橋本環奈と上白石萌音がダブルキャストで主演を務め、2022年に好評を博した舞台「千と千尋の神隠し」が、2023年8月に名古屋の御園座で、2024年3月に東京の帝国劇場で再演されることが発表。あわせて、初演となった2022年公演のBlu-rayが7月29日(土)にリリースされることが決定した。

日本映画史上初めて興行収入300億円を突破する爆発的な大ヒットを記録した宮崎駿監督の不朽の名作『千と千尋の神隠し』(01)。第52回ベルリン国際映画祭では最高賞である金熊賞にアニメ映画として史上初めて輝き、第75回アカデミー賞では長編アニメーション映画賞を受賞。2019年には中国で初めて公開され大きな話題となるなど、壮大かつ独創的な世界観が日本のみならず世界中で愛され続けている。

東宝の製作、スタジオジブリ協力で制作された舞台版は、「レ・ミゼラブル」のオリジナル版の潤色、演出を担うなど演劇史に残る名作を生みだしてきた英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの名誉アソシエイト・ディレクター、ジョン・ケアードの翻案、演出のもと、日本の5大都市劇場で計102回のロングラン公演を達成。公演期間中には、上演関係者一同が菊田一夫演劇大賞に輝くなど、高い評価を集めた。

そしてこのたび決定した再演では、引き続き橋本と上白石が主人公の千尋役を続投。公演スケジュールやチケット販売スケジュール、出演キャストなどは追って発表される予定となっているので、続報に乞うご期待。

また、2022年公演のBlu-rayは橋本と上白石それぞれが千尋を演じた2バージョンがリリース。豪華シリアルナンバー入りBOX仕様の初回数量限定版Blu-rayは、両バージョンの本編ディスクに加え、4時間超の特典映像が収録された特典ディスクと舞台写真入り特製ブックレットが同梱。是非ともこの機会に、劇場とご家庭の両方で舞台「千と千尋の神隠し」の世界を堪能してほしい。

<コメント>

●橋本環奈
−再演決定についての想いをお聞かせください。
「『前回は観に行きたくてもチケットが取れなかった』という声をいただいていたので、再演は純粋にうれしいです。『千と千尋の神隠し』はもともと原作の映画から“何回も観たい”と思わせる魅力があると思いますが、それが舞台にも色濃く残っていたらいいなと思いながら演じていました。毎回満員御礼の客席を感じながらお芝居をしていましたが、再びカンパニーの皆とこの作品をお客様にお届けできることがすごく楽しみです。

御園座公演は、前回中止等で完全には実施できなった公演も多々あったので、カンパニーの皆にとって、すごく思い入れが強いと思います。『毎日の様にいつ(コロナ禍で)終わってしまうかわからないから、毎日全力で演じよう』と萌音ちゃんやカンパニーの皆とも言いながら細心の注意を払っていましたが、残念ながら(一部休演が)現実になってしまったので、中止で御園座に来られる予定だったにもかかわらずいらしていただく事が出来なかった方 には、是非観に来ていただきたいです」

−舞台『千と千尋の神隠し』の公演は、橋本さんにとってどんな公演でしたか?
「舞台は初めてだったので、毎日勉強になることばかりでした。まるで学生に戻ったような感覚で、色んなことを学び、吸収できる楽しさを味わいました。半年以上同じメンバーと顔を合わせて、すごく濃厚な時間を過ごせたのも財産になりました。ドラマや映画でもここまで長い期間同じ役をしたことはありませんでしたが、半年以上毎日“千尋”と向き合って、毎公演3時間同じお芝居をしているのに日々発見があり、舞台ってこういうものなんだ、と様々気づかせてくれた作品です。成長って目に見えるものではないけれど、『千と千尋の神隠し』の舞台を演じたことで、その後の映画やドラマの作品へのアプローチも変わりました」

−2025年に帝国劇場が建て替えのため一時閉館となりますが、その前の2024年に帝国劇場で舞台『千と千尋の神隠し』を上演することについて
「最初に舞台『千と千尋の神隠し』のお話を聞いたとき、まず『あの帝劇でやるんだ!?』と共に『初めての舞台で帝劇の真ん中に立てるんだ!?』と思ったのを鮮明に覚えています。帝国劇場は、歴史と伝統のある、お芝居をしている人は誰もが立ちたい場所。皆の憧れの象徴である劇場が一時閉館するということにあたり、最後のラインナップに舞台『千と千尋の神隠し』が入ったのはすごいことだな、と思います。

