現在開催中の第76回カンヌ国際映画祭で現地時間5月26日、コンペティション部門に出品されている『PERFECT DAYS』が公式上映。上映前のレッドカーペットにメガホンをとったドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース監督と主演の役所広司、中野有紗、アオイヤマダ、田中泯が登場し、大きな声援と祝福に包まれた。

『ベルリン・天使の詩』(87)や『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(99)などの傑作を世に送りだしてきたヴェンダース監督が、日本の公共トイレに“Small Sanctuaries of peace and dignity(=平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)”を見出し、役所演じるトイレの清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡いだ本作。

レッドカーペット前に実施された取材でヴェンダース監督は、キャスト陣との久々の対面にうれしそうな表情を見せ「役所さんと仕事をするのは夢のようなことでした。この作品にはスピリチュアルなレベルがあり、皆さんがそれを感じてくれていました」とコメント。一方で役所は「(ヴェンダース監督が)常に楽しそうにしていたので、その姿勢がキャストを励まし、大きな演出になっていたと思います」と、世界的名匠との有意義なコラボを振り返った。

上映は2300人以上を収容できるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレで行われ、場内は満員御礼。ヴェンダース監督とキャスト陣が会場に姿を現すと観客たちは総立ちと満場の拍手で彼らを迎え入れ、あたたかい空気のなかで上映がスタート。そして2時間5分の上映が終了するや会場は一気に熱を帯び、スタンディングオベーションが約10分続くなど大盛況で幕を閉じた。

上映後に行われた囲み取材で役所は「皆さん褒めるのが上手ですよね」と照れながらも、「監督が褒められても自分が上手いと思わず、けなされても自分がダメだと思わず、映画で語りなさいとおっしゃっていて、まさにその通りだと思っていました。ですが今日みたいなあたたかい拍手を受けて、ああ、お客さんが喜んでくれている。良かったな、と心から思いました」と感無量の様子。また田中も「映像のお仕事でスタンディングオベーションは初めてで、うれしいというよりも『役所さん、やったね!』という気持ちで抱きつきたかったです」と語った。

ヴェンダース監督がカンヌのコンペ部門に参加するのは、15年ぶり10度目。過去には『パリ、テキサス』(84)でパルムドールと国際批評家連盟賞、『ベルリン・天使の詩』で監督賞、『時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース!』(93)で審査員グランプリに輝き、『さすらい』(76)で国際批評家連盟賞を受賞している。各賞が発表される授賞式の結果は、現地時間5月27日(日本時間の本日)に発表される。本作から届けられる続報に注目だ!

文/久保田 和馬