コロナ禍により在宅勤務が急速に普及し、働き方は大きく変化している。通勤・退勤からの解放を喜ぶ人もいる一方、リモートワーク特有の疲労を訴える人もいるようだ。こうしたリモートワークによる体調不良は、労災でカバーされるのだろうか。また、派遣社員の場合でも治療費などを会社に請求することはできるのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。

【相談】
 派遣社員です。週5日は在宅勤務で、長時間のリモート会議ばかり。そのため、異常な目の疲れ、視力低下、頭痛、肩凝りに悩まされています。正社員はそういう場合、福利厚生がちゃんと整備されているのでしょうが、私のような派遣社員も、目の治療費や肩凝りの施術費などを会社側に請求できますか。

【回答】
 パソコンのモニターを見つめる作業(VDT作業)を長時間行なうと、ドライアイや眼精疲労、肩凝りなどの身体的障害や精神的疲労が出ることがあり、それはVDT症候群と呼ばれています。

 事業主の支配下でされた業務に起因して発生した病気が「業務上の疾病」として労災になる範囲の中には、「電子計算機への入力を反復して行う業務」による「後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害」がありますが、眼精疲労は含まれません。

 しかし、「その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病」との包括的な項目があるので、過度の作業との因果関係が認められれば、労災になる可能性があります。

 派遣労働者の労働安全管理は、雇用主である派遣元会社が行ないます。VDT作業が原因で労災になれば、派遣元の労災保険で療養費の支払いや休業補償などの対応が可能となります。

 VDT症候群は心配ですが、仕事でVDT作業は不可欠。厚生労働省は使用者に対し、照明・採光などの作業環境の整備、作業時間や作業量の適正管理、VDT作業対応の健康診断などの健康管理面の配慮を求めています。作業環境の整備など職場の衛生管理は、派遣先会社が行なうことになりますが、在宅勤務ですから、派遣元会社と協議するしかありません。

 なお、派遣社員と正社員との給与や待遇の不合理な差別はできません。待遇中には安全管理や福利厚生も含まれ、派遣元会社は労使協定によって制限できる一定の場合を除き、派遣先の正社員と同じ職務で同等の責任があり、配転もあり得る派遣社員に対し、不合理な差別待遇がないよう派遣契約を締結する義務があります。

 正社員と不合理な違いがあれば、派遣元会社に相談してください。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※週刊ポスト2021年6月11日号