缶ビールといえば普通はプルトップを倒し、その小さな穴からゴクゴクと飲むものだが、4月6日にコンビニで先行発売されたアサヒビールの「スーパードライ」の新商品「生ジョッキ缶」はその概念を覆す商品となっている。缶の蓋をパカッと全開すると泡が盛り上がってくる。アサヒビールは8日に、販売数量が想定を上回り、コンビニ先行販売の出荷を一時停止したと発表するなど、早くもその人気は沸騰している。なお、スーパーなどでは20日の発売を予定しているという。

 この「生ジョッキ缶」、実際に飲んでみたビール党はどんな感想を持っているのか。先行発売された日から「毎日飲んでいる」というネットニュース編集者・中川淳一郎氏が、その楽しみ方をレポートする。

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 出荷停止ですって? えっ? でも私がよく行っている佐賀県唐津市のコンビニではまだ店外にドカーンとポスターが貼ってあり、入り口入ってすぐ右側の棚(本来ホット飲料を置く場所)と、酒類の冷蔵庫のところにもドカーンと大量に陳列していました。

 さて、家に帰って飲んでみますか。缶の注意書きには「温度によって泡立ちが変わります。」とあります。「飲み頃温度は4℃〜8℃です。*冷蔵庫で冷やしてお飲みください。12℃以上は、ふきこぼれ注意!」、そして「泡をもっと楽しみたい!と思ったら。缶を手で包むと泡が出やすくなります!」の注意書きもあります。さらには、上記注意書きの再注意までシールに書いてあります。

〈冷蔵室で冷やしてお飲みください。12℃以上は、ふきこぼれ注意!〉

 2回も注意するだけに、この点が大事なのでしょう。さてと、冷えた生ジョッキ缶を買って自宅に帰り、つまみを作る10分ほどの間は自宅冷蔵庫で冷やし、いざ蓋をパッカーンと開けました。するとすぐに泡が少しずつ形成されていきます。おおっ、すごい! そして、これ以上放置すると中身がこぼれてしまう! という時にズズズッと飲んでみました。

 あら、これ、飲食店で飲む生ビールにけっこう近いじゃないですか! 飲む前は、缶の蓋をパッカーンと開けるとなると、「口を切ってしまうのでは……」と心配したのですが、まったくそんなことはなかったです。飲み口と蓋部分には6mmほどの段差があり、安心して飲むことができました。

 缶ビールを飲んでいて初体験だったのが、「中を覗きたくなる」という点です。見る度に泡が表面を覆っていて、「よしよし、泡と液体の絶妙ないいバランスをキミは保っているんだね」とビールに対して愛情を持ってしまうではありませんか。飲む時は泡と液体、両方がキチンと口の中に入ってくる。

 泡はビールを飲み進めても常に上部にあります。これはありがたい。さらに、生ビールを注ぐのが上手な店員とゴクゴクと飲むビール好きがコラボした時に誕生する「天使のリング」も缶の中で発生しています。ジョッキビールを飲み進めていくうちに、ジョッキの中に泡が年輪のように付着して残る、あれです。これには驚きました。缶ビールなのにすげーな、と。

飲食店の生ビールとの違いは?

 さて、この商品は4℃〜8℃が推奨されているのですが、実験的に冷凍庫でかなりキンキンに冷やしてみました(恐らく1℃ぐらい)が、これはほとんど泡が立ちませんでした。ただ、それはそれで冷え冷えビールが好きな私には満足です。

 ここまで同商品を絶賛し続けてきましたが、生ビールをとんでもなく飲み続けている私が好きなのは、実際はマイナス2℃から摂氏2℃ほどのキンキンのビールです。だからこそ飲食店に行った時、氷点下で味わえる「スーパードライ エクストラコールド」がメニューにある場合は、必ず頼むようにしています。

飲食店の生ビールの場合、相当キンキンに冷えていても泡はできます。それは、ビールサーバーで「泡だけ」を追加できるからですね。ただ、「生ジョッキ缶」の場合、泡を立たせておいしく飲むには4℃〜8℃という条件がある。

「エクストラコールド」をはじめとした、飲食店の生ビールはやはり缶ビールでは再現ができるわけがない。とはいってもそこに近づけようとしたアサヒビールのこの商品開発、まさに感服しました。

 そして、パッカーンと開けた蓋は飲み終わった缶の中に入れてリサイクルが可能です。これからビールがますますおいしくなるシーズン、これを飲むのが楽しみです。ちなみに内容量は通常の缶ビールよりも少ない340mlです。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。