小栗旬が映画『フロントライン』で考えた真実を知ること、見極めの大切さ。「ちゃんと疑わなきゃいけないってことなのかな」

MOVIE WALKER PRESS6/6(金)20:00

日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での実話を基に、未知のウイルスに最前線で立ち向かった医師や看護師たちの闘いをオリジナル脚本で描いた映画『フロントライン』(6月13日公開)。

DMATの指揮官・結城英晴として、そして役者、小栗旬としても考えることの多かった現場だったという
DMATの指揮官・結城英晴として、そして役者、小栗旬としても考えることの多かった現場だったという / [c]2025「フロントライン」製作委員会

2020年2月横浜港、乗客乗員56か国、3,711名。あの船で、一体なにが起きていたのか。100名を超える乗客が症状を訴えるなか、出動要請を受けたのは災害派遣医療チーム「DMAT(ディーマット)」。地震や洪水などの災害対応のスペシャリストだが、未知のウイルスへの対応は専門外の医療チームだった…。目の前の乗客の命を優先して行動するDMATの指揮官の結城英晴を小栗旬、厚生労働省の役人の立松信貴を松坂桃李、現場で対応にあたるDMAT隊員の真田春人を池松壮亮、実動部隊のトップでDMATの事務局次長の仙道行義を窪塚洋介が演じている。

■「報道で知っていたこととのギャップに驚きました」

豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での出来事をニュースで知っていたつもりだったが、実際には知らないことだらけ。作品を通して知った“事実”とのギャップに衝撃を受けたと振り返った小栗。「薬が不足していることをニュースで見た記憶はあるけれど、それがどんなふうに収束したのかは、正直追いかけていなかった。映画に出てくる隔離可能な施設への移送シーンも事実に基づいているけれど、自分はニュースで観たのかな?という感じではっきり記憶になくて。とにかく知らないことだらけだったこと、報道で知っていたこととのギャップに驚きました」と正直に明かす。

【写真を見る】DMATの指揮官と厚生労働省の役人を、それぞれ演じた小栗旬と松坂桃李のタッグも見もの!
【写真を見る】DMATの指揮官と厚生労働省の役人を、それぞれ演じた小栗旬と松坂桃李のタッグも見もの! / [c]2025「フロントライン」製作委員会

コロナの脅威が世界で広がりつつあるころ、小栗は海外にいた。「アメリカでは日本よりも早い3月中旬くらいから本格的なロックダウンが始まって。本当に世界が終わっちゃった…みたいな雰囲気でした。外出できるのは一家で一人。スーパーマーケットはいつも長蛇の列だし、ゴム手袋をしていないとお店のなかに入れないし、そもそもお店のなかにも5人くらいしか入れない。早く日本に帰りたいけれど帰れない。やっと帰れたと思ったら日本で緊急事態宣言が出ていて、仲間はみんな仕事もなくてやることがないみたいな状況。いったいなにが起こっているんだろうという気持ちでした」と当時を振り返り、不安のなかにいたことを覚えていると語る。

作品を通して知った“事実”とのギャップに衝撃を受けたと振り返った
作品を通して知った“事実”とのギャップに衝撃を受けたと振り返った / [c]2025「フロントライン」製作委員会

「一方で、ダイヤモンド・プリンセスに関しては、日本側が受け入れる、受け入れないとか、船が日本にウイルスを持ち込んだみたいな話になっているわけじゃないですか。本当に難しいですよね…」と劇中の結城のような苦渋の表情を見せる。映画では、もしも自分だったら…と考えさせられる場面に何度も出くわす。「この状況で正義を定義するのはすごく難しいこと。でも結城たちには一人でも多くの人を救いたいという思いがあってひたすら目の前の人を救っていった。医者という仕事においてのある種の矜持みたいなものを見せてもらったと感じています。実際、モデルになった阿南先生をはじめ、あの現場にいた人たちは、できる限り人を救うのが自分の仕事だと一貫しておっしゃっている。普段はとてもユニークで、映画のほうがマイルドに描かれているくらい、かなり強烈な個性を持った方たちだけど(笑)、でも、そんなみなさんが映画を観て号泣したと聞いたら、やっぱり作ってよかったなと思いましたね」。

■「言ったもん勝ちみたいなものを見るのはやめておきたい」

 小栗旬がいま、知りたいこととは?
小栗旬がいま、知りたいこととは? / [c]2025「フロントライン」製作委員会

真実を見極める力や自分で考えることの大切さを気づかされる場面にも遭遇する作品だ。「見極めることが難しい世界になっていると感じています。フェイクニュースや謎の記事を気づかずに信じてしまっていることも正直あったりするので、知りたいことは自分で調べなきゃいけないなって心から思いました。まさにこの映画のプロデューサー増本(淳)さんのスタイルですよ(笑)。知りたいことは自分の足で知りにいく。それがいいと思うと同時に、そうするしかなかった時代は本当によかったなと思ったりもします」と、便利すぎではなかった時代に思いを馳せつつ、「やっぱり、世界のことをちゃんと疑わなきゃいけないし、自分のことも疑わなきゃいけないということなのかな」と、与えられた情報をそのまま受け入れるのではなく、あふれる情報の海に溺れないためにも、しっかりとした思考力、判断力を持つことが大事だと感じているとも話していた。

