子猫の時に拾われ、10年経っても20年経っても死なず、気が付けば30年以上生き、人の言葉も喋れるようになっていた化け猫あんずを主人公にした、いましろたかしによる『化け猫あんずちゃん』が、今年7月に劇場アニメーションとして公開決定。このたび、森山未來があんずちゃんの声と動きを担当することが決定した。

『リンダリンダリンダ』(05)や、大ヒット公開中の『カラオケ行こ!』(公開中)などで映画ファンから絶大な支持を集める山下敦弘と、『花とアリス殺人事件』(15)にロトスコープディレクターとして参加した気鋭のアニメーション監督久野遥子がW監督を務める『化け猫あんずちゃん』。本作では、実写で撮影した映像から動きや表情を抽出してアニメーションにするロトスコープの手法を採用。まず山下監督を中心に実写として撮影し、その映像をもとに久野監督が中心となり生き生きとしたアニメーションを作り上げている。実写で役者が演じた登場人物たちはその魅力を活かしながら、久野監督デザインによるキュートなキャラクターに変貌をとげ、ロトスコープならではの生き生きとした動き、表情で動き回るアニメーションになるという特別な仕上がりに。実写とアニメ、それぞれ第一線で活躍する二人がタッグを組んだ、この作品だけのケミストリーが気になる一作となっている。

制作は「クレヨンしんちゃん」や「ドラえもん」で知られ、『窓際のトットちゃん』(23)など繊細な芝居を得意とするシンエイ動画と、2023年にカンヌ国際映画祭で短編パルムドールを受賞した『24(原題)』など世界が注目するスタジオであるフランスのMIYUプロダクション。2スタジオが、初めて共同で制作する初の長編アニメーションとなった。

今回、あんずちゃんの声と動きを『ボクたちはみんな大人になれなかった』(21)、『ほかげ』(23)ほか、数々の話題作に出演、多岐に渡るジャンルで、国内外で唯一無二の活躍を続ける森山が担当することが明らかに。森山があんずちゃんを実写映画と同じように演じ、撮影。その映像から動きや表情のエッセンスを抽出しアニメーションのあんずちゃんに命が吹きこまれ、なんとも人間味のある動きや表情が表現されているという。また声も撮影時の音声がそのまま本編に使用されており、ほかのアニメーション作品とは一線を画す自然でリアルなやりとりを生んでいる。

あんずちゃんの声と動きを担当した森山は「森山の造形はほぼ跡形もなくなるんだな。でもフランス×日本合作の実験的で楽しそうな座組だし、あんずちゃんよろしく、ゆるゆると夏休み気分で行ってみるか!」と忙しいスケジュールをぬって撮影に参加した際の気持ちを振り返る。また、鬱屈した思いを抱え、あんずちゃんと出会い変わっていく少女“かりん”を山下監督の『1秒先の彼』(23)でもフレッシュな魅力を発揮した五藤希愛が担当する。


さらに、新ビジュアルと超特報映像が解禁に。MIYUプロダクションが中心となり作り上げた絵画のような美しさの背景の中に、ロトスコープにより生きているかのように描かれるあんずとかりんの瑞々しいアニメーションが垣間見える一味違う特別な仕上がりを期待させる。

世界の才能が集結し、満を持して送りだす『化け猫あんずちゃん』。新たなアニメーション表現を、ぜひ劇場で体感してほしい。

■<キャスト&スタッフコメント>

●森山未來(あんずちゃん役)

「コロナ禍真っ只中の夏の日。山下敦弘監督、いまおかしんじ脚本で映画を撮るという。10年ぶりの懐かしくも嬉しい座組である。そして久野遥子監督によって、ロトスコープ・アニメーションになると聞く。実写からアニメに?それもおもしろそうだ。原作はいましろたかしさんの『化け猫あんずちゃん』。森山はあんずちゃん。…森山の造形はほぼ跡形もなくなるんだな。でもフランス×日本合作の実験的で楽しそうな座組だし、あんずちゃんよろしく、ゆるゆると夏休み気分で行ってみるか!それが東宝の配給による夏休み映画になるらしい。青天霹靂、棚からぼたもち…いやいろいろ失礼かもしれないけれど、正直びっくりである。まぁ、そんな個人的な成り行きはともかく、楽しんでもらえたら幸いです」

●五藤希愛(かりん役)

「かりん役で出演が決まったとき、嬉しくて、思わず飛び跳ねて喜びました。同時に私にできるだろうかという不安もたくさんありました。なぜなら、台本を初めて読んだとき、『えっ!私以外ほぼ妖怪?』と驚きましたから(笑)。今回の作品で、森山さんと同じシーンを経験させて頂けたことが、私にとってなによりも大変貴重で、幸せな時間でした。劇場公開がとっても待ち遠しいです」

●久野遥子(監督)

「学生のころ偶然本屋でいましろたかし先生の漫画を見つけて、なんて実直に人間を描いているんだと衝撃が走りました。なので『化け猫あんずちゃん』の監督オファーは本当に嬉しかったです。ロトスコープは実写映像を元に絵を描く手法な為、リアルな身体表現のために使用することが多いのですが、私はお芝居の魅力を表現することにも向いていると思っていました。山下監督が映し出す温度のあるお芝居を冷ますことなくアニメーションで再構築する体験は贅沢で痺れました。そして、Miyu Productionsによって描かれた美術と色彩は、見慣れた日本の風景をこんなに新鮮な景色にするのだと驚きました!そんな風景を生き生きと動き回るあんずとかりんをぜひ劇場で体感してください!」

●山下敦弘(監督)

「漫画『化け猫あんずちゃん』はいつか映像化したいと思ってはいましたが、まさか長編アニメ映画として作ることになるとは思ってもいませんでした。共同監督の久野遥子さんは時に原作から逸れて行ってしまう自分を何度も引き戻してくれて、原作への愛情の深さに自分自身、とても影響を受けました。主人公“あんず”にはずば抜けた身体能力を持った森山未來しかいないと、自分の中で決めていて、“猫”という難しい演技を森山くんは期待以上に表現してくれました。企画の立ち上げから7年以上の月日が経とうとしていますが、唯一無二の映画が出来上がりました!是非、スクリーンで観てください」

文/サンクレイオ翼