2023年12月7日、ホンダは最上級ミニバン「オデッセイ」の新型モデルを発表しました。従来型でも好評だったリアシートの快適性を大幅に高め、ホンダ史上最も豪華なミニバンといえる仕上がりとなりました。どこが進化したのか、注目ポイントはなにかを内外装の紹介とともにお伝えします。

一度姿を消したオデッセイが帰ってきたワケとは?

オデッセイといえば、ホンダを代表するLクラスのミニバンです。1994年の初代登場以来、5世代に渡って時代に沿った進化を辿ってきました。しかしより大きく豪華なトヨタ アルファードをはじめとする大型ミニバンや、よりコンパクトで運転しやすいホンダ フリードをはじめとする小型ミニバンの台頭によって、オデッセイの販売状況は年々厳しくなっていきました。

そんな中、2022年9月にホンダ狭山工場の閉鎖に伴いオデッセイの看板がついに降ろされてしまいました。オデッセイ生産終了、という当時のニュースをみて悲しい気持ちになった方も少なくないはずです。一方で、ホンダにとってもオデッセイを日本のラインナップから消したことでミニバンはフリードとステップワゴンのみが残るかたちとなり、かつてオデッセイやエリシオンが担っていたL〜LLクラスミニバンというセグメントに穴を開けてしまいました。

そこで着目したのが、中国ホンダから日本に逆輸入するかたちでのオデッセイの再投入です。実はホンダは、日本で販売を終えたあとも中国市場ではオデッセイ、さらにエリシオンの販売を続けていました。しかも5代目オデッセイをベースとした、どちらも日本仕様よりも豪華に仕立てたモデルでした。それを日本向けに手直しして輸入するというカタチは、新たにイチから開発を行って再投入するよりも合理的な判断と思えます。

というわけで、ホンダオデッセイがついに日本市場に蘇りました。今回は、ホンダのハイブリッドシステム「e:HEV」モデルのみを設定し、装備別で3つのグレードを用意しています。価格は480万400円から516万4500円と従来型から30万円ほどアップしました。続いては、進化したポイントを見ていきましょう。

存在感がアップしたエクステリア、先進感を増したインテリア

新型オデッセイのエクステリアは、従来型とほとんど変わりありません。ですが、フロントグリルをよく見ると意匠が異なっています。具体的には、グリル開口部が上方向に少しだけ拡大しています。またホンダマークを前方へ配置したことで僅かながら押し出し感が強くなっています。実際に目の当たりにすると、意外なほど存在感が増しており、プレミアムミニバンらしい堂々とした姿でした。

また、最上級グレードとして内外装パーツを専用のブラック塗装で統一した「ブラックエディション」を新たに設定しました。これはグリルやホイール、ドアミラーやリアライセンスガーニッシュに至るまで外装パーツの多くを黒基調に変更したモデルです。とくにリアコンビランプはスモークレンズによって覆われてシャープな印象で、ほかのグレードとはまったく違う特別感を演出しています。

インテリアも従来型と見た目こそ変わりませんが、いくつか進化を遂げています。まず、インパネ周りを見て大きく変わったのがシフトセレクターです。ほかのホンダの最新ハイブリッド車やBEVと同様に、ボタン式の電子シフトセレクターを採用しています。静電タッチ式のエアコン操作パネルとも調和した、先進感のある上質なインテリアとなりました。

細かな進化点では、ステアリングホイール裏に回生ブレーキの強さを調節できるパドル式の「減速セレクター」を採用しています。また、センターディスプレイは新たに11.4インチの大型ナビゲーションが設定可能となりました。実際に運転席に座ってみるとその大きさに驚きますが、一方で視界の妨げになっていないことが好印象でした。

電動化したリアシートはテーブルまで付いた豪華仕様が特徴

さて、今回の新型オデッセイで進化の目玉と言えるのがリアシートです。従来型が登場した時、背もたれが中折れしてゆりかごのようになる「プレミアムクレードルシート」の存在に驚いた記憶がありますが、一方でシート操作のすべてがレバーによる手動式だったことが高級ミニバンのリアシートとしては玉に瑕でした。

新型オデッセイのリアシートは従来型の「プレミアムクレードルシート」を踏襲しながら、オットマンとリクライニングが電動化されています。これによって細やかな角度調整が可能になりました。

実際に座ってみると、柔らかいシートながら包まれ感があり極上そのものです。さらに新型では、シートヒーターやセンターテーブル、シート内蔵のUSBチャージャーなどの快適装備が充実しています。またシート表皮はグレードによって異なりますが、この豪華な電動オットマン付きシートを全グレードで標準装備していることも大きなポイントのひとつです。

ちなみに3列目は従来通り3人掛けの一体型シートを採用していますが、乗り降りの際に2列目シート裏に配された降車モードスイッチを押すことで大きな力を使わずに乗降できるのも大きな進化です。またホンダアクセスの純正アクセサリーで3列目用のUSBチャージャーを用意しているため、3列目の快適装備も充実しています。

時代の流れに合わせて、運転支援技術も大きく進化しています。従来型から採用されていた安全運転支援システムのHonda SENSING(ホンダセンシング)ですが、対象角度100°のフロントワイドビューカメラと前後バンパーの4カ所に設置したソナーセンサーによって対象物を検知するシステムとなりました。(従来型は単眼カメラ+ミリ波レーダー)

これにより衝突軽減ブレーキの認識対象が、従来型の前走者・対向車・昼間の歩行者に加えて、夜間の歩行者・自転車・右折時の対向車・交差車両にまで広がりました。さらに近距離衝突軽減ブレーキや急アクセル抑制機能、オートハイビームも新たに追加された結果、新型オデッセイはほかの最新モデルと遜色ない高い安全性能を確保しています。

唯一無二の新型オデッセイはぜひ購入の候補にしたい1台

実は新型オデッセイの実車を見るまでは、「今さらオデッセイを再導入しても他社の最新モデルに敵うはずがない」と内心思っていました。けれど、見た目こそそれほど大きな変化はありませんが、最新モデル同様の先進安全技術や大きく進化したリアシートが装備されるなど、1台のクルマとして魅力にあふれるものでした。

また、なによりも素晴らしいと思ったことは、こうした技術や装備のほとんどが標準で備わっているということです。価格は480万円からと決して安くはありませんが、昨今の大幅な価格上昇をもってすれば、ハイブリッドのLクラスミニバンで電動オットマン付きのリアシートや先進技術を満載したクルマとして考えれば、かなりお値打ちではないでしょうか。

フリードやステップワゴンよりさらに上質なミニバンを手にしたい方はもちろん、アコードや他社の高級ミニバンといった車格の高いクルマに乗っている方にもおすすめできる1台です。新型オデッセイは、真っ向勝負できるライバル不在の唯一無二の上級ミニバンとして、復活を大いに祝福したいと思える、そんなクルマでした。(写真:伊藤嘉啓)

●主要諸元 ホンダオデッセイ(e:HEV アブソルート EX)

●全長×全幅×全高:4860×1820×1695mm
●ホイールベース:2900mm
●車両重量:1950kg
●パワーユニット:直4 DOHC+モーター
●総排気量:1993cc
●最高出力:107kW(145ps)/6200rpm
●最大トルク:175Nm(17.8kgm)/3500rpm
●モーター最高出力:135kW(184ps)/5000-6000rpm
●モーター最大トルク:315Nm(32.1kgm)/0-2000rpm
●トランスミッション:無段変速機
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:レギュラー・55L
●WLTCモード燃費:19.6km/L
●タイヤサイズ:225/50R18
●車両価格(税込):500万600円

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