世界三大国際映画祭の1つ、第76回カンヌ国際映画祭が、フランス現地時間5月16〜27日にて開催された。6月30日(金)に公開される『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』チームが登場して初日をアドベンチャラスに飾り、最終日には受賞結果が発表され、役所広司が男優賞、是枝裕和監督作品『怪物』(公開中)の坂元裕二が脚本賞とクィア・パル厶賞を受賞というW快挙を成し遂げて、日本勢にとってドラマティックな展開で幕を閉じた。コンペティション部門の最高賞であるパルム・ドールに輝いたのは、ジュスティーヌ・トリエの『Anatomy of a Fall』。史上3人目となる女性監督の獲得となった。開催期間の長いお祭りなだけに、セレブリティの多くのファッションが見られるのも楽しみの一つ。フレンチ・リヴィエラをますます風光明媚にした女優たちをご紹介!

●ナタリー・ポートマン
『May December』でカンヌ入りしたポートマン。同作のプレミア、レッドカーペットでまとったのは、花びらが重なり合ったようなディオールクチュールのボールガウン。クリスチャン・ディオールが1949年にデザインしたジュノンというドレスにインスパイアされたものだという。

イベントのフォトコールでは、ペディキュアまでレッドで揃えたミニスカートルックで登場。キャットアイな遊び心のあるサングラスでスパイスを加えている。

別作品のレッドカーペット出席時に選んだのは、ストレートラインのストラップレスドレス。こちらもディオールで、抜けを作ったデコルテエリアをドレスの色とマッチさせたショパールで飾った。どのルックも上品さがあり、個性をいかす工夫が随所にされている。自分になにが似合うかを熟知していると、こんなにも洗練されて見えるとは!

●ブリー・ラーソン
「ゴールドガラ」にも出席したラーソンは、審査員としてカンヌ国際映画祭に参加。フランス南部のリゾートらしい、天気がよく早い時間のレッドカーペットでは、トップスがクロップされたシャネルのツーピースセットを着用。へそ出しルックでもあるが、スカートはレースになっており、可憐な肌見せに成功した。

個性的でよかったのが、『Jeanne du Barry』プレミアレッドカーペットでのシアーゴールドのピース。トップスのウエスト部分にゴールドとシルバーのビーズが仕立てられている。このルックもシャネルで、2023-24年クルーズコレクション、つまり、つい先日発表されたばかりの最新のものだ。

クロージングセレモニーでも、2023年春夏 オートクチュール コレクションのシャネルをチョイス。フラワーが装飾されたレースのドレスは、透明感と洗練さが演出されていて好印象。そのポジションのためか、華やかながらも落ち着いたファッションで、すべてのルックがシックだと高評価を得ていた。

●ナオミ・キャンベル
「メットガラ」でも圧巻のルックを披露したナオミ・キャンベル。マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオやロバート・デニーロが出演する『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(10月6日公開)のプレミアレッドカーペットでのシアーで色鮮やかなヴァレンティノが美しい。ボディのレッド、フェザーケープのピンクのゴージャスさといったら!特にヨーロッパのメディアから大人気だった様子。

最も人気だったのは、オープニングのタイミングだったこともあり、『Jeanne du Barry』のプレミアでの、ショパールのジュエリーを合わせたシルバースパンコールのドレス。この1970年代スタイルなボールガウンはエディ・スリマンによるセリーヌのもの。BTSのVやBLACK PINKのリサらと一緒に、カンヌ中に開催されたセリーヌのパーティに出席した際のホワイトドレスもよかったけれど、『Firebrand 』のプレミアレッドカーペットでの、サイドのレッドがアクセントとなったシャネルのホワイトドレス(2022年春夏オートクチュールコレクション)もかなりステキでした!さすがのナオミ様。

●リリー=ローズ・デップ
過激な内容から公開前より物議をかもすHBOのドラマシリーズ「THE IDOL/ジ・アイドル」(6月5日配信)で、『Jeanne du Barry』出演のジョニー・デップと親子でカンヌ入り。カンヌ中のインタビューでは珍しく父親と作品のことに触れ、それも話題になった。フレンチらしいファッションに定評のあるリリーが、同作のイベントフォトコール用に選んだのは、シンプルでオーソドックスなリトルブラックドレス(LBD)。同作のアフターパーティではレッドのスパンコールが混ざったLBDで登場。

同作のプレミアレッドカーペットには、1994年秋冬のレディ・トゥ・ウェアのシャネルのメタリックLBDをチョイス。いずれもミニ丈で、輝きはメイクやスパンコールなどのアクセントで入れる仕様。おそらく、シェイプやフィットを含む好きなデザインがはっきりしているのだろう。ファッションに関しては、ママ譲りのパリジェンヌスタイルを貫くようだ。

●イリーナ・シェイク
カンヌ中、どこへ行くルックにも注目が集まっていたシェイク。セクシーすぎて問題(?)になっているとの報道もあるが、前衛的で先鋭的なセンスをもつファッショニスタからは支持されている。その理由は、昨今のトレンドであるボディ・ポジティブをあますことなく体現、謳歌しているから!まず話題になったのは、ホテル・マルティネスから外出する時の、GGロゴがあしらわれたメッシュブラとアンダーウェアがセットになったグッチのルック。シアーなスリップで覆っているものの、“ほぼ下着”と大きく取り上げられた。安心してください、ほぼではなく、下着です!!スケスケで見えているのではなく、ランジェリーを見せているのです!これが話題作りでないことが、ほかのルックを見ればわかる。

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のプレミアレッドカーペットで着用したアルマーニ・プリヴェのドレスからのぞくバストライン。『Firebrand』のレッドカーペットで着用したナイジェリア人デザイナーによるMOWALOLAのレザードレスからのぞくウエストライン。これらのルックの主役は、彼女のボディそのもの!主役を魅せるために、最小限におさえられたヘアメイクを含むアクセサリーのバランス感がその証拠。彼女がインスタでコメントしたように、ファッションとは表現したいことを自分のしたいようにすること(Just do it)だから!

