歳まで設計施工の仕事をしたのですが、リーダーが亡くなって解散。しばらくゆっくりしていたものの、退屈で(笑い)。72歳での再挑戦です」

 前職で取得した一級建築士など様々な資格があり、経験豊かな渡辺さんが面接に訪れると、社長が採用を即決した。以来、渡辺さんは週3日、正社員として働く。

 渡辺さんの入社を機に、同社は定年制度を廃止。現在は、渡辺さんの他にも65歳以上の社員が3人在籍している。

 歳を重ねても会社に必要とされ続ける秘訣はどこにあるのか。渡辺さんはこう語る。

「建築業界で長年働いてきた経験も大きいですが、療養中に複数の資格を取得し、より幅広い知識を得られたことがプラスになった。60歳を過ぎても、資格取得など新たなことに挑戦する姿勢が大切だと思います」

 渡辺さんの今後の目標は、「100歳の正社員」だという。

※週刊ポスト2021年4月16・23日号