「今年は作る気なかった」備蓄米生産のコメ農家の思いは…“事実上”の減反政策?コメ価格は今後どうなる

MRO北陸放送6/16(月)20:28

随意契約の「政府備蓄米」について、石川県内で見られた“令和の米騒動”を取材しました。コメの価格を抑える救世主となるのでしょうか。

店の前にできた長蛇の列の先には「備蓄米、入荷しました!」の文字。6月10日、県内で最初に販売を始めたのは、ドラックストア・クスリのアオキでした。

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備蓄米を買い求める主な理由はやはり、各家庭の懐事情です。
「コメ代がすごく高いから。石川県、遅かった」
「できれば今まで買っていたお米も、これくらいになってくれたらうれしいけど」(買い物客)

クスリのアオキに続き、備蓄米を県内最安の価格で販売を始めたのは「ラ・ムー」でした。

インパクトのある「5キロ2000円」…35袋完売までわずか1分

大黒天物産 森安真人 バイヤー
「随意契約、5キロ2000円というかなりインパクトのあるニュースが流れて。ディスカウントストアとして商品を安くお客様に提供するのは我々の使命だと思い、手をあげました」

ラ・ムーを運営する岡山県の大黒天物産は、2022年度産の備蓄米、いわゆる「古古米」を随意契約で政府から1000トン購入しました。

入荷した備蓄米はすぐさま工場で精米され、石川県内の店舗には今月13日に到着。販売価格は、5キロあたり税込み1980円です。

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午前6時前、野々市市のラ・ムー野々市北店に届いた備蓄米は125袋。24時間営業のラ・ムーでは、混乱を避けるため販売時間を事前に告知せず、備蓄米が入荷次第、すぐさま店頭に並べます。

ラ・ムー野々市北店 青山周平 店長
「まずは90袋。お客さん待たれているので買ってもらえるかと思います」

早速、並べられたばかりの備蓄米を手に取った男性は。
「ここは24時間営業なので、じっくりここで待てばいいと思って3時間待ちを覚悟してきた。早速食べます」

一方、ふだん食べ慣れている県産米の値下がりを期待する声も。
「今5キロ4000円位じゃないですか。3000円位になってほしいですね」(買い物客の男性)

その後も、備蓄米は順調に売れ続け…特に事前の告知もなく、入荷次第すぐに店頭に並べられた備蓄米でしたが、2時間あまりで完売となりました。

その後も続々と備蓄米を求める客が売り場に集まります。

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この状況をうけ、バックヤードに保管されていた残る35袋が店頭に並べられました。すると…大勢の買い物客が集まり、わずか1分ほどで、最後の1つに。
「最後ですか?」Q最後かと…「やった!」

ラ・ムー野々市北店 青山周平 店長
「お客さんが来られるという予測はしていたがここまで需要が高まっているのは備蓄米への関心が高いのかなと。今後(入荷が)どうなるかもわからないのでお客様にご迷惑かけないように提供できれば」

「随意契約」の備蓄米を巡る盛り上がりの裏で、今年4月下旬から流通している「競争入札」の備蓄米をめぐっては、こんな問題も…。

“国産米”とだけ記載…1・5倍の価格で転売

「スーパーよりも1・5倍以上の値段で取引されています。国産米とだけ表記されていました」
大手フリマサイトで転売されていたのは、県内のスーパーで5キロあたり3500円前後で売られている備蓄米のブレンド米。

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発送元は「石川県」と表記され、販売価格5480円という高値で転売されたことがわかります。

小泉進次郎 農水大臣
「コメの高値での転売は更なる米価の上昇につながるため、望ましいことではありません」

政府はスーパーやネットで売られているコメについて、購入価格よりも高く転売することを禁止しましたが、備蓄米をめぐる混乱は今しばらく続きそうです。

“5キロ2000円”のコメ 確かに店頭には並んだが…


コメを中心とした食料品の価格高騰は、私たち消費者にとって喫緊の課題です。国会の党首討論でも立憲民主党の野田代表は、食料品の消費税率を臨時的にゼロにするべきだと主張しています。これに対し、石破総理は財源としての消費税の重要性を強調し「賛同しかねる」としたうえで、「実際に2000円のコメがスーパーに並ぶようになった。……物価は着実に下がります」と答えています。

