北米現地時間5月13日に行われたウォルト・ディズニーの第2四半期決算発表内で、20世紀スタジオの『フリー・ガイ』(8月13日公開)、マーベルの『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(9月3日公開)を、45日間は劇場独占公開作品とすることが発表された。45日目以降は、PVODなどホーム・エンタテインメントに移行する。

ディズニーは昨年のパンデミック以来劇場での独占公開を中止しており、『ムーラン』(20)のようにDisney+でプレミアム・アクセス(追加料金が発生する有料配信)、もしくは『ラーヤと龍の王国』(公開中)のように、劇場公開と同時配信、『ソウルフル・ワールド』(20)のようにDisney+で追加料金なしで配信といった各種配給戦略をとってきた。
5月27日(木)公開の『クルエラ』、7月9日(金)公開の『ブラック・ウィドウ』は、劇場公開と同時にDisney+のプレミアム・アクセスでも配信になるが、ライアン・レイノルズが主演するアクション・コメディ『フリー・ガイ』と、マーベル初のアジア系ヒーロー『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は、いままでのDisney+を使った配給戦略ではなく、劇場で45日間の独占公開期間を経たのちに配信される予定だ。

アメリカでは伝統的に、公開から90日間を劇場独占期間と定めていて、通常はその後にホーム・エンタテインメントに移行していた。しかし、昨年のパンデミックで全米の映画館が営業停止したことにより規定が崩れ、各スタジオが劇場公開からホーム・エンタテインメントまでの期間を短縮もしくは同時公開とし、スタジオと劇場間で様々な交渉が行われていた。

ディズニーのボブ・チャペックCEOは決算発表後の質疑応答で、今後どのような基準で配給方法を決めるのかという問いに対し、「劇場公開がフランチャイズを構築するための優れた方法であり続けるという事実を示す、特別な指標の1つであることは間違いないが、劇場で公開していない『マンダロリアン』のマーチャンダイズ販売成績は眼を見張るものがあった。いまは消費者が映画館に戻る準備ができているかどうかを見極める状況だ。もちろん国内劇場の90%は現在営業しているし、世論調査からも今後の成長が期待できると考えている。しかし、先週末の興行成績を、パンデミック以前の過去3年間の平均興行成績と比較してみると、国内では85%、海外では67%マイナスとなっている。ということは、市場はまだ準備ができていないと考えられるだろう。だからこそ、プレミアム・アクセスは最高の出口戦略であり、現在の私たちに与えられた選択肢の1つである。今年度以降、どの作品を劇場公開とディズニー・プレミア・アクセス同時にするのか、どの作品をDisney+独占にするのか、あるいはどの作品を劇場独占公開するのかといった戦略については、正確には発表していないが、市場回復の進展を見守り続け、柔軟性を活かして適切なタイミングで適切な判断をしていきたい」と答えている。

劇場公開期間の短縮は、昨年ユニバーサルが米シネコン大手AMCと劇場公開から最短17日間でPVOD(有料配信)に移行する契約を締結したことがきっかけになり、ほかのスタジオも追随している。先日は、AMCに次ぐ規模のシネコン・チェーン、シネマークと大手スタジオ4社(ディズニー、ソニー、パラマウント、ワーナー)が、45日間の劇場独占公開期間を経てホーム・エンタテインメントに移行する契約を結んでいる。これらの契約には収益の一部を劇場に還元する条件が含まれている。

ハリウッドのスタジオ内では、大作映画の多くは劇場公開から数週間のうちに興行収入の大部分を稼ぎだすというデータがあり、伝統的な90日間の劇場独占公開期間は長すぎると考えられていた。劇場公開のために大金をかけた宣伝・マーケティングからホーム・エンタテインメント移行まで期間が空きすぎると、再度宣伝費をかけなくてはいけなくなるためだ。
以前から出ていた議論がパンデミックによって急速に動いたに過ぎず、映画の劇場独占公開期間はもう以前の90日間に戻ることはないかもしれない。

文/平井 伊都子