MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、永瀬廉主演でベストセラーを実写化した青春群像劇、家族で唯一の健聴者の少女と家族の姿を描くドラマ、マッツ・ミケルセンが復讐に燃える男に扮したアクションの、心を掴まれる3本!

■鋭さだけでなく、そっと寄り添う繊細な優しさ…『真夜中乙女戦争』(公開中)

若者から熱烈な支持を集める覆面作家、Fの初めての小説を『チワワちゃん』(19)、『とんかつDJアゲ太郎』(20)の俊英、二宮健監督が映画化。世の中のあらゆることに絶望を感じ、焦燥感を抱えた孤独な男子学生“私”が、大学で出会った謎めいた青年“黒服”と意気投合。ともに革命を起こそうと、東京破壊計画を企てる。自意識の塊で、こじらせ具合が痛々しいほどなのに、なぜか共感してしまう主人公の“私”を演じた永瀬廉、“私”が恋心を抱く“先輩”役の池田エライザ、“私”にとって特別な存在である“黒服”役の柄本佑。メインキャストの3人が抑制の効いた演技を通して、心の奥底に秘める複雑な感情を鮮やかに表現。彼らが口にするセリフの数々には、胸にグサグサと刺さる鋭さだけでなく、そっと寄り添ってくれるような繊細な優しさも感じられる。回転や反転カットを多用したスタイリッシュな映像がちりばめられた作品全体に漂うのは、タイトルどおり、濃密な夜のイメージ。個人的には映画好きな“黒服”が自宅に作った私設映画館が実に魅力的で、彼が所蔵する作品のラインナップに思わず目をこらしてしまった。(映画ライター・石塚圭子)

■スクリーンから伝わってくる彼らの連帯感は本物…『コーダ あいのうた』(公開中)

サンダンス映画祭で史上最多4冠(観客賞、審査員賞、監督賞、アンサンブルキャスト賞)に輝いた、フランス映画『エール!』(14)のリメイク。コーダとはろう者の親をもつ聴者のこと。高校生のルビーは両親と兄と暮らす家族のなかでただ一人の健聴者。そのため、幼い頃から家族の“通訳”を担い、家業も手伝っている。家族も知らない歌の才能があるが、家族のために夢を諦めようとしていた。主役のエミリア・ジョーンズ以外、オスカー女優のマーリー・マトリンをはじめ、家族役全員が聴覚に障がいを持つ俳優。エミリアは9か月も手話の訓練をし、通訳を介さず、彼らとコミュニケーションをとっていたそうで、スクリーンから伝わってくる彼らの連帯感は本物。家族が支えになっても、重荷になることがあってはならないはず。介護やヤングケアラーの問題をも考えさせられる。ルビーが手話を通じて歌を伝えようとするジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」のほか、アレサ・フランクリンやマーヴィン・ゲイなど、合唱曲の選曲センスが心にくい。(映画ライター・高山亜紀)

■“本当の強さ”とはなにかについて考えさせられる…『ライダーズ・オブ・ジャスティス』(公開中)

ハリウッドで活躍しながら、母国デンマークをはじめヨーロッパの良作にもコンスタントに出演するなど映画ファンからの信頼も厚いマッツ・ミケルセン。そんなミケルセンの最新作『ライダーズ・オブ・ジャスティス』が、ファンの一人として絶対に見逃せない理由は、『アダムズ・アップル』(05)などで何度もタッグを組んできたアナス・トマス・イェンセンの監督作だから。物語の主人公は妻を列車事故で失った軍人のマークスで、その列車に乗りあわせ、運よく生き延びた数学者のオットー(ニコライ・リー・コース)から、「事故は犯罪組織“ライダーズ・オブ・ジャスティス”による計画に違いない」と聞かされる。復讐心に燃えるマークスは、オットーと彼の仲間とともに組織への報復活動に身を投じていく。卓越した戦闘技術で組織の人間を粛清するマークスだが、復讐のことで頭がいっぱいで、残された一人娘を顧みる余裕もない。“本当の強さ”とはなにかについて考えさせられるとともに、信じたいものを見るために事実を歪曲させてしまう、といった昨今の陰謀論に翻弄される人々への警鐘もあり、北欧映画らしくブラックな皮肉も効いている。一方で、ハードでシリアスな内容なのに、無骨で寡黙なマークスと戦闘経験皆無のオットーら理数系スペシャリストたちによる、気の抜けたかけあいで笑わせてくれるなど、どこかほっこりした気分にもさせてくれるイェンセン節は今回も健在だ。(ライター・平尾嘉浩)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!

構成/サンクレイオ翼