「第1回anan猫マンガ大賞」の大賞受賞作を実写映画化した『三日月とネコ』の初日舞台挨拶が、5月24日にTOHOシネマズ池袋にて行われ、主演の安達祐実、倉科カナ、渡邊圭祐、山中崇、石川瑠華、小林聡美、上村奈帆監督が登壇した。

熊本地震をきっかけに知り合った、恋人でも家族でもない境遇もバラバラだけど“ネコ好き”が共通している灯、鹿乃子、仁の男女3人と愛らしいネコの共同生活を描いた本作。 遂に初日を迎えたこの日、主演で書店員の灯役を演じた安達は「原作も大好きで、すごくその素敵な雰囲気を大切にしたいなと、それを損なわないように意識しながら撮影に臨んでいました。できあがった作品はとっても温かくて、素敵な言葉が散りばめられていて優しさをじわじわと浴びせてくれる作品になったと思っています」と笑顔であいさつ。

続いて、精神科医の鹿乃子を演じた倉科は「見えない社会の基準みたいなものに縛られることって多いと思うんですけど、 そうなっちゃうとそのレールを歩いていない自分って…とネガティブになってしまう中で、 この映画はそういった心の縛りを外してくれるようなとても温かい映画になっています」と語りかけ、またバツイチ編集者の長浜役を演じた山中は「昨日は満月だったんですよね」と話し始め、「5月の満月はフラワームーンと言ってアメリカでは5月はいっぱい花が咲くのでフラワームーンというそうです。さっき調べました(笑)」と本作のタイトルにかけてお茶目にあいさつ。

また、仁が一目惚れする牛丸つぐみ役を演じた石川は「私の演じている役がアセクシャルという、マジョリティーとマイノリティかで言ったらマイノリティ側の役なんですけど、皆さんの中にもそういう方がいてこの映画に出会って救われることがあったら嬉しいなと思っています」と吐露。さらに、灯と鹿乃子が推している小説家の網田すみ江役を演じた小林は、「今日はエレベーターに乗った途端にポップコーンの香りがすごくして、この映画が本当にちゃんとこういう劇場で上映されるんだなと思ったら、とても誇らしいような嬉しい気持ちになりました」と公開を祝い、そして本作が商業映画デビュー作となる上村監督は、「それぞれ個人個人を完全に知ることは不可能だと思うんですけど、思い合うことができて、きっとそこに優しい温かい空気がきっと生まれるんじゃないかなって原作を読ませてもらった時からも思っていて、そういうことを大事にしながら現場でも皆さんと一緒に作っていけたことがとてもいい時間でした。こうして完成を迎えられてとても嬉しく思っています」と初日を迎えた思いを明かした。

自分たちが本当に求める生き方を見つけていく迷えるオトナ3人を優しく暖かな視線で描く本作だが、40代の等身大の女性である灯を演じた安達は「 灯ちゃんて、ちゃんと自分の人生を楽しんでもいる人だと思うんですけど、やっぱり社会との折り合いとかそういうところで悩んだり、40代だから普通は結婚もしなきゃとか、そういう固定概念みたいなものとは違う生き方をしている自分に、これでいいのかなと思いながら日々を過ごしてるんです。でも鹿乃子さんとか仁くんと出会うことで、みんなそれぞれが違うしいろんな悩みを持っているけど、それを受け入れつつ、自分も受け入れてもらっている、そういう安心感とかもっと自分を好きになれるような心の変化というのを感じながら撮影していました」と役柄について真剣な眼差しで語り、「生きていると、これはやっちゃいけないかなとか、これは人と違うから何か言われちゃうんじゃないかなとか、そういうことを気にしながらみんな生きていると思うんですけど、それでもいいじゃないかと。人をなるべく傷つけないように優しい心で生きていけるならば、ちょっと人と違ってもいいじゃないって思わせてくれるような作品だと思って、撮影しながら救われているような気持ちで演じていました」と本作への想いを明かした。

