5月7日(火)に開催される、“韓国のゴールデングローブ賞”こと百想芸術大賞。60回目のアニバーサリーイヤーとなる今年の映画部門には、観客動員1000万人超えの2作品や日本公開が待望されている選りすぐりの傑作が揃った。ここで、映画部門の作品と俳優のノミネートをチェックしたい。

■コリアン・オカルトホラーの新たな金字塔VS緊迫のポリティカル・サスペンス!
今回の百想芸術大賞映画部門には コロナ禍以降、客足が伸び悩んだ劇場街に復調の兆しを感じさせる注目の2作品がノミネートされている。

『ソウルの春』(8月23日公開)は「粛軍クーデター」「12.12軍事反乱」などとも言われる韓国民主主義の存亡を揺るがした実際の事件を基に、『アシュラ』(16)のキム・ソンス監督が映画化。一部フィクションを交えつつ事実に肉迫するこの重厚なポリティカル・サスペンスは、昨年12月に公開され1,300万人以上の観客動員を記録した。本作は作品賞のほか、キム・ソンス監督が監督賞、『アシュラ』からの監督の盟友、ファン・ジョンミンとチョン・ウソンが揃って主演男優賞、イ・モゲ撮影監督が撮影監督賞、ホン・インピョ作家ら脚本チームが脚本賞、ファン・ヒョグンが特殊メイク部門でもノミネートされている。

対抗馬は、現在も韓国でヒットを続けるオカルト・ホラー『破墓 パミョ(原題)』。風水師、葬儀屋、シャーマンがある金持ちからの依頼で古い墓を掘り起こしたことから起きる恐怖を描き、こちらも1000万人超えの大ヒットとなった。作品賞と共に、チャン・ジェヒョン監督が監督賞と脚本賞に、キム・ゴウンが主演女優賞、チェ・ミンシクが主演男優賞、ユ・ヘジンが助演男優賞、イ・ドヒョンが新人男優賞にノミネートされている。

■ベテランから若手まで!人気と実力を兼ね備えた名優が揃った俳優部門
今年も完成度の高い作品が揃った映画部門だけに、さらに有力候補がひしめいている。『モガディシュ 脱出までの14日間』(21)でその年の韓国の映画賞を軒並みさらったリュ・スンボム監督の最新作『密輸 1970』(7月14日公開)も、監督賞と共にヨム・ジョンアが主演女優賞、助演女優賞と男優賞にコ・ミンシ、キム・ジョンスとパク・ジョンミンがノミネートされた。

李舜臣将軍3部作『ハンサン ―龍の出現―』(22)のキム・ハンミン監督は、フィナーレを飾る3作目『鷺梁 : 死の海(原題)』で作品賞にノミネート。チェ・ミンシク、パク・ヘイルからバトンを受け李舜臣将軍を演じたキム・ユンソクも主演男優賞に挙がった。

出産を控えた若い夫婦が直面する怪現象を描く『スリープ』(6月28日公開)からは、新人監督賞候補にユ・ジェソン監督、主演女優賞にチョン・ユミがノミネート。

先ごろ日本公開が決定した『このろくでもない世界で』(7月26日公開)からは、新人監督賞にキム・チャンフン監督、助演男優賞のソン・ジュンギと共に、新人女優賞と男優賞にキム・ヒョンソとホン・サビンが挙がる。

ディザスタームービーでありながらヒューマンドラマとしても完成度の高かった。『コンクリート・ユートピア』(2023)も、監督賞のオム・テファ監督をはじめ、イ・ビョンホンが主演男優賞、キム・ソニョンが助演女優賞に、それぞれノミネートされている。

『貴公子』(23)でアクション俳優に開眼したキム・ソンホも、新人男優賞の有力候補とされている。

■次なるヒットは?日本未公開作品&新人監督候補も見逃せない!
新たな才能を発見したい映画ファンなら、日本未公開作品と新人監督のノミネートもチェックしたい。“信じて見る俳優”ことラ・ミランが主演女優賞争いに食い込む『市民ドクヒ(原題)』は、パク・ヨンジュ監督も新人監督賞にノミネートされている。「D.P.」シリーズで印象を残した俳優チョ・ヒョンチョルは、今回新人監督賞に名が挙がっている。セウォル号事故を題材に、『あしたの少女』(22)のキム・シウンを主演に迎えた『君と私(原題)』での手腕が評価されてのノミネートだ。

『密偵』(15)のキム・ジウン監督の最新作にして異色の一本『蜘蛛の巣(原題)』も、作品賞と並びクセの強いキャラを演じきったクリスタルが新人女優賞にノミネートされた。

どの映画が重賞を獲得してもおかしくない熾烈な賞レース。トロフィーの行方を固唾を呑んで見守りたい。

文/荒井 南