新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、「まん延防止等重点措置」の対象地域も拡大している。4月16日からは新たに埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県が対象となり、すでに対象となっていた東京や大阪などを含め、あわせて10都府県となっている。大阪府では「見回り隊」が登場し、各店で感染対策は万全かどうかチェックしている。東京都では「徹底点検 TOKYOサポート」という名前の見回りチームも登場している。

 東京の見回りチームは、飲食店を抜き打ちで訪問し、換気やマスクやアクリル板等の対策ツールに加え、1メートル以上の距離を取ることなど、20項目をチェックシートに従って確認しているという。

 重点措置に伴い、飲食店の時短営業も要請されており、東京都(23区と6市)の飲食店には20時までの時短営業(酒類提供は19時まで)が求められている。だが、現実問題としてすべての店舗が時短要請に従っているわけではない。時短要請に従っているフリをしながら“闇営業”をしている店もあるのだ。

 都内在住の会社員女性・Aさん(30代)は、自身の体験をこう語る。

「17時から2時間の打ち合わせを終えて、同僚と2人で駅に向かっていたところ、多くの飲食店が開いていました。店に入り『まだ大丈夫ですか?』と聞いたところ、『どうぞどうぞ! 酒も頼んで構いません!』と言われて、そのままお酒を飲みました。普通に20時を過ぎてもお酒は注文できましたね。店員は『まぁ、21時ぐらいには終わらせようと思いますが、その後いらっしゃるお客さんがいた場合は、営業は続けます。昨日は深夜2時までやりました』と言っていました」

 Aさんは翌日も同じエリアを訪問し、別の飲み屋へ。その店は、1階の手前が店舗で、奥の扉の先が倉庫兼従業員の控室になっていた。20時過ぎに店を覗いたところ、奥に案内されたという。

「『すいません、ここ、事務所なんですが、酒と食べ物持ってこれますんで、これで注文してください!』とメニューを渡されました。手前にも客はいましたが、電気の灯りを最小限にし、『営業していない』風を装っていました。扉の先の従業員控室でも自由に飲食ができました」

 22時過ぎにAさんはこの店を出たが、その際、店員からこんなお願いをされたという。

「あのぉ、店を出る時、『お疲れさまでした! 明日もよろしくお願いします!』と言ってください」

 つまり、客に対して「店員のフリをしてもらえないか」というお願いだった。なぜここまでして“闇営業”を続けるのだろうか。飲食業界に詳しいフリーライターはこう解説する。

「緊急事態宣言の発令時と同様、まん延防止等重点措置に伴い、東京都でも時短要請に協力した飲食店事業者には協力金が支払われる予定です。とはいえ、協力金だけでは家賃や人件費を払えない飲食店が多いのも事実。表向きは時短営業に従っているフリをして協力金をもらいながら、20時以降も営業して売上を上げようと考える飲食店も存在します。

 客に店員を装ってもらう“偽装”は、都の職員の目を欺くためというより、周囲の飲食店から『あそこは“闇営業”している』と告げ口されないためのものでしょう」

 こうした手口がまかり通ってしまうと、正直に時短要請に従っている飲食店がバカを見ることになる。だが、客の立場からすると、20時以降も営業している飲食店の存在がありがたい面もあるようだ。前出・Aさんが語る。

「仕事柄、打ち合わせが20時を過ぎることは多いので、“闇営業”だろうがなんだろうが、開いていてくれてありがたいです。先週は夜ご飯を食べられなかった日が2回ありました。出張に行った時は、空港のコンビニも閉店していましたし、開いていてもおにぎりとかは売り切れていたので、私としては“闇営業”には感謝しています。店員のフリを求められたら、喜んでやりますよ」

 ルールを無視した飲食店が客に感謝される状況を、どう捉えるべきなのか。有名無実化した時短要請は、社会に様々なひずみを生み出しているようだ。