『ロミオ+ジュリエット』(96)や『華麗なるギャツビー』(13)、『エルヴィス』(22)など、常に煌びやかなビジュアルセンスで映画ファンを魅了してきたバズ・ラーマン監督の真骨頂が味わえる『ムーラン・ルージュ』(01)。同作をミュージカル化した「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」がこの夏、日本に初上陸。先日解禁された本公演のキャストビジュアルと共に、オリジナル映画版の世界観もおさらいしていきたい。

■映画版は2大スターが共演!時代を超えた表現に彩られた斬新なミュージカル

“ムーラン・ルージュ”は、1889年にフランスのパリ、モンマルトル地区に開業する実在のナイトクラブ。“ムーラン・ルージュ”とは日本語で「赤い風車」を意味し、その名の通り建物の屋上にはシンボルとなる赤い風車が据えられている。フランス映画界の巨匠ジャン・ルノワール監督の『フレンチ・カンカン』(54)をはじめ、これまで様々な映画のなかに登場。現在も華やかでユニークなパフォーマンスは健在で、パリを代表する観光名所の一つとなっている。

そんな“ムーラン・ルージュ”を舞台に、ユアン・マクレガー演じる作家志望の青年クリスチャンと、ニコール・キッドマン演じる花形スターのサティーンの情熱的で悲しい愛を描いたのが、映画『ムーラン・ルージュ』。華やかな世界で運命に翻弄される2人の姿を、1899年という舞台設定にもかかわらずエルトン・ジョンの「Your Song」やマドンナの「Material Girl」など20世紀のポップミュージックを多数散りばめながら描き、公開当時大きな話題を集めた。

第54回カンヌ国際映画祭でオープニングを飾り、翌年発表された第59回ゴールデン・グローブ賞では作品賞(ミュージカル・コメディ部門)と主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)、作曲賞の3部門を受賞。第74回アカデミー賞では作品賞をはじめ8部門にノミネートされ、衣装デザイン賞と美術賞の2部門を受賞。全世界で興行収入1億8000万ドルを超えるヒットを記録し、いまなおラーマン監督の代表作として愛されている。

■トニー賞を席巻!ミュージカル版は歌も踊りもパワーアップ

映画公開から20年近い歳月を経て誕生した「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」。演出を務めたのは、名作『ロッキー』(77)のミュージカル版を手掛けたり、アマゾン・オリジナル・シリーズ「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」で製作総指揮を務めたアレックス・ティンバース。脚本は、『ラスト サムライ』(03)や「007」シリーズの脚本家であるジョン・ローガンが執筆。

劇中では19世紀にオペレッタを創始したオッフェンバッハから、ローリング・ストーンズやエルトン・ジョン、マドンナをはじめとする20世紀のヒット曲。さらには21世紀の歌姫レディー・ガガまで、160年以上にわたるポピュラーミュージック約70曲が登場し、マッシュアップミュージカルとしての魅力が映画版よりもさらにパワーアップ。2019年7月にブロードウェイで初演を迎えると、トニー賞で13部門14ノミネートを獲得し、ミュージカル作品賞など10部門を受賞する激賞の嵐を巻き起こした。

■元宝塚のトップスターや“ミュージカル界のプリンス”ら、豪華な顔ぶれが集結

1899年、パリ。ムーラン・ルージュで出会い、激しい恋に落ちたアメリカ人作家のクリスチャンと、ムーラン・ルージュの花形スターのサティーン。しかしクラブのオーナー兼興行主のハロルド・ジドラーの手引きでサティーンのパトロンとなった裕福な貴族デューク(モンロス公爵)が2人を引き裂こうとする。クリスチャンはボヘミアンの友人たちと共に華やかなミュージカルショーを舞台にかけ、サティーンの心をつかもうとしていく。

今回上演される日本版には、この物語にふさわしい煌びやかなキャストが勢ぞろい。映画版でニコール・キッドマンが演じていたサティーン役は、元宝塚歌劇団雪組トップスターの望海風斗と、「Jupiter」で日本レコード大賞新人賞などを受賞し紅白歌合戦出場8回、近年はミュージカル女優としても活躍する平原綾香がダブルキャストで演じる。

またユアン・マクレガーが演じたクリスチャン役は、“ミュージカル界のプリンス”として人気を集め、近年はテレビドラマやバラエティなどでも活躍する井上芳雄と、「仮面ライダーエグゼイド」でドラマデビューを飾り、2022年秋に帝国劇場で上演された「エリザベート」でのルドルフ役も記憶に新しい甲斐翔真のダブルキャスト。

ほかにハロルド・ジドラー役は大河ドラマ「どうする家康」にレギュラー出演している橋本さとしと、剣舞家や書家としても活動する松村雄基。トゥールーズ=ロートレック役には上野哲也と上川一哉。デューク(モンロス公爵)役は伊礼彼方とシンガーソングライターのK。サンティアゴ役には中井智彦と中河内雅貴。そしてニニ役には2022年12月に「モーニング娘。’22」とハロー!プロジェクトを卒業した加賀楓と、「ウエストサイドストーリー」でミュージカルデビューを果たした藤森蓮華が、それぞれダブルキャストで演じる。

ブロードウェイに始まりイギリスのウエストエンドやオーストラリアなどでも、圧倒的なパフォーマンスで世界中の観客を魅了してきた「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」。日本の地で、日本人キャストによってどのように体現されているのか期待せずにはいられない!

「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」は6月24日(土)から8月31日(木)まで帝国劇場にて上演される。詳しい公演スケジュールやチケットの発売情報などは、公式ホームページをチェックしてほしい。

文/久保田 和馬