新型コロナウイルスの感染拡大は、交際のあり方も大きく変えているようだ。オンラインデートや、一度も直接会わずに交際開始する人など、「会わない恋愛」も注目されるなか、カップルの間でも「リモート同棲」という新たなつながり方が話題になっている。端的に言えば、2人が別々の場所に住みながら、LINEなどの無料通話アプリを使って常時通話をオンにし、コミュニケーションを取り続けるというスタイルだ。まるで一緒に住んでいるかのように相手のことを身近に感じられることから“同棲”という言葉が使われているが、その実態はいかなるものか。カップル間の“繋ぎっぱなし”経験者に生の声を聞いた。

 IT企業に勤める30代女性・Aさんは、「LINEでリモート同棲」と聞いた時、懐かしさを覚えた。古くは学生時代から、PHSの「WILLCOM(ウィルコム)」と無料通話サービス「Skype」を利用し、「寝落ち通話」をしていたからだ。

「高校時代、WILLCOM同士なら通話無料なので、彼とおそろいの携帯を購入してよく長電話をしたものです。ただし無料といっても、通話が2時間45分を超えるとお金がかかってしまう。時間を気にしながらも、ついついそのまま寝てしまって、翌朝慌てたことが何度もありました。大学時代は寝る前にPCからSkypeに接続して、彼と話しながらよく寝落ちしていました。寝る前の通話は、なんとなく一緒に寝ている、という感覚を味わえるのがいいんですよね」(Aさん)

 カップル同士が“繋ぎっぱなし”にするのは今に始まったことではないということだ。とはいえ、常時となると話は変わってくる。ストレスはないのだろうか?

「やる前は“監視”に近いイメージでしたけど、実際にしてみると、結構楽しいです」

 そう感想を語るのは、メーカーに勤める30代男性・Bさんだ。自身は東京都、20代の彼女は静岡県に住む遠距離恋愛中。コロナ禍で県をまたぐ移動がはばかられる中、昨年の夏から“リモート同棲”を始めたという。

「コロナで彼女と会えなくなってから、『今、何しているの?』『返信遅いけど仕事中?』など、こちらの動向をやたら伺うような内容のメッセージが増えて、既読してすぐに返信しないと電話がかかってくるようになりました。ただでさえ遠距離なのに、全く会えないとなると、不安がどんどん募っていったのでしょう。そこへ彼女から“常時接続”という形を提案されたので、物は試しとやってみることにしました」(Bさん)

 Bさんカップルの場合、音声通話のみを繋ぎっぱなしにして、必要があればビデオ通話もするスタイルだという。一体どのようにコミュニケーションを取っているのだろうか。

「繋ぎっぱなしといっても、お互いの仕事中はミュートです。だいたい私のほうが仕事が終わるのが遅いので、私の仕事終わりにLINE通話をかけてスタートし、翌朝、どちらかの仕事が始まるまでそのまま。別に何をしていてもOKで、無言でも気にしません。スピーカーから生活音が聞こえてくるのも微笑ましい。食事の時間も寝る時間もバラバラです。彼女の指摘から、私は就寝時に歯ぎしりがうるさいことを知りました(笑い)」(Bさん)

 特に「思い出深かった」というのは、彼女監修による“リモート料理”だった。

「最近、自炊を始めましたが、なかなかうまくいきませんでした。そこで彼女がビデオ通話を通してレシピや手順を事細かにレクチャーしてくれることなったんです。それで作ったしょうが焼きは、2人で一緒に作った感じがして、感動しました」(Aさん)

「繋げば繋ぐほど、相手の挙動が気になる」の声も

 リモート同棲をするのは、遠距離恋愛のケースだけではない。2人とも実家に住んでいるケースもある。アパレル関連企業で働く20代女性・Cさんは、今年2月から同世代の男性と交際中。コロナ禍で外出しづらいうえに、お互い実家暮らしのため「おうちデート」もままならなかった。寂しさが募る中、まず始めたのが就寝前から起床するまで、LINEは繋ぎっぱなしすることだったという。

「実家住まい同士なので、少しでも一緒にいる感覚になりたくて、週2〜3日は『おやすみの時とおはようの時は一緒に』という感じで、LINEを繋ぎっぱなしにすることから始めました」(Cさん)

 それだけでは物足りなくなった2人は、そのままリモート同棲へと移行した。

「お互い仕事が終わったら、『ただいま』『おかえり』とあいさつ。自室でイヤフォンをつけて、基本的には音声通話を繋ぎっぱなし。食事中はスピーカーに切り替えて、食べる音が大きく入らないようにします。寝る前はビデオ通話を欠かしません。最初は緊張しましたが、だんだん慣れてきて、今では繋ぎっぱなしのほうが安心感を得られるようになりました」(Cさん)

 実家ならではのトラブルもあったが、それも乗り越えたという。

「自室に親が入ってくることがあって、最初は気まずかったのですが、だんだん親も彼も仲良くなっています。彼の親ともリモートで対面済み。親公認になったことで、今ではビデオ通話で、お互いの家族の様子を映すのも当たり前になりました。リアルで彼の家族と会える日を楽しみにしています」(Cさん)

 こうして、リモート同棲を楽しんでいるカップルたちの声を紹介したが、中には挑戦しようとしたものの結局あきらめてしまった人もいる。自営業の20代男性・Dさんは、「彼女に提案されて少しだけやりましたが、全く気が休まらなかったのでやめました」と笑う。Cさん曰く、「僕はスマホゲームをよくするのですが、LINE通話を繋げているとスマホが使いづらい」という。

「スマホゲームをしながらだと彼女の声が聞こえませんし、彼女にタップ音が聞こえてしまうのも気になる。独り言を言いにくいのもストレスになりました。かといって、ミュートにしていると、何をしていたのか怪しまれる。中途半端に繋げば繋ぐほど、相手の挙動が気になって、ストレスが貯まるのかもしれません。話し合った結果、時々電話するほうがいいという結論に落ち着きました」(Cさん)

 コロナ禍で会うことが難しくなったカップルたち。“リモート同棲”ならではの楽しさと難しさがあるようだ。