出演作が毎回ヒットするソン・ジュンギ。どんなキャラクターでも魅力を爆発させるだけでなく、安定感のある演技力で“期待を裏切らない、信頼できる俳優”と呼ばれている。その勢いは俳優業だけにはとどまらない。「ミュージックバンク」などの音楽番組のMCを務め、世界からも注目されるK-POPの音楽授賞式「MAMA(Mnet Asian Music Awards)」や釜山国際映画祭の司会もこなす。いまでは韓国を代表するトップスターだ。

学生のころから成績優秀で、将来の夢は外交官かアナウンサーだったという。大学時代は校内放送のアナウンサーとして活動していたこともあり、その才能は作品以外に司会にも生かされている。2008年の大学在学中に『霜花店(サンファジョム) 運命、その愛』(08)で映画デビューして以降、着々とスターへの階段を登ってきた。

■20代の学生役も違和感ゼロ!話題の最新作

最新作の「財閥家の末息子〜Reborn Rich〜」は、2022年の韓国ドラマで最高視聴率1位の26.9%を記録。大人気ウェブ漫画が原作で、韓国トップの財閥スニャングループのリスク管理を担当する秘書のユン・ヒョヌが財閥一家の誰かに裏切られ、財閥の末息子チン・ドジュに生まれ変わって復讐する下克上ストーリー。日本ではLeminoで独占配信中だ。

ソン・ジュンギは秘書のユン・ヒョヌとチン・ドジュの2つのキャラクターを確立させながら、20代の学生役もまったく違和感を感じさせずに演じ切っている。前世の記憶を武器にした頭脳戦はスピード感を加速させ、見ると止まらない復讐劇に仕上げていた。今回は代表作と共にソン・ジュンギの魅力と活躍を振り返っていきたい。

■“ソン・ジュンギロス”になった視聴者が辿り着くドラマといえば…

出世作となったのは、大ヒット作「トキメキ☆成均館スキャンダル」。韓国で“成均館病”の言葉を生み出すほど、多くの視聴者を虜にしたドラマだ。2010年は第二次韓流ブームの真っ只中で、日本でも認知度を広める機会となった。ドラマは女子禁制の名門校である成均館に入学したキム・ユニ(パク・ミニョン)と国の未来を背負う若き青年4人が繰り広げる成長ラブコメディ時代劇。ソン・ジュンギはイケメンエリートメンバーの1人、大金持ちの息子ク・ヨンハ役で人気に火がついた。

ヨンハはきらびやかな衣装を纏い上品さが漂う。やはり端正な顔立ちには韓服が映える。かなりのプレイボーイで軽薄ながらも「俺はク・ヨンハだ」と自信たっぷりで、鋭い洞察力や聡明さを持ち合わせ、友情にも熱い。ユニとの出会いをきっかけに成長していく様子も描かれ、いろんな一面を披露しては魅了する。豪華キャストの中で“ヨンハ派”に心が傾くのも納得がいく。本作は当時ハマった人だけでなく、ソン・ジュンギロスになった視聴者が辿り着くドラマでもある。驚くべきは10年以上前の作品なのに、外見がほぼ変わっていないこと。驚異のビジュアルにもぜひ注目していただきたい。

■ルックスだけではない!高い演技力を評価され、一気にトップスターへ

さらに時代劇の「根の深い木 −世宗大王の誓い−」では朝鮮王朝4代王・世宗の青年時代という重要な役どころを演じた。ベテラン俳優に囲まれて相当なプレッシャーを抱えていたと言うが、短い登場でもカリスマ性を発揮し、しっかりと爪痕を残している。

2012年には最も活躍した俳優ランキングで1位に選ばれた。この年はドラマ「優しい男」で愛する女性に裏切られ全てが変わってしまった男を熱演。映画『私のオオカミ少年』(12)では言葉を一切発さない難役に挑戦し、高い演技力を評価された。見た目は人間だが、人間離れした行動をする獣の役だ。ある日、病気を患い心を閉ざしていたスニ(パク・ボヨン)と出会い、“チョルス”と名付けられ穏やかで優しい時間を過ごす純情物語である。本作は700万人以上の観客を動員させ、純愛ロマンスでは異例の大ヒット作へと導いた。

当時の彼はセリフがないことに対して「役者の武器がひとつ無くなって、すごく悩んだ」と語っている。しかし劇中では“オオカミ少年”を繊細に演じていた。食べ方ひとつや四つん這いで歩く姿は獣そのものなのだが、眼差しや呼吸、鳴き声だけでチョルスの感情が伝わってくる。そしてスニに芽生えた純真無垢な思いに、最後は思わず涙してしまうのだ。実在しない“オオカミ少年”をチョルスとして最大限に表現したソン・ジュンギは俳優としての地位を確立していく。

■ストレートな愛情表現に、世界中の女性ファンを虜に!

最高視聴率41.6%を叩き出し、アジアで大ムーブメントを巻き起こした「太陽の末裔 Love Under The Sun」。除隊後の復帰作品であり、代表作として加わったのは言うまでもない。第52回百想芸術大賞(韓国のゴールデングローブ賞)では共演のソン・ヘギョとともにグローバル賞と人気賞を受賞。他にも第30回KBS演技大賞など数々の賞を総なめした。ドラマでは特殊部隊の軍人ユ・シジン大尉を演じ、外科医のカン・モヨン(ソン・ヘギョ)に一目惚れして猛アタックする。駆け引きは一切しないストレートなシジンの愛情表現に落ちない人はいないだろう。リーダシップがあって頼もしく、お茶目な一面や胸キュンさせるセリフの数々は甘いマスクがより一層輝かせる。シジンのキャラクターとソン・ジュンギのシンクロ率の高さが作品をけん引していた。

■“悪を悪で成敗する”ダークヒーロー役に初挑戦!

2021年の韓国ドラマのヒット作と言えば「ヴィンツェンツォ」だろう。サスペンス、コメディ、アクション、ノワールなど多彩なジャンルが詰まった斬新なストーリーはNetflixでも配信され、グローバル圏での人気を獲得。アジアから世界にソン・ジュンギの存在を知らしめる作品になった。

彼が演じたのはイタリアマフィアの顧問弁護士を務める、韓国系イタリア人のヴィンツェンツォ・カサノ。雑居ビル「クムガ・プラザ」に眠る金塊を狙うために韓国へ戻るが、ビルを取り壊そうとする大企業のバベル製薬の不正を暴くために対立することに。スーツ姿でバシッと決めるクールなキャラで人情味があるかと思いきや、冷徹で手段を選ばず容赦ない。危険だとわかっていても近づきたくなる男だ。“悪を悪で成敗する”をテーマとした本作でダークヒーロー役に初挑戦し、自ら“人生(思い入れのある、印象深い)キャラクター”と評するほど。アップデートされたソン・ジュンギを堪能できる一作である。

■初の父親役で役柄の幅を広げていく…次回作にも注目!

またNetflixのSF映画『スペース・スウィパーズ』では宇宙船のパイロット役で登場。配信スタート2日目で、世界28か国の人気映画ランキング1位に。初の父親役が斬新で役柄の幅を広げている。

さらに、Netflix映画『My Name is Loh Kiwan(英題)』への出演が決定しており、早くも次回作に注目が集まっている。必死に生きようともがく脱北者役で極限の愛が描かれるそうだ。また新しい顔を見せてくれることに期待してしまう。現在30代後半だが、40代、50代といつまでも先が楽しみな俳優であることは間違いない。

文/ヨシン