昨年末に授賞式が開催された、日本初のホラー映画専門コンペティション「日本ホラー映画大賞」。その終了直後にMOVIE WALKER PRESSは、審査員を務めた女優の堀未央奈と、Base Ball Bearの小出祐介に直撃取材を敢行。熱烈なホラー映画ファンとして知られる2人はどんな想いを持って審査員を務めあげ、意欲的な応募作をどのような視点で選び抜いていったのだろうか。また、早くも開催が決定した第2回に期待することや、お互いのホラー観を語り合ってもらった。

「リング」シリーズをはじめ、数多くのホラー映画を世に送りだしてきたKADOKAWAが主催する「日本ホラー映画大賞」は、ホラー映画界に新風を吹かせる才能の発掘と支援を行なう目的で開催。「恐怖の村」シリーズの最新作『牛首村』(2月18日公開)が控える清水崇監督が審査委員長を務め、乃木坂46時代よりコアなホラー映画ファンを公言してきた堀と、「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズなどの実録ホラーにも造詣の深いことで知られる小出、映像クリエイターのFROGMAN、映画ジャーナリストの宇野維正が審査員を務めた。

当コンペの最高賞にあたる「大賞」を受賞した監督には、応募作品のリメイク版か完全オリジナルの新作長編映画を手掛ける権利が与えられるとあって、プロ顔負けのハイクオリティなホラー作品が数多く応募された本賞。審査員の面々は一次選考を通過した作品を事前にすべて鑑賞し、審査会ではそれぞれが推したい作品を挙げて議論を展開。予定されていた時間を大幅に超過するほど白熱した審査会の末に、下津優太監督の『みなに幸あれ』が栄えある第1回大賞に輝いた。

■「清水監督といつか作品でご一緒できたらいいな」(堀)

――普段のお仕事とは違う審査員という役割。終えてみての感想をお聞かせください。

小出「普段交わらないこの2人で取材を受けているのがだいぶ変な感じがします(笑)。 そもそも堀さんは僕のことなんて知ってました?」

堀「もちろん、知ってましたよ!でも乃木坂46時代に歌手として関わるのではなくて、交わらないであろう女優業のなかで一緒にお仕事することになったのは、すごいことだなと思いました」

小出「堀さんが主演した『ホットギミック ガールミーツボーイ』がすごく良かったので、審査会の時に作品のお話が聞けたのはうれしかったです」

堀「審査会はとても有意義な時間でしたね。職業も経験も趣味趣向も違う人たちで集まってお話ができて、皆さんの評価基準がすごく勉強になりました。清水監督は以前に取材でご一緒させていただきましたが、良いと思う作品がたまたま一緒だったりしてうれしかったです。いつか作品でご一緒できたらいいなと思いました」

小出「そんな細かいところまで見ているんだなと思うことばかりで、とても勉強になりましたね。清水監督やFROGMANさんのように映像作品を作られている方の視点だとそう感じるのかと感心したり、評論で膨大な作品を観てらっしゃる宇野さんとは意見が近くておもしろかったり。堀さんもすごくハキハキと話してくれるので、僕もちゃんとしゃべらなきゃって思いました(笑)」

■「知ったかぶらず、お客さん目線での審査を心掛けました」(小出)

――お2人は今回、どのようなポイントに注目して審査に臨んだのでしょうか。

小出「僕は映画が好きなだけで作る側ではないので、知ったかぶらずにお客さん目線で見ていようと思っていました。実際に審査会で、僕と清水監督でまったく見方が異なっている作品があって。同業者視点で清水監督がすごさを感じたのだろう部分に、お客さん目線の自分は全然ピンと来ていなかったんですね。でも、自分が音楽を聴く場合にも同じようなことが起きるので、それもすごくわかるんです。映画の細部における狙いやこだわり、技術やセンスの光る部分を同業者だからこそキャッチ出来ているんでしょうし、清水監督の意見は本当に勉強になることばかりでした」

