コロナ不況による解雇や雇い止めで仕事を失った人が10万人を超えた。昨年4月以降、貧困や労働問題に取り組む「POSSE」に寄せられた電話相談は444件にのぼり、特に収入も預貯金も尽きた女性や母子家庭からの生活保護に関する相談が多いという。同団体代表の今野晴貴さんが話す。

「以前の生活保護対象者はほぼ病気や障害で働けない人たちでしたが、コロナ禍のいまは一般労働者、特に非正規雇用の女性たちの職場と収入が奪われ、生活保護以外の選択肢がない状況に追い込まれています」

 つくろい東京ファンド代表理事の稲葉剛さんは、「状況は切迫しているのに、日本では生活保護の利用率が上がらない。その背景には根強い心理的抵抗感があります」と指摘する。

 年末年始の相談会に訪れた生活困窮者128人に『生活保護を利用していない理由』を聞いたアンケートでもっとも多かった回答は、「家族に知られるのが嫌」で34%。実に3人に1人が選んだことになる。

「生活保護申請に伴い役所が家族に連絡する『扶養照会』がネックになっています。家族に知られることが心理的にどれほど負担になっているかがわかります」(稲葉さん)

 こうした声を受け、厚生労働省は4月1日から、全国の自治体で生活保護申請の実務で使用されている「生活保護問答集」を一部改正した。新しい問答集には、「要保護者が扶養照会を拒んでいる場合等においては、その理由について特に丁寧に聞き取りを行い、照会の対象となる扶養義務者が『扶養義務履行が期待できない者』に該当するか否かという観点から検討を行うべきである」と明記されている。

 つまり、申請者が「扶養照会」を拒否した場合、その理由について「丁寧な聞き取りを行う」運用が始まったということ。これにより、生活保護利用への心理的抵抗感が薄らぐ効果が期待されている。

 前述の『生活保護を利用していない理由』アンケートで、2位は「過去に役所で嫌な対応をされた」(22%)、3位は「自分の力で頑張りたい」(20%)だった。

 4位の「相部屋に入居するのが嫌」(18%)には、少し説明が必要だろう。この「相部屋に入居する」とは、無料低額宿泊所(無低)への入所を指す。ホームレス状態の生活保護申請者にしばしば紹介される「無低」は、社会福祉法に基づく民間の宿泊施設。良心的な施設もあるが、一部には劣悪な宿舎に多人数を押し込み、食事も劣悪、生活保護費をピンハネするところもあるという。だが、ここへの入所は必須条件ではなく、拒否できることを覚えておきたい。

※女性セブン2021年4月29日号