俳優歴20年以上というキャリアを持ち、「ムービング」での再ブレイクや新作『密輸 1970
』(7月23日公開)が控えるなど今も韓国エンタメをリードするチョ・インソン。そんな彼のジャパンファンミーティング「2024 ZO IN SUNG JAPAN FANMEETINGJoyful Day with Zo In Sung」が、5月10日(金)開催された。

■日本で遭遇できるかも!?日常の一枚からチョ・インソンの素顔に迫る
「皆さん今晩は。今日はよろしくお願いいたします。いらっしゃいませ!」という日本語の挨拶でスタート。あまりの麗しさにどよめきが止まらない会場内。実に6年ぶり、待ちに待ったジャパンファンミーティングだ。

とは言え、本人はプライベートでは大阪や東京など、日本へ頻繁に来ているという。仲良しのキム・ウビンやイ・グァンスらと新大久保にも行っているという驚きの情報も明かされると「あまり人が行かないようなお店に行っています。調べてみてください」とニヤリ。 日本での第一次韓流ブームから今も変わらず人気を誇るチョ・インソン。ファンを楽しませるポイントをよく知っている。「もしかして、今日キム・ウビンやイ・グァンスが来ると思いました?では出口はあちらです!」と言ってみたり、今日初めてチョ・インソンのファンミーティングに来たというファンへ「なぜ今まで来なかったんですか?20年もやってるのに!」と煽るなど爆笑を誘う。気さくな性格から飛び出す軽妙なトークに、開始5分でもうチョ・インソンの虜だ。「新しくいらした方へ、拍手をお送りします。“ここ”は入ったら出るのが大変ですよ」というのもうなずける。

「今日は皆さんといろいろお話をしたいと思っていますので、気になることがあったら何でも聞いてください。本当に細かくお教えしますから」と前置いた今回のファンミーティングは、チョ・インソンとデートを楽しむというコンセプト。率直なコミュニケーションの時間にしたいという本人の希望を反映してか、ステージもファンとの距離が近く、アットホームで心が和むセッティングだ。

この日、第一部は茶色のシャツにベージュのジャケットのセットアップを合わせた、親しみやすい装い。ドゥシク(「ムービング」)やクォン(『密輸 1970』)そのもののように今日もスタイル抜群で格好いいが、本人としては少し不満がある様子。聞けば「昨日のほうが格好いいと思いますよ…日本に到着後、事務所の方々が歓迎してくださって、たくさん食べてしまった」のだそうだ。また、今日は様々なイベントを準備してきたと言うが、昨今のファンミーティングに恒例の歌唱コーナーはない。 「私もかつて歌ったことがありましたが…ごめんなさい(会場笑)、あとで反省しました。それでも私のことをずっと好きでいてくれたんですね」と自虐も口にする。率直で飾らない素顔や言葉が聞けるのが、ファンミーティングの醍醐味だ。

■『モガディシュ 脱出までの14日間』、『ムービング』…今明かされる、屈指のアクション俳優ならではの苦労と役作り秘話
まずはSNSの一枚からチョ・インソンの日常をのぞき見する「ギャラリーデート」のコーナー。ヒゲをたくわえたワイルドな一枚には「人間ですからヒゲも生えるんですよ…だからカミソリってあるんですからね」ととぼけた一言を発するなど、今日は実に自然体だ。『密輸 1970』で共演したコ・ミンシが撮った笑顔や、「ムービング」の共演者リュ・スンリョン、ハン・ヒョジュとの笑顔のスリーショットといった撮影現場の良好ムードが感じられる一枚も紹介された。

続く「シアターデート」のコーナーは、これまでチョ・インソンが出演した数々の傑作の中からファンが名場面をチョイスし、ビハインドや思い出を語ってもらう。

最初は、ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの脱出を描いたリュ・スンワン監督『モガディシュ 脱出までの14日間』でのシーン。チョ・インソン扮する韓国の参事官テジンが、ク・ギョファン演じる北の参事官ジュンギともみ合いになる。テコンドー有段者のチョ・インソンがすさまじいキックを繰り出す強烈な場面だ。 「私もリュ・スンワン監督も、そして実は「ムービング」カン・プル作家もご近所仲間なんです」と、“縁”で出演が決まっていったことを冗談交じりで話したのち、「アクションシーンが難しいのは、共演者と位置を合わせたりしながら、自分も相手の方も怪我をしないようにしないとならないことです。大きな事故に繋がってしまうので心配が多いです。平和主義者なんですよ(笑)」とアクション俳優がゆえの悩みも口にした。

そして、「ムービング」の伝説的シーンの数々。ハン・ヒョジュ扮するミヒョンとのキスで、気持ちが昂ったドゥシクの身体が宙に浮いてしまう場面と、残業中のミヒョンに好物のトンカツを配達するロマンティックな場面。そして、国家要員として北に潜入し、銃撃戦を繰り広げる緊迫のシーンだ。 キスシーンに照れ笑いを浮かべ、銃撃シーンには「いやー、この方いい俳優ですね!」とジョークを飛ばしつつ、チョ・インソンは「本当にいい雰囲気の撮影現場で、思い返してもあの時間に戻りたいです」と感慨深げ。その一方で、空中を飛ぶという特殊能力を持つドゥシク役ならではの苦労もあったようだ。

