正月の一大イベントとして30%前後の驚異的視聴率を誇る「箱根駅伝」には、大手スポンサーなどから巨額な広告料が集まる。ただ、以前からその財務内容の不透明さがSNSで指摘 されていて、毎年このシーズンになると話題にのぼる。箱根駅伝で本当に儲けているのは、いったい誰なのだろうか。
■元陸上オリンピアンたちもSNSで指摘
箱根駅伝は1987年からテレビ中継され、平均で26〜33%の視聴率 を稼げるドル箱番組だ。あまた放映される正月3が日の番組の中でも、突出した人気を誇る。多くのスポンサーから巨額の広告料が入るはずだが、財務内容は一切公開されていない。
昨年の東京五輪では不正な資金の流れが刑事事件にまで発展したが、近頃は各スポーツ団体のガバナンスが注目されるようになった。公的要素が強いイベントについては、財務内容を公開すべきという声が高まっている。
箱根駅伝は関東学生陸上競技連盟(関東学連)が主催・運営するが、任意団体のため、資金や財務の情報は一切公開していない。そのため、集まった資金がどこにどのように配分されるのか、SNSを中心に不透明さが指摘されているのだ。
関東学連が受け取ったスポンサー料や放映権料は、出場大学や選手たちには還元されないという。箱根駅伝OBや陸上オリンピアたちからも収入の内訳や配分先が不明という声が挙がっており、 陸上界関係者ですら知らされていないことを問題視する。
■筆頭スポンサー料は10億円とも
箱根駅伝の共催は読売新聞、特別後援は日本テレビ、後援は報知新聞と、読売グループが押さえている。 広告代理店は、直接の資本関係はないものの縁が深い読売広告社と、その親会社の博報堂DYメディアパートナーズとなる。主催は関東学連だが、事実上の仕切り役は読売新聞が担っているようだ。
特別協賛のサッポロホールディングスはテレビ中継が始まったサッポロビール時代からの筆頭スポンサーで、2023年開催の第99回大会で37年目連続。スポンサー料は1回で8億円とも10億円ともいわれている。
協賛はミズノ、トヨタ自動車、セコム、敷島製パン と業界大手が並ぶ。ほかにもNTTドコモ などがスポンサーとして名を連ね、料金は年々跳ね上がっていると思われる。
各スポンサーの広告効果は、60億円相当 といわれている。例えば2020年の箱根駅伝では出場選手の8割以上がナイキの厚底シューズを履いて好記録が続出 、多大な販促につながった。サッポロビールも、全出場校がたすきやチームカラーとともに表示された限定缶ビールが毎年人気を博している。
ただ、直接的に儲かるのはスポンサー料が入る関東学連、広告料が入る読売新聞や日本テレビ、広告マージンが入る読売広告社や博報堂DYメディアパートナーズだろう。関東学連には、毎回2億〜3億円 が入るといわれる。
■ユニフォームに表示できるスポンサー広告もスタート
これまで各大学のユニフォームには校名や大学ロゴ、メーカーロゴしか入れられなかったが、2021年からはスポンサーの広告ロゴも表示できるようになった。スポーツメーカーだけでなく、幅広い企業がスポンサーに名乗りを挙げている。
スポンサー料の相場は数百万円から1,000万円程度のようだが、広告の出稿効果は約7,000万 円と試算されている。さらにスポンサーとなった大学が優勝した場合、宣伝効果は60億円程度 といわれる。このスポンサー料は大学に入るため、出場選手やその家庭の経済的負担軽減につながると歓迎の声が挙がる。
このように箱根駅伝は大規模イベントに育ち、その裏で巨大マネーが動くようになった。それを享受している組織や企業がある一方で、無報酬で参加する学生やボランティアも存在する。公益性が認められた学生の教育活動であることや、スポーツガバナンスの重要性から、主催者はそろそろ財務の情報公開を求める声に応えてはどうだろうか。
執筆/渡辺友絵