およそ250年の歴史と伝統ある長唄三味線の魅力を日本はもちろん、世界に発信し続けている女性の家元に密着しました。新型コロナウイルスの影響が続く中、伝統を守りながらも新たな発想で挑戦を続ける三味線演奏家の奮闘を追いました。

 舞台の中央で繊細に、しかも力強く三味線を演奏する今藤長十郎さんは4歳で初舞台を踏み、30代で人間国宝の父から4代目「今藤長十郎」を襲名しました。演奏家として活躍する一方で三味線の普及にも尽力し、日本全国で子どもたちに三味線教室も開いています。海外にも活動の場を広げ、2019年にオーストリアで行われた公演ではウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のチェロ演奏者と共演し、「音楽の都」ウィーンで高い評価を受けました。

 世界的に感染が拡大する新型コロナウイルスは、長十郎さんの活動にも影響を与えています。10月に音楽の殿堂として世界的に知られるアメリカ・ニューヨークのカーネギーホールでの公演を予定していましたが、翌年に延期する決断を下しました。しかし、落ち込んでいるだけではなく新たな試みに挑もうと、27回目となる11月14日の公演で動画配信をすることを決めたのです。動画配信について、長十郎さんは三味線の魅力を発信する新たな方法として期待を寄せます。

 本番当日、会場には長十郎さんの演奏を待ちわびたたくさんの客の姿がありました。この日はコロナ対策として500ある座席を半分以下のおよそ200席に減らし、2時間半にわたって、自ら作詞作曲した新曲を含む3曲を披露しました。また、初めての動画配信では細部に至るまで魅力を伝えようとカメラを5台用意し、プロに頼んで本格的な撮影をしました。

 長十郎さんが披露するのは「長唄」という三味線音楽の中でも人気の高いジャンルです。長唄は唄と三味線に加え、鼓や笛との合奏を基本とする音楽です。長十郎さんは「配信はコロナだからこそやろうと思ったこと。今後もいろいろな取り組みをしていけたら」と話しています。