『インサイド・ヘッド2』で来日中!ピクサーの重要人物、ピート・ドクターのキャリアがすごすぎる

MOVIE WALKER PRESS7/18(木)12:30

共感せずにはいられない魅力的なキャラクターと、子どもだけでなく、大人のハートもしっかりとつかむ感動的なストーリー。現代のアニメーション映画の世界において、傑出した存在であり、これまでに数々の名作を生みだしてきたピクサー・アニメーション・スタジオの待望の最新作『インサイド・ヘッド2』が、8月1日(木)に日本公開となる。先駆けて世界各国で公開された今作は、アニメーション映画史上歴代No.1という驚異のオープニング成績を記録し、すでにこの夏の大きな話題作となっている。

前作『インサイド・ヘッド』(15)は、誰もが持っているけれど、誰も見たことがない、頭の中に無限に広がる“感情の世界”を舞台に、11歳の少女ライリーの“感情たち”が様々な困難を乗り越えていく、愛と感動の冒険ファンタジー。最新作では、“嵐の時代”と呼ばれる思春期に突入したライリーが、自分の居場所や自分らしさを求めて、紆余曲折しながら成長していく姿を描く。前作公開から9年ぶりに誕生した今作で製作総指揮を務めるのは、前作で原案、脚本、監督を手掛け、ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるピート・ドクターだ。日本公開に向けて、ケルシー・マン監督、プロデューサーのマーク・ニールセンら制作陣と共に、前作以来の来日も果たしている。

いまや巨匠と呼ぶにふさわしい映画作家であるドクターは、ピクサーの“泣ける感動作”には欠かせない人物。ここでは『インサイド・ヘッド2』の見どころを紹介すると共に、彼が歩んできたキャリアや代表作を改めて振り返ってみたい。

■ピート・ドクターが『インサイド・ヘッド』を生みだしたきっかけ

『インサイド・ヘッド』は、娘がいるドクターが、楽しい子ども時代を過ぎ、大人の世界への一歩を踏み出す時期を迎えた我が子の感情の変化に直面した時、親として感じた「彼女の頭の中では一体なにが起こっているのだろう?」というとまどいが出発点となった作品だ。画期的だったのは、ヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリの5つの感情ひとつひとつを擬人化し、彼らの視点からストーリーを語るという大胆なアイデア。見知らぬ街への引っ越しをきっかけに不安定になった女の子ライリーの危機を救うべく、彼女の頭の中の司令部から、ずっとライリーを見守ってきた感情たちが奮闘する。ちなみに、製作スタッフが声を担当するケースが多いのもピクサー作品の特徴で、ドクターはライリーのパパのイカリの声を演じている。

うれしい感情を放射するように輝くヨロコビや、涙の形状を彷彿とさせるカナシミなど、それぞれの感情を体現していることがわかるキャラクターのルックス。無数の思い出ボールが収められた記憶の保管場所に、イマジネーション・ランドなど、メタファーを駆使しつつ、頭の中の世界を鮮やかにビジュアル化した独創的なアニメーションに観客は夢中になった。

そして、“感情の世界”で展開するスリルに満ちた冒険や、ヨロコビとカナシミを主軸に、相反する感情たちの関係性と、現実世界のライリーの心情の変化を描くドラマは多くの人の心を揺さぶり、世界中で大ヒットを記録。第88回アカデミー賞長編アニメーション賞をはじめ、数多くの映画賞を受賞した。

■“大人の感情”たちが登場する『インサイド・ヘッド2』

最新作では小学生だったライリーが、高校入学を控えたティーンエイジャーへと成長。引っ越してきた環境にもすっかり慣れ、家族や親友たちと共に毎日を楽しく過ごしていたのだが、ある日突然、彼女の頭の中に、新たな“大人の感情”たち――最悪の将来を想像しては、必要以上に準備してしまうシンパイ、いつも周りの誰かをうらやんでいるイイナー、常にスマホ片手に退屈で無気力なポーズを見せるダリィ、いつもモジモジしている恥ずかしがり屋のハズカシの4人が現れる。ライリーを幼いころから見守ってきた5つの感情たちが、いわば人間の核となる本能的な感情であるのに対し、新たに登場した4つの感情たちは、思春期特有の他者との関係から生まれるものであることが大きなポイント。シンパイ率いる大人の感情たちによって、司令部から追放されてしまったヨロコビたちが、未知の感情の嵐に翻弄されるライリーを救うために、力を合わせて冒険の旅を繰り広げる。

人間にはいろいろな感情があり、どの感情も必要で、大事なものだと教えてくれた前作に続き、今作に込められたメッセージは、過去の失敗も欠点もすべてひっくるめて、いまの自分を前向きに受け入れることの大切さ。エモーショナルで美しい物語はきっと、人生の転機や、いくつもの挫折を経験してきた大人の心にこそ響くはずだ。