●ケイト・ブランシェット
日本公開中の『TAR/ター』での怪演ならぬ好演が注目の、ケイト・ブランシェット女史。長らくルイ・ヴィトンとコラボレーションしているブランシェットだけに、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のプレミアでも、『The Zone of Interest』のプレミアレッドカーペットでも、同ブランドのボールガウンをチョイス。いずれも女性らしいラインをブラックのドレープなどで効果的に演出するフェミニンなルックを披露した。

ただ、彼女ぐらいになると、ファッションにおいてもマインドにおいても、トレンドは追うものではなく、作ってけん引するもの。映画界の男女不均衡を是正する活動を行うなか、カンヌ中に「バラエティ」誌とゴールデン・グローブ賞が協賛したイベントへ、可愛らしいピンクのロングジャケットとアイウェアというコーディネートで登壇。イランや映画界で活躍する女性への連帯を示すために、ヒールを脱ぎ捨て裸足で登場したことで話題をさらい、世界中の人をインスパイアした。

●ジェンマ・チャン
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』のプレミアにて、レッドカーペットのアツさに負けない情熱的なレッドのドレスで現れたチャン。ホルターネックやウエスト、バックレスのシルエットを生みだすカットアウトが美しい、繊細なデザインのシルクドレスは、彼女のインスタによると、ニコラ・ジェスキエールによるルイ・ヴィトンのもの。

別日、是枝監督作品である『怪物』のプレミアにも、安藤サクラらと共に参加。こちらもルイ・ヴィトンで、スパンコールがあしらわれたホワイトのボールガウンのルックにはダイヤモンドのジュエリーを合わせ、前髪をおろすヘアスタイルをコーディネートすることで、可憐さを表現した。

●エル・ファニング
パーフェクトなルックで「メットガラ」に出席したファニングは、カンヌ中もすばらしいスタイリングを披露。まず話題をさらったのは、『Jeanne du Barry』のプレミアレッドカーペットでの、アレクサンダー・マックイーンのカスタムボールガウン。彼女いわく「芸術作品」というドレスには手作業による刺繍が施されている。カルティエのジュエリーや夜会巻きのヘアなど合わせたアクセサリーも含め、カンヌによるカンヌのための、と言える王道スタイリング。

次は、ホテル・マルティネスのバルコニーでパパラッチされたブルーのドレス姿。セレブスタイリストのサマンサのインスタによると、ケイトというセレブの間でたちまち話題になったニューヨーク発ブランドのものだそう。オルセン姉妹のブランド、ザ・ロウのカジュアルなルックで外出する様子が目撃されるなど、これらの気鋭ブランドを選ぶところは25歳らしさを感じる。

極めつけは、自身のインスタで、「これぞパーティドレスでしょ!!!」とアップしたパコ・ラバンヌのシルバードレス。チョーカーのアクセサリーから続くブローチのようなバストのデザインが特徴的なゴージャスなルックをお披露目した。メイクは彼女のナチュラルさを活かすあたりも、バランス感覚がよく、好感度が高い。新世代のファッショニスタの仲間入り確実かと!


●エルザ・ホスク
スウェーデン出身のモデル、ホスクが、ジュリエット・ビノシュ主演作『Le Passion de Dodin Bouffant』のプレミアレッドカーペットに登場すると、次の日には世界中のメディアが彼女のドレスを絶賛。フロスティング(霜がおりたような色合い)なベイビーブルーのドレスがまるで彼女から飛び立つよう!このドレスはおもしろい!彼女のインスタによると、これはヴィクターアンドロルフのクチュールとのこと。ランウェイで発表された時に一目ぼれしたのだとか。このドレスを選ぶところだけでなく、ドレスにマッチさせたアイメイクもよいし、リップには濃いリップラインを引くことで、いま流行りのY2Kを取り入れるなど、彼女の審美眼がすごい!


●ヘレン・ミレン
なにかと話題なジョニー・デップがルイ15世を演じる『Jeanne du Barry』のプレミアレッドカーペットに登場したヘレン・ミレンは、ジョニデを上回るバズを提供した。ブルーのドレスに合わせたパープルとブルーのヘアカラーというアバンギャルドなルックで現れたからだ。手元には「#私にはその価値があるから」と書かれた扇子が。インタビューで「深い意味はなくて、(カンヌのスポンサーである)ロレアルパリのアンバサダーだからよ」とコメント。御年77歳のミレン、さすがの演出と“女王”さながらの圧倒的な貫録!

文/八木橋 恵