3人の温かい空気感にも癒される本作だが、 撮影前の読み合わせなどを通して自然に距離は近づいていったといい、倉科も「お互いが無理することなく尊重し合いながら。あと現場にかわいいニャンコがたくさん来てくださって、おいしいご飯もたくさん出てくるので、自然と距離も縮まっていきますし、本当に今回キャストの皆さんがすごく素敵で、自然と距離が私は縮まったような気がするんですけど…」と小林に目を向けると、すかさず小林が「 縮まりました!」と返し、「無理やり言わせたみたい(笑)」と倉科が笑顔でつっこみ、楽しそうな現場の雰囲気をのぞかせていた。

さらに山中も、「僕は基本BBQをしたり花火をしたりで、『第二の青春かも』くらいに浮かれていたので(笑)」と楽しかった撮影を振り返って笑顔。安達も「囲炉裏で焼いたり、おいしいものをいただきました。灯ちゃんが料理が得意な役なので」と話し、さらに倉科が安達のサンダルを間違って履いてしまったエピソードなどを楽しく話していると、そのふたりでの盛り上がりっぷりに自分たちでも気づき、倉科も「なんかシンクロしていますよね(笑)」と言い、安達も「ちょうどいいデコボコなんでしょうね。デコボコがマッチしちゃってる(笑)」と、今作で築いた仲の良さを覗かせていた。

いっぽうの年長者の小林は、今回は山中以外のキャストは初共演だったと明かし「こんな感じですよ。ほんとキラキラしていて!」と語ると、小林との共演について安達は「最初はすごく緊張しちゃったんですけど、聡美さんがすごく温かい雰囲気でいてくださっていたので、バーベキューにみんなで行く場面とか本当にご褒美のような時間だなって」と当時の楽しい撮影を述懐。キャスト陣について小林は「皆さん頼もしい俳優さんたち」と絶賛し、応じて山中は小林の本作でのセリフの説得力の凄さについて感服していると「それは脚本のおかげですね」と、小林自身は監督を絶賛。そんな上村監督は、本作について「素晴らしい俳優の皆さん、憧れていた方々と一緒に仕事ができて嬉しかったですし、今ここに立たせていただいているのも楽しい。人物をお互いの言葉や何か瞬間を共有しながら作っていくという作業を皆さんとやらせていただけて、ものすごくありがたく思っています」と語った。

そして最後のフォトセッションに入る際には、なんと看板を持って仁役の渡邊が登場!仕事で遅れて登壇した渡邊は「本当に5分前に着きました」と笑顔を見せ、「皆さんのもとにようやく届く日が来たなと嬉しく思っております。皆さんも猫派だと思いますので(笑)、ぜひ幸せな気持ちで帰っていただきたいです。撮影は本当に幸せな日々でそれがスクリーンに表れていると思うので、ぜひともそちらの方も注目していただけたらと思います 」と本作の魅力を語った。さらに、本日がお誕生日となった小林には花束のプレゼントが。満面の笑みを見せた小林は「初日の日に偶然誕生日が重なりまして、たくさんの皆さんに祝福を無理やりしていただいて(笑)、とても思い出に残る誕生日になりました」と語り、今年の抱負を聞かれると「 健康一番です!ゆっくり休んで、ちゃんと働いて楽しく過ごしていきたいと思います」とコメント。

最後には、安達が「 私も大好きな映画ですし、皆さんの心を少しでも軽くできるような作品になっていればいいなと思います。ぜひこの劇場を出る時にはちょっとほっこりした気持ちで温かい何かを心に持ちながら帰路につけることを願っております」と語り、倉科も「この日を迎えることができて私も幸せですし、観ていただいて少しでもほっこりと何か持ち帰ってくださったら嬉しいなと思います」と呼びかけ、渡邊も「自分らしくいることの背中を押してくれるような、好きなものを好きでいていいんだと観終わった後はそう思っていただけるような映画になっていると思います」と語り、上村監督も「この作品は、本当に自分の暮らしや生活を肯定してあげられるようなものになっていたらいいなと思っています。他のものと比べるわけではなく、自分の中にある好きだな、心地いいなっていう気持ちをすごく大事に思っていただけるような作品になっていたらいいなと思います」とメッセージをおくった。

取材・文/富塚沙羅