堀「私の場合は、あえて出演者のお芝居を気にしないようにして、純粋に監督の方々がどういう映画を作りたいのかという点に注目していました。応募期間も短かったので、演技指導やキャスティングに時間をかけるのは難しいことだとわかっていましたし、監督さんがどこにこだわりを持っているのかと考えながら作品を観ていきました。ホラーとしてのタイプも作品ごとに違っていたのが魅力的で。半分はお仕事として、もう半分はいちホラーファンとして楽しんでいました」

■「心霊ビデオを見ていると、日本ってヤバい国なんじゃないかと思う(笑)」(小出)

――たくさんの作品を観ていくなかで、改めてご自身の嗜好と向き合うこともあったのではないでしょうか。

堀「やっぱり『日本ホラー映画大賞』というだけあって、私自身が日本のホラー映画に求めているものが見えるとうれしいという気持ちはありましたね。海外のホラー映画のような世界観を、そのまま日本でやってしまうのは非現実的に思えてあまり好きではなくて。身近な地域が舞台になっていたり、人間の闇の部分や醜い部分を照らしていたりと、“人間が一番怖い”というテーマに親近感を感じるのだと改めて気付かされました」

小出「僕もJホラーが好きなんだと改めて実感しました。公開当時、映画館に『リング』を観に行って、映画が終わって場内が明るくなった時に、そこにいる人全員が『やっと終わった…!』と安堵に包まれたのが、いまだに劇場体験として強くて。そういうすごいホラー映画を見たい!っていう気持ちはずっとありますよね。『リング』は偉大ですよね。“呪いのビデオ”というアイテムが発明されて、それをフックアップした『ほんとにあった!呪いのビデオ』も生まれたわけですし(笑)」

――『リング』の体験から、小出さんのホラービデオ愛は始まったのでしょうか。

小出「興味が出たのは間違いないですね。タイトルで“ほんとにあった!”と断言している潔さが素晴らしいです(笑)。1年に4〜5本リリースされて、1本につき6つか7つくらいの心霊映像が入っている…ということは、“ほん呪“だけで、年間30数本も霊がガッツリ映り込んだ映像が撮られていることになるわけで。日本ってヤバい国ですよね(笑)。最近ではTikTokにまで映り込むようになってきているので、皆さん気を付けてください」

■「これまでにないタイプのキャラクターを見てみたい」(堀)

――堀さんは『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスがお好きなんですよね。

堀「はい、大好きです(笑)。幼いころに衝撃を受けたものって、ずっと自分のなかに残っているじゃないですか。中学生の時にパソコンで好きなものを調べるという授業があって、(レザーフェイスの元となったシリアルキラーの)エド・ゲインについて調べたんです。生き方だったり、環境が彼をモンスターにした背景だったりも興味深いなと思って、ホラー映画をいっぱい観るきっかけになりました」

――審査会の時に堀さんは、「今回の応募作品にはモンスターを扱った作品が少なかった」という話をされていましたね。開催が決まった「第2回日本ホラー映画大賞」ではどういう作品が来ることに期待していますか。

堀「そうですね、もっと化け物が出てきてほしいなと(笑)。パッケージになった時にドンッと写ってもいいようなキャッチーなキャラクターが、今回の応募作にはあまりいませんでした。第2回では、これまでにないタイプのキャラクターを見てみたいなと思っています」

小出「僕は群を抜いて『これだ!』と思える作品に出会いたいですね。『天才きた!』みたいな瞬間に立ち会いたいです。エポックメイクな作品や、貞子や伽椰子に次ぐようなホラーキャラクターでもいいし、もちろんいままで見たことのないような衝撃的なアイデアにも期待しています。たぶん清水監督も、自身が作り上げた『呪怨』という金字塔を破壊してくれる映画が現れることを期待していると思います。そんな出会いがあったら素敵ですね」

構成・文/久保田 和馬