ただ取材の中で気になったのは、備蓄米があっという間に売れてしまい、すぐさま高値の銘柄米のみが並ぶ売り場に戻ってしまったことです。

政府が言うようにスピード感を持って店頭に並びはしたものの、コメの値段が下がることへの期待感よりこの政府備蓄米は、銘柄米とは“別物のコメ”だと消費者が感じている印象を受けました。

コメの価格はどうなる?…備蓄米を作っていた生産者は


物価と消費者ニーズに敏感なバイヤーや、県内の生産者は備蓄米の放出をどう受け止めているのでしょうか。大黒天物産の森安さんは、北陸地方のコメのニーズについて以下のように分析します。

大黒天物産 森安真人 バイヤー
「報道でも今ある銘柄米が値下がりと出ているけれども、すぐに今店頭に並んでいるものがどんどん値下がりしていくという実感はすぐにはない」「特に北陸は米どころでもあるので石川県産米が良い、富山県産米が良い、銘柄米が良いと思われる人が一定数いると思うので自然と差別化されていく」

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石川県小松市でコメを作る西野満治さん。自身が保有する21ヘクタールのうち、およそ13パーセントにあたる2・7ヘクタールの水田で、去年まで「備蓄米」を作っていました。

品種は、県産の早生品種・ゆめみづほ。

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西野ファーム 西野満治さん
「備蓄米というのは減反分の中の1つ。それを主食に代わって作ることによって減らしたのと同じ風にみなしますよ、と」

備蓄米は、主食米以外に分類され、入札を経て、政府が買い取る仕組みとなっています。また、麦や大豆など主食用のコメ以外の作物を生産する農家に国から交付金が支払われます。これらは主食米以外の生産を推奨する「事実上の減反政策」だという指摘もあります。コメ農家の競争力を高めるため2018年に減反政策は終了したはずですが。

西野ファーム 西野満治さん
「補助金を出すということは(主食米を)減らすことを奨励しているということだと思う。(例えば)他の人は10トン取れているのになんで同じ面積で8トンしか取れないの?と。2トン市場に売ったんじゃないかという話になるので、そういうことがないように全部こうきちっと管理されている」

ゆめみづほ(備蓄米)の文字


備蓄米の生産では、国や自治体が定める面積当たりの「コメの生産目標」を守る必要があります。西野さんは、今年の作付けで交付金が出る作物を作る面積を1・5ヘクタールまで減らしたうえ、備蓄米も作っていません。その理由は。

西野ファーム 西野満治さん
「今年は最初から備蓄米を作る気はなかった。主食米の方が価格が高いので、経営判断として。(備蓄米放出では)たぶん銘柄米は下がらないと思います、一時的なものかなって。コメが足りんの?ってよく聞かれるけど普通に取れとるし」

収束の兆しを見せない“令和の米騒動”ですが、西野さんはコメの生産コストにも目を向けてほしいと話します。

西野ファーム 西野満治さん
「農機具が年に3回くらい値上がりしたり、田植えの時期だけで軽油何千リットル使っているけど油が上がっていたりとか…正直僕らはそんな儲かっているつもりはない。自分で価格は決めれないので決める人に決めてもらうしかない」

「今後のコメ価格」カギを握るコメ農家の“経営判断”


コメ農家の西野さんの話に「主食米以外の作物を作れば国から交付金が支払われる」とありましたが、これは「水田活用の直接支払交付金」と呼ばれるものです。コメ農家は、自身が保有する水田で主食米以外の作物、具体的には麦・大豆・もち米あるいは家畜のエサなどを作ることで、その作付け面積に応じて国から補助金がもらえます。西野さんは、これらに備蓄米の水田を加えた土地で、「主食米以外の作物」を作っていました。

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この減反分が国による「生産調整」にあたり、“事実上の減反政策”という指摘があります。そのため、ほとんどの農家が減反分の水田をすぐさま主食米に転換できるわけではありません。しかし今回取材した西野さんのように、農家が生産する作物の種類を自身の「経営判断」でより自由に選べるように変われば、市場に出回る流通量が増え、結果的にコメの価格低下につながるかもしれません。

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