『千と千尋の神隠し』が幕を開けたのが帝国劇場だったので、帝国劇場で再演できるのは喜びもひとしおです。それぞれの劇場でお客様の反応が違うのですが、帝国劇場は、お客さんからも緊張している空気感が感じられてそれが凄く素敵だったんです。そんななか私は、帝国劇場で千尋を演じて、不思議と安心感があったんですよね。萌音ちゃんは緊張で死にそうだったと言っていましたが、私は初日が帝劇でよかったと思っていました。もちろん緊張はしましたが、帝国劇場に大きく包まれている感覚がありました。家族や友達も、帝劇に来られるというのがうれしかったみたいです。『ただいま』という気持ちになると思います」

−映像になった舞台『千と千尋の神隠し』をご覧になっていかがでしたか?
「7月の大千穐楽後に配信を初めて観たのですが、『こんな感じだったんだ!』と思いました。次のエピソードがなんなのか、誰がどこにいるのか全部わかっているのに、それでもあっという間に観きってしまいました。劇場の客席で観ているときはまずセットや全体を把握しようとすることが多いと思いますが、映像で観るのは客席から観ているのとは全然違って、カット割りがあってキャストの近くに寄っていくので、お芝居が伝わりやすいかもしれませんね」

−発売されるBlu-ray には、御園座大千穐楽のカーテンコールや制作過程のメイキング映像も特典として入っています。
「各地でのカーテンコールの景色は本当に忘れられません。萌音ちゃんと公演中に交わしていた交換日記で、『(カーテンコールで)何話す?』とか、『今日はこういうこと言ったよ』と日常的に共有しあったりしていたのですが、特に博多座と御園座の千穐楽に関しては鮮明に覚えています。今回収録されている御園座の大千穐楽のカーテンコールではカンパニー皆が想いを伝えて、想いが溢れて、出演できなかった人たちの想いも、カーテンコールに乗っかっていたように感じました。

萌音ちゃん、ゆうみちゃん(咲妃みゆ)はじめ大千穐楽に出演できなかったキャストも、参加できない稽古、本番中もずっとモニターで見てくれていました。大千穐楽公演は、舞台稽古から『萌音ちゃんの想いを乗せて演じたい』と思っていたので、頭の片隅で『萌音ちゃんてこういう感じだったな』と思いながら演じていました。私も改めてカーテンコールを振り返って見たいですし、稽古のメイキングは絶対おもしろいと思います」


●上白石萌音

−初演で上白石さんが一部体調不良のため出演できなかった御園座公演の出演についての想いをお聞かせください。
「初演の御園座には、出演できず悔しい、という想いだけではなく、土壇場を全員で踏ん張ったという特別な思い入れがあります。私はその渦中にはおりませんでしたが、リモートでその熱を感じていました。舞台上やロビーで練習している姿をビデオ通話で見ていたので、御園座に一歩踏み入れたら泣いてしまうのでは、というくらいです。そこでもう一度“千尋”として舞台に立つことができるのはとてもうれしく、ご縁を感じます」

−舞台『千と千尋の神隠し』の公演は、上白石さんにとってどんな公演でしたか?
「まだ終われていない、まだ続いている感じがします。他の何をしていても、まだ“千尋”が心のなかにいる感覚。実際カンパニーの皆さんとの関係も続いているので、すごく大切な作品であり、カンパニーです。一旦は千穐楽を迎えましたが、こうやってまた会えるような気がしていました」

−2025年に帝国劇場が建て替えのため一時閉館となりますが、その前の2024年に帝国劇場で舞台『千と千尋の神隠し』を上演することについて
「帝国劇場は演劇を志す者にとっては大きな大きな場所。お客様のなかにも名残惜しく思っている方がたくさんいらっしゃると思います。劇場への感謝の気持ちを込めながら他の作品も上演されていくと思うので、そのラインナップに加われることがうれしいです。楽屋の窓からよくみんなで顔を出して挨拶していたので、その吹き抜けの部分は是非新・帝劇にも残してほしいです(笑)」

−映像になった舞台『千と千尋の神隠し』をご覧になっていかがでしたか?
「環奈ちゃんの演技を客席から観ていたことはありましたが、自分が演じているのを客観的に見るのは新鮮でした。劇場だと前の客席からしか見られないような細かいパペティアの動きやセットのこだわり、会話をしている人以外の顔などが映っているので、“通好み”の仕上がりになっているかと思います。初演のエネルギーの爆発を映像で感じていただきたいですし、御園座再演をご覧になる前に『履修』なさるのもおもしろいと思います(笑)。ご観劇が叶わない方も、御園座公演と同じ時期にご自宅で公演を見ることができますね」

−発売されるBlu-ray には、御園座大千穐楽のカーテンコールや制作過程のメイキング映像も特典として入っています。
「(メイキング映像は)ここまで見せていいの?というところまで赤裸々に映されています。幕を上げるまでの裏側には、美しい部分も泥臭い部分もなかなかうまくかみ合わない部分もあります。作品を愛してくださっている方はもちろん、将来演劇に携わりたい方にも、現場の生の雰囲気を感じていただきたいです」

文/久保田 和馬