ジョージ・ルーカスが原案と製作総指揮を務めた冒険ファンタジー映画『ウィロー』(88)。その20年後の世界を描いたオリジナルシリーズ「ウィロー」のディズニープラス独占配信が、11月30日にスタートした。MOVIE WALKER PRESSでは、エンタメ感満点で描かれる本作の魅力をレビュー連載で徹底ガイド。今回は、再び壮大な冒険の幕が開く第1話と第2話のレビューをお届けする!

※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

■日本でも大ヒットを記録!前作『ウィロー』をプレイバック

ルーカスの出世作である『アメリカン・グラフィティ』(73)に出演していたロン・ハワードが、映画監督となって初めてルーカス製作作品の監督を務めたのが、前作の『ウィロー』だった。それから30年を経て『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(18)でルーカスと再び一緒に仕事をしたハワードは、その時の来日インタビューで「ルーカスは僕にとって兄のような存在」だと語っていた。

兄弟のような関係は、俳優と監督、もしくは監督とプロデューサーとしての仕事上では“師弟関係”、あるいは“盟友”という表現がふさわしいだろう。人と人との繋がりを示すこのテーマは、ルーカスが生みだした神話たち、「スター・ウォーズ」「ウィロー」の根幹にあるテーマだ。前作ではウィロー(ワーウィック・デイヴィス)とマッドマーティガン(ヴァル・キルマー)の盟友関係、ウィローがフィン・ラゼル(パトリシア・ヘイズ)から魔法を教わるという師弟関係が感動をもたらしていた。長く険しい冒険の旅路は、到底一人では歩めない。「スター・ウォーズ」と「ウィロー」に共通する胸を打つ“絆”の物語が、今作では新たなキャラクターと共に描かれる。

まずは前作を簡潔におさらいしておこう。魔術を使って世界の大半を手中に収めた邪悪な女王バヴモルダ(ジーン・マーシュ)は、“しるし”を持つ赤ん坊が生まれバヴモルダを滅ぼすだろうという、魔女フィン・ラゼルの予言を危惧していた。そこで妊娠した女性たちを監視下に置いていたのだが、ある日本当に“しるし”を持つ赤ん坊が生まれてくる。その赤ん坊を抱えて城から逃げだした助産師は、追手に捕まりそうになりながら赤ん坊を川へと流して逃す。その赤ん坊を拾ったのが、魔法使いを夢見るネルフィン族の青年ウィローだった。

ウィローは長老の教えに従い、その赤ん坊を人間の元へと帰すための旅へと出発する。その道中で囚われの身となっていた戦士のマッドマーティガンと出会ったり、妖精のブラウニー族に捕まったりと、様々な困難を経験しながら仲間を増やしていくウィロー。動物の姿に変えられていたフィン・ラゼルから魔法を習い、戦いを経て味方になったバヴモルダの娘ソーシャ(ジョアンヌ・ウォーリー)らとバヴモルダに挑み、無事に世界は平穏を取り戻したのである。

公開当時、日本でも配給収入15億円のヒットを記録した『ウィロー』。前作から30年以上という長いスパンを経て、前作を観たことがある人の記憶を呼び覚まし、観たことがないという人にもわかる物語として続編を作りあげるのは容易なことではない。特に複雑な設定をもつファンタジーというジャンルではハードルが高いことがわかるだろう。

しかし今作の第1話は、そうした不安をあっさり吹き飛ばしてくれる軽快さと、新鮮なおどろきを感じさせてくれた。前作を知っていればより深く楽しめるが、知らなかったとしても充分に楽しめる世界観構築がなされている。実に巧みな“続編”を作ったものだと脱帽せずにはいられない。さすがルーカスフィルム、おそるべし!

■第1話は“旅の始まり”。その世界観の美しさに魅了される!

“しるし”を持つ赤ん坊とはなにか。この一点だけを理解しておけば「ウィロー」の世界へとすんなりと入ることができるだろう。もちろん第1話の冒頭で、前作の映像を織り交ぜながら説明をしてくれるのでご安心を。この語り手が、34年ぶりにヒロインのソーシャ役を再演したジョアンヌ・ウォーリーというのもアツい仕掛けだ。

第1話「魔風」で描かれるのは、これから始まる壮大な冒険の序章。主要な登場人物たちの関係にフォーカスを当てながら、若き冒険者たちがいかにして冒険へと繰りだし、そしてウィローと出会うのか。ティル・アスリーン王国の女王となったソーシャは、娘のキット(ルビー・クルス)をガラドーン王国のグレイドン王子(トニー・レヴォロリ)と政略結婚させようとするのだが、その宴の夜に闇の勢力が襲い掛かり、キットの双子の兄であるエリク王子(デンプシー・ブリク)が連れ去られてしまう。