■知らない作品はない!ピート・ドクターのすごすぎるキャリア

ここからは、ユニークで魅力あふれる物語を生みだしてきた、ドクターの経歴を見ていこう。彼は、カリフォルニア芸術大学(カルアーツ)でキャラクター・アニメーションを学んだあと、1990年、ピクサー・アニメーション・スタジオに入社。ピクサーには、ストーリーを練り上げたり、効果的でないシーンを分析したりする、ブレーン・トラストと呼ばれるチームが存在する。メンバーに求められるのは物語を語る才能だ。当初のメンバーは5人で、ドクターはそのなかの1人だった。

ピクサー・スタジオ、そしてドクターにとって、記念すべき特別な作品といえば、やはりピクサー初の長編アニメーション映画『トイ・ストーリー』(95)だ。世界初の全編3DCG長編アニメーションでもあった本作で、ドクターは監督のジョン・ラセターと共に、ストーリーやキャラクター作りに加えて、スーパーバイジング・アニメーターも務めた。

おもちゃの仲間と彼らが大好きな少年アンディの物語。人間味を与えられたおもちゃたちの視点から、物語が語られるという設定がユニークで、その年最高の興行収入を記録しただけでなく、感動的なストーリー展開と表情豊かなキャラクターが批評家たちからも絶賛を浴びた。ドクターは本作ですでに、スクリーン上でキャラクターの繊細な感情を表現する手腕を発揮。世界中の人々に愛された『トイ・ストーリー』は、その後シリーズ化し、4作目まで製作された。

ドクターが長編映画監督デビューを果たした『モンスターズ・インク』(01)は、人を怖がらせることが仕事の毛むくじゃらのモンスター、サリーと、人間の女の子ブーの思いがけない友情を描いた笑いと感動の物語だ。ラセターから「自分がやりたい企画」を考えるように求められたドクターが、“クローゼットに隠れたおばけの話”というアイデアをひらめいたことから生まれた作品である。本作は、ラセター以外が監督を務める初のピクサー映画でもあり、公開当時のドクターの年齢は弱冠33歳。相当なプレッシャーがあったはずだが、自身が原案を担当した『トイ・ストーリー2』(99)を抜き去り、世界興収5億ドルを超える大ヒットとなった。ちなみに、本作でドクターは日本食レストランの寿司職人の声を演じている。

29世紀の荒廃した地球を舞台に、感情が芽生えたゴミ処理ロボットの恋と友情を描いたSFストーリー『WALL・E ウォーリー』(08)では原案を担当。第81回アカデミー賞では、ピクサー作品として過去最多の6部門でノミネートされ、長編アニメーション賞を受賞した本作の翌年に公開されたのが、ドクターの長編監督作品2作目であり、ピクサーにとって『トイ・ストーリー』から数えて10作目の長編となる『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)。

最愛の妻を亡くした老人カールが、都市開発によって、妻との思い出がつまった家の立ち退きを要求され、無数の風船を家に結びつけて、家ごと冒険の旅に出る。アニメーション映画でありながら、主人公は人生終盤の78歳のがんこで無口なおじいさん。旅の相棒は8歳の少年ラッセルという年の差70歳のコンビも類を見ない設定だった。

キャラクターたちの感情をとことん掘り下げ、人間の生き方をユニークな視点から見つめ直す物語は、ドクター作品の真骨頂。本作は第82回アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞したうえに、実写映画もすべて含めた最優秀作品賞にもノミネートされたことで話題を集めた。

ちなみに本作で、カールじいさんの亡き妻エリーの少女時代の声を演じたのは、ドクターの娘であるエリザベス・ドクター。後に彼女が『インサイド・ヘッド』誕生のきっかけになったことを思うと、感慨深いものがある。

ピクサー長編アニメーション20周年記念作品でもあった『インサイド・ヘッド』以来、5年ぶりにピート・ドクターがメガホンをとり、原案、脚本も手掛けたのが『ソウルフル・ワールド』(20)だ。ドクターが「23年の歳月をかけて製作した」とコメントした本作は、ジャズ・ピアニストを夢見る音楽教師のジョーが、ある日、人間が生まれる前のソウル(魂)の世界へと落下してしまい、そこで出会った人間嫌いのソウル・22番と共に地上に戻るために奮闘する物語。

『インサイド・ヘッド』で“人間の感情”の不思議さを見つめたドクターが、さらに奥深い“ソウル(魂)”という深遠なテーマに挑み、「あなたにとっての人生のきらめきとはなに?」と観る者に優しく問いかけるハートウォーミングかつ野心作ともいえる。

列挙すればきりがないほど、数多くの名作に携わってきたピート・ドクター。現在はピクサーのすべての映画を監修するなど、クリエイティブ面のトップとして活躍し続けている。ピクサー創業当初から作品づくりに深く携わり、スタジオの発展と共に歩んできたドクターは、キャラクターに魂を吹き込み、なによりもストーリーを大切にするというピクサーの哲学を体現する存在だ。彼が率いるピクサーのさらなる快進撃を今後も期待したい。

文/石塚圭子

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6/17(火) 14:07更新

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