「高いところなのでとにかく寒いんですよ。そして、宙に浮くためには自分の身体にワイヤーなどの装置をつけるんですが…とにかく痛い!そうした器具をあらゆる方々が持ち上げてくださったり引っ張ったりすることで動けるので、自分では自由も利かないですしね。それから、ワイヤーに吊られた状態で着地するのはコツがいります。(立ち上がってレクチャーしつつ)地面に足が着いたときにパッと体を支えて直立してしまうと、吊っているワイヤーの力に引っ張られて危ないんです。着地した瞬間は、力を入れず少し足を前に出す。こうするといいんです。良かったら、撮影現場を見に来てください(笑)」


■「見習い社長の料理日誌」撮影ビハインド&可愛い後輩も登場!
ファンミーティングも第二部に入り、「レストランデート」「チョ・インソンの料理教室」と人気バラエティ番組「見習い社長の営業日誌」にちなんだコーナーが続く。同番組は、ある日突然のどかな村にある小さな商店を任されたチャ・テヒョンとチョ・インソンが、未経験の仕事にドタバタしつつ村の人々や友人の助けを得ていくヒーリングバラエティーで、真剣な眼差しで料理をするチョ・インソンにときめくファンが続出した。だが、本人は「料理をする姿にキュンキュンするんですか?韓国でも男性が料理するのは当たり前なのに…」と怪訝そう。「(会場の男性ファンに声をかけ)料理しますか?しますよね!パスタは基本ですよね!」と、“理解できない!”という気持ちを熱心に訴える姿に会場はどっと沸く。

とはいえ、やはり「見習い社長の営業日誌」で見せるチョ・インソンの料理の腕前はプロ級だ。特に、彼が創意工夫を凝らしたラーメンに舌鼓を打つ村人や俳優陣の姿が目を引く。本人は「ラーメンは“料理”ではなく、“調理”なんですよね」と前置きしながらも、ラーメン好きな韓国国民ならではのこだわりを情熱的に語ってくれた。

「ラーメン作りで難しいところって、タイミングなんです。麺を入れてゆでて引き上げるのも、タイミングなんです。そしてお客さんに出す。箸を麺に差し入れる。口に運ぶ。その間にもすでに伸びてしまっているんです。ここぞというタイミング!それが合わせられないんです!」

あまりの熱弁に、会場は爆笑の渦。そしてさらなるサプライズが。番組でもお馴染み、そしてチョ・インソンの盟友イム・ジュファンが登場したのだ。黄色い歓声が上がる会場をよそに、2人の話題はやはり“ラーメンのタイミング”。共通の話題に花を咲かせる2人に、見つめるファンも幸せそうだ。

そしてイム・ジュファンは、「以前、僕が日本でファンミーティングを開催したとき、韓国からわざわざ僕と飲むためだけに来てくれたんです。ちょっと難しいけれど(笑)、頼れる先輩ですね」と、大好きな先輩への惜しみない愛を口にした。照れ臭そうなチョ・インソンの表情も目にし、ファンには至福の時間となった。

■「この幸せは当たり前ではない…」離れていた時間を埋める感動的なメッセージ
客席のファンと“チャムチャムチャム(あっち向いてホイ)”をするコーナーでのことだった。ステージから降りて満席の会場を練り歩きながら、声援に応えたり、握手にも気軽に応じるチョ・インソン。すると突然、懐かしげな笑顔で手を振り始めた。

「昔からのファンの方なんですよ。皆さん!お久しぶりですね。お元気そうでよかったです」彼はずっと応援し続けてくれているファンの顔を覚えていた。彼が活躍し続けられるのは、自分を応援してくれるたくさんのファンに対し、演技はもちろんのこと、その人柄が信頼できるからなのだろう。

そして感動的なラストコメントもまた、真摯な人柄を反映するものだった。
「これまで私たちは、友達とも会えず、コミュニケーションも取れず大変でしたよね。でも、最悪の事態を経験したからこそ、幸せは当たり前ではないことを改めて理解することができたんじゃないかなと思うんです。皆さん本当にお変わりなくて、またこうしてお会いできてとても良かったです。韓国にハンファイーグルスという野球チームがありまして、あまり成績は良くないチームなんですが、ずっと応援し続けてる方々がいます。それは簡単なことではないですよね。同じように20年間、一人の俳優を愛し続けるって並大抵ではないと思います。僕も一つ一つ年を重ねますが、健康でいられたらまたお会いできるはずです」

子役から若手、中堅まで花も実も兼ね備えた俳優が続々と登場する韓国芸能界。その中でもチョ・インソンは常に輝きを失わない。今回のファンミーティングで、その理由を知ることができたのだった。

取材・文/荒井 南