拾った赤ん坊を“返しにいく”冒険だった前作から、今作では“取り返しにいく”冒険へとシフトする。結婚どころではないと、兄を救うために立ち上がる勇敢なキットに、彼女のソウルメイトであるジェイド(エリン・ケリーマン)、腕っ節の立つ囚人のボーマン(アマール・チャーダ=パテル)、そしてグレイドンも同行し、ソーシャに警告を送り続けていたウィローのもとへと向かう。そこへエリクと恋仲である城のキッチンメイドのダヴ(エリー・バンバー)が加わり、個性豊かな“旅の仲間”が確立されるといった流れだ。

序盤から闇の勢力との息詰まる戦闘シーンで引き込まれたかと思えば、旅へ出発した途端に画面いっぱいに広がる雄大なロケーションの美しさに息を呑む。とりわけ目を見張るのは、“しるし”を持つ赤ん坊を守るために張られた結界を描くVFXの美しさである。幻想的な光の壁の向こうに停まった蝶に手を伸ばしたダヴ。ゆっくりと掻き分け向こう側へと出る時に吹きつける風と、その先に待ち受けている濃霧の世界…。王国全体を覆う結界のヴィジュアルがルーカスフィルムならではの映像表現で描かれ、物語をより一層ファンタジックなものへ昇華させている。

34年の歳月を経て目覚ましいほどに進化を遂げた映像技術によってこの世界観に魅了されたところで、満を持して登場するウィロー。そして明かされる“しるし”を持つ赤ん坊の正体…。先が気になって仕方がなくなる展開には、第1話と第2話が同時配信で本当に良かったと胸を撫で下ろした。

■“しるし”を持つ赤ん坊は意外なところに…師となったウィローが築く、新たな師弟関係

第2話では、前作からの20年というストーリー上の時間経過のなかでウィローとソーシャ、そして“しるし”を持つ赤ん坊=エローラになにがあったのかが少しずつ見えてくる。いずれ世界を束ねる存在になるエローラに魔法の訓練をさせたいと考えるウィローと、彼女に普通の生活を送らせたいと願うソーシャ。

さながら2人の対立は、子どもの教育方針をめぐっての争いのようなものだ。魔法に憧れを持ち続け、本当に魔法使いになれたウィローと、魔術によって実母がダークサイドに堕ちたソーシャ。そう考えると意見が食い違うことも致し方あるまい。とはいえ幼いエローラに会いにきたウィローにソーシャが言い放つ、「豚を消す手品でもするつもり?」(これは前作のクライマックスでエローラを救ったウィローの魔法のことだ)というのはいくらなんでもあんまりだ。

ダヴがエローラであることがわかり、ここが好機と魔法を教えようとするウィローに対し、呪文一つうまく唱えることができないダヴ。ここでもまた一つ、新たな食い違いのようなものが生まれ、それに引きずられるようにして旅の仲間たちのなかにも険悪なムードが立ち込め始めてしまう。終盤ダヴがグレイドンに吐露する真意。努めて“普通”に育てられてきた子どもが“特別”であることを期待された時、どのように応えることができるのかという葛藤。誰もが共感できる成長の悩みとして描かれていることで、等身大のキャラクターたちに感情移入させられるのだ。

前作では魔法をなかなか使いこなすことができず、苦しみながら成長していったウィロー。それが本作では“大導師”として偉大な魔法使いになって尊敬を集めており、時の流れがしっかりと物語に組み込まれている。フィン・ラゼルからウィローへ、そしてウィローからダヴへ。師弟関係の継承というファンタジーの王道プロットは、物語のゆくえを大きく左右することとなるだろう。

ところでこの第2話では、前作で活躍した“シャーリンドリアの杖”が登場する。このように随所に前作の要素が散りばめられているとなれば、“カイメリアの胸当て”を探しに行ったままどこかへ消えてしまったと語られるマッドマーティガンの再登場にも期待したいところだ。

「スター・ウォーズ」「インディ・ジョーンズ」を生みだしたルーカスフィルムが持てる力を結集した、非常に贅沢なオリジナルシリーズ「ウィロー」。この年末年始は毎週水曜日の夕方が来るのを楽しみに待つことになりそうだ!

文/久保田 和馬