乃木坂46の1期生、高山一実による長編小説をアニメーション映画化した『トラペジウム』が現在公開中だ。主人公は、城州東高校に通う15歳の東ゆう(声:結川あさき)。アイドルに憧れてきたゆうは、「SNSはやらない」「彼氏は作らない」「学校では目立たない」「東西南北の美少女を仲間にする」の4箇条を自らに課し、アイドルデビューを目指す。夢を追いかけるキラキラした青春模様に加え、挫折や困難など誰もが経験する“痛み“も描かれる本作。公開から約1週間が経ち、鑑賞した人たちからは様々な感想コメントがSNS等に投げかけられている。本作が大勢を惹きつける理由とは?「映画『トラペジウム』感想投稿キャンペーン」に寄せられたコメントをピックアップしながら、作品の魅力をひも解いていきたい。

■「青春真っ只中を突き進む」東西南北の4人に感動!

「東西南北の美少女を仲間にする」。この命題通り、ゆうはロボット研究会に所属する“西”の大河くるみ(声:羊宮妃那)、お嬢様学校に通う“南”の華鳥蘭子(声:上田麗奈)、ボランティア活動に熱心な“北”の亀井美嘉(声:相川遥花)を仲間にする。この4人が、校外活動をしてその様子をSNSにアップしたり、観光名所でアルバイトをしたり、テレビ番組に出演したりしていく。

そして、ゆうたちの活動は注目され、「東西南北(仮)」のアイドルデビュープロジェクトが動き出す。通う学校も趣味嗜好も違う4人が仲良くなっていき、デビューに向けて歌やダンスのレッスンに取り組む姿がとにかく瑞々しい。

「東西南北の4人が最後にみんなで歌うところが最高すぎました。何回も観に行きたいと思いました」
「青春真っ只中の彼女たちの心情の描き方が鮮明で、劇場で物語の世界観にどっぷり惹き込まれました!」


さらに、「終盤、くるみ、蘭子、美嘉の3人がゆうに本当の気持ちを伝えるシーンで、たとえバラバラになっても4人で過ごした青春は本物だったんだと思い、涙が止まらなかった」という声も。臨場感抜群の劇場で鑑賞することで、エモーショナルなクライマックスへと青春を突き進むゆうたちの心の揺れ動きをダイレクトに体感できる。

■「きれいなだけじゃない…」青春に伴う痛みもしっかりと映しだす

一方、劇中で描かれるのは楽しいばかりの青春ではない。アイドル活動のなかで軋轢が生じたり、物事が思うように進まない苦しさ、ツラさもしっかりと映しだされている。そういった描写に、心を抉られるような感覚になったという人も。

「きれいなだけじゃない、心の底まで届く本物の叫びを感じました」
「夢を追い続けることの怖さと美しさを感じることができる。人それぞれ感じ方が違う作品になっていると思います」

夢を追いかけている人、夢を叶えた人、夢に破れた人…。青春時代の過ごし方は様々で、人によって作品の受け止め方は変わってくる。ツラく苦しい時代も振り返ってみれば愛おしくもあり、そういった多面的な見方ができるのも本作の魅力の一つだろう。

■「思い出を共有できる友人」になっていく東西南北の友情

様々な計画を実行していくゆうの行動があって、出会うはずのなかった4人はつながる。彼女たちが育む友情、アイドルグループという特殊な関係性にも言及されている。

「東西南北の楽曲が収録されたCDをそれぞれが手にして集まったシーンがあるのですが、グループとして得られたものの象徴があることで、4人の関係、時間の尊さがさらに感じられた」
「励まし合ったり、不安に押し潰されそうになったりするなか、東西南北の4人が集まり円陣を組むシーン。1歩踏み出して輝く4人に感動!」


ゆうにとってアイドルになることは絶対的な目標であり、くるみ、蘭子、美嘉の3人はその達成のために不可欠な存在だと捉えている。それだけに、アイドル活動に対するモチベーションの違いから、ぶつかったり、関係性が崩れてしまったことも。そういった壁を乗り越えながら、本物の友情を手にする姿は大きな感動を呼ぶはずで、「夢を叶えるって決して綺麗事だけじゃない。でもその思い出を共有できる友人がいる。それはかけがえのない、すてきなコトだ」といった感想も数多く見られた。

■「アイドルの第一線を張ってきた」高山一実だから描けたリアルな視点

原作小説には、乃木坂46のグループとしての発展を支えてきた高山自身の経験や葛藤が注ぎ込まれており、映画の制作にも携わっている。そういった要因からも、ゆうのアイドルに対する考え方、視点にはどこかリアリティを感じることができる。

「『アイドルはこうでなくては』という固定概念がゆえの挫折。リアルです」
「光も影も自らのなかに共存させるアイドルの姿に、アイドルの第一線を張ってきた高山さんが描いたからこその深みを感じることができました」
「かずみんにしか書けないアイドルの表も裏も見事に描写されていて、アイドル、アーティストが好きな人にはぜひ観てほしい作品です!」


アニメーションになったことで、文章で表現されていたゆうたちの姿形、表情、動きなどが可視化された映画『トラペジウム』。”ゆうたちはこんなふうに歌って、踊っていたんだ”という原作小説からさらに進んだ新たな感動を与えてくれる。小説を読んでいた人からは以下のようなコメントが。

「とっても心が温かく、キレイになる映画でした!事前に小説版を読んでいたので、映画では違った見方もできて楽しみながら鑑賞できました!」
「原作ではあまり描かれていない、アイドルとして歌い踊る東西南北を新曲と共に観ることができ、原作を読んだ身として最高でした!」
「映画ならではのアイドル表現やアイドルのテーマなどを膨らませて、より魅力的な作品に仕上がっていました」
「歌唱シーンの4人の歌声のかわいさに圧倒された。映画化によって、原作のよさに躍動感が加わって最高の作品に仕上がっていた」


なにかに一生懸命に取り組んでいる人は、周囲に感動や勇気を与えてくれる。本作でのゆうたちの踏ん張りを見ているうちに、知らず知らずのうちに応援していたという人も。「推しがいる人には絶対観てほしい感動作品」の言葉通り、アイドルやアーティストを応援=“推し”てきた人にもオススメしたい作品になっている。

青春ならではのきらめきと痛み、友情、そしてリアルなアイドル像。ゆうたち4人が駆け抜ける輝きと苦難の連続を通して、『トラペジウム』は観る人に様々な感情を浮かび上がらせる。原作を読むことで映画をより楽しむことができるので、一度観たという人も小説を読み直して再び劇場へ向かってみてはいかがだろうか?

構成・文/平尾嘉浩