60歳以降に「家計防衛」の基礎となる公的年金──。夫か妻のどちらかが先に亡くなって「ひとり」になった後も、長い人生が待っているかもしれない。だからこそ「夫・妻が亡くなった後の年金の手続き」についても知っておきたい。

 夫婦でともに厚生年金に加入して働いていた場合、受け取れる年金額は比較的多くなる。ただ、夫婦どちらかが亡くなると、年金収入は大きく減ってしまう。社会保険労務士の黒田英雄氏が解説する。

「夫が亡くなった時に、妻の厚生年金の加入歴が20年以上ある場合、専業主婦のように夫の厚生年金の4分の3を遺族年金として受け取れません。このケースでは、『夫の老齢厚生年金の4分の3から妻の老齢厚生年金を引いた差額』だけが遺族厚生年金として妻に支給されます」

 仮に夫の老齢厚生年金が年200万円、妻の厚生年金が年120万円の夫婦がいた場合、夫が亡くなったら、妻が受け取れる遺族厚生年金は年30万円(200万円×4分の3−120万円)になる。

 このケースで妻の厚生年金(老齢+遺族)収入は150万円となり、夫の生前の夫婦の合計320万円から170万円の減額となってしまう。もともと潤沢だったぶん、生活水準の見直しなどが必要になる可能性がある。

 なお、このように夫のほうが年金収入の多い夫婦で妻が先に亡くなった場合は、夫が受け取れる遺族厚生年金はない。

「性別にかかわらず、自分の老齢厚生年金と、配偶者の遺族厚生年金(生前の額の4分の3)を比べて、額が多いほうを選択します」(黒田氏)

 夫婦が共働きだった場合、家計には余裕があるのが一般的だが、それでも死別に備えて蓄えをつくっておいたほうがよい。社会保険労務士の稲毛由佳氏のアドバイス。

「たとえば現役時代の夫の年収が600万円で妻が400万円の場合、世帯収入の1000万円に合わせた暮らしをするのではなく、生活費などは夫の収入で賄い、妻の収入は教育費や遊興費、貯金に回すといった考え方を身につけておく。そうすれば年金生活になった後に受給額が多いほうが先に亡くなっても苦労は少ないはずです」

 共働きならではの落とし穴に気をつけたい。

イラスト/河南好美

※週刊ポスト2021年10月1日号