作品を重ねて小栗旬に生まれてきたマインドとは
作品を重ねて小栗旬に生まれてきたマインドとは / [c]2025「フロントライン」製作委員会

情報に踊らされないようSNSなどからはなるべく離れるようにしているという小栗。「言ったもん勝ちみたいなものを見るのはやめておきたいなと。映画では桜井(ユキ)さんが演じた上野を通してマスコミ、報道のあり方が描かれています。見てもらうためにというのはわかるけれど、そのために拡大して切り取ってしまっていいのだろうかとは思いますよね。もちろん、映画には描かれていない大きなトラブルやミスも実際にあったとは思うんです。でも、それって誰もが起こしたくて起こしたものではない。ある意味の作戦ミス、戦略としてうまくハマらなかったということだけなのかもしれないわけで。船内で動いていた人たちは、当時、周囲からなにを言われるかわからない状況で必死に向き合っていたことは事実としてある。その事実を責めてしまっていたかもしれない自分がいたことを感じてほしいし、振り返って考えてほしいと思っています。これは、僕自身が事実を知るまでに誤解をしてしまっていたと感じる部分があったことを踏まえての正直な気持ちです」と、自身にあった誤解も正直に明かしたうえで、映画に込めた思いにも触れていた。

真実を見極める力や自分で考えることの大切さに改めて気づかされる作品
真実を見極める力や自分で考えることの大切さに改めて気づかされる作品 / [c]2025「フロントライン」製作委員会

SNSとは距離を置いているとしながらも、ツールがプラスに動くことも理解していると笑顔を見せる。「たくさんの人に観てほしいからこそ、『観たい!』と思ってもらえるような宣伝の仕方を考えなければいけないと思っています。観てもらえればわかる作品だけど、そう伝えるだけでは映画館に来てもらえないから(笑)。いまの時代を生きるうえで、ましてや作品などの宣伝をするという意味では、SNSってうまく付き合っていかなきゃいけないものではある。わかってはいるんですけれどね…」としみじみ。

■「役者という仕事はまだまだ僕にはわからないことだらけです」

本作を通して、真実を知ること、見極めの大切さについて改めて考えさせられたという小栗が、いま、知りたいこと、興味を持っていることはあるのだろうか。「『アドレセンス』というドラマを観たばかりというのもあって、子どもたちが生きる社会に非常に興味があります。自分が思っている以上に、大変な社会を生きているんだなと思いました。彼らが生きていく社会は僕らがわからないことだらけなんだなと。例えばSNSもそう。生まれた時から当たり前にあるものだし、彼らの世界で比重を持っていることも理解できる。やるなとも言えないし、かといってどっぷり浸かってほしくもない。作品を観た直後なので正直、子どもが大きくなるのが怖くてしょうがない」と顔を覆い、親の顔を見せる場面もあった。

「正解がないから答えが出ない。役者のおもしろさであり、わからなさでもある」と笑顔を見せていた
「正解がないから答えが出ない。役者のおもしろさであり、わからなさでもある」と笑顔を見せていた / [c]2025「フロントライン」製作委員会

胸を張って届けられる自信作であり、作品を作れたことを誇りに思っていると語る小栗。撮影現場では結城として、そして役者・小栗旬としていろいろなことを考えたという。「俳優という仕事は、どんなに考えても答えが出ない。正解がないことだから、いつになっても答えが出ないし、それを追い求めている限りは俳優でいるんだろうなとも思っています。そこに興味がなくなったら、もう俳優を離れる時という気もしています。今回の現場は『お芝居をする!』とか『情熱的にやる!』というのとはまた違ったんですよね。やりがいを感じて終わるような瞬間が、実はほとんどなくて。すごく印象に残っているのは船の上で立松と電話をするシーン。ワンカットで撮ったシーンだけど、撮影はさらっと終わってしまって(笑)。もちろん準備はたくさんして現場に入ったのだけど、すぐにOKが出て、『え?もう終わり?』みたいな。

答えを追い求めている限りは「役者」を続けていると明かした、小栗旬
答えを追い求めている限りは「役者」を続けていると明かした、小栗旬 / [c]2025「フロントライン」製作委員会

でも、増本さんを筆頭に、すごくいいシーンだったという声もたくさんもらっている。僕の手応えと観た人の反応が合っていないから、やっぱり役者ってわかんないなって改めて思いました。逆にやりがいを感じた時ほど、ダメな芝居だったこともたくさんあるしね」と苦笑い。役者として考えたことに対しての明確な答えは出ないままだが、考えることを積み重ねてきた結果、生まれたマインドがあるという。「自分に期待しないのが一番って思うようになりました。自分に期待しちゃうと、なにかあった時にものすごく落胆しちゃうじゃないですか。あんまり期待していなければそんなに落ち込まなくて済むし、そういう時ほど褒められたりするんですよね。役者という仕事はまだまだ僕にはわからないことだらけです」。

取材・文/タナカシノブ

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6/16(月) 23:41更新

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