東京都内の中小企業の振興策を考える有識者会議が東京都庁で開かれ、円安の影響で高騰する資材と取引先の間で苦しむ中小企業の現状が共有されました。

会議には東京都と中小企業団体の代表らが参加し、東京商工会議所が2023年12月に行った都内中小企業の経営実態に関する調査が取り上げられました。

調査によりますと、円安などの影響で原材料のコスト負担が増えたと答えた企業は全体の70%以上を占めていて、うち増加分を取引先への価格に完全に転嫁できたのは全体の10%程度にとどまっているということです。

有識者からは円安によるコスト高と取引先との板挟みになる、中小企業の苦しい事情が伝えられました。

東京都中小企業団体中央会 會津健委員:「会員組合から販売価格への転嫁は応じても、より安価な他社製品への切り替えを検討する取引相手もある。同じ製造業でも業界によって対応がかなり異なるなどの報告も寄せられている」

東京都は今年度、中小企業支援に約4750億円の予算を計上していて、今回の会議で出た意見を今後の取り組みに生かすとしています。

<円安続くも価格転嫁は困難「ここまで厳しくなるとは…」>

多くの企業が円安によって利益を失う中、深刻な状況の真っただ中にいるという大田区の町工場を取材しました。

「ここまで厳しくなるとは、そこまで厳しくなるとは思っていなかった」と話すのは、大田区矢口でダイヤモンド工具を製造する町工場「インターナショナルダイヤモンド」の江口國康社長です。生産するダイヤモンド工具は原材料を海外からの輸入に頼っていて、続く記録的な円安により大きな影響を受けているといいます。

江口社長:「材料の価格上昇は近年、今までないぐらいの状況になってきている。14年ぐらい前の為替の水準でいくと、倍ぐらいになっている」

材料費は高騰し続けるものの、業界全体として製品価格に転嫁することが難しく、先行きの見えない厳しい状況だと話します。

江口社長:「どうやって生産効率を高めて安く作っていくことができるかに尽きるが、既に乾いた雑巾を絞り切っているような状況なので、どうやってコストを下げていくことができるかというのが非常に大きな問題」

<円安 企業の6割超が利益マイナス>

日米の金利差などを背景に2021年以降急加速している円安が、企業にどんな影響を与えているのかアンケート結果を基にみてみます。

帝国データバンクが5月10日から15日にかけて1000を超える企業を対象に行ったアンケートでは「円安によって売上高がプラスに働いた」というのは16%にとどまり、マイナスの影響が35%となっています。そして利益で見ると、プラスとなったのは7.7%で、63.9%がマイナス影響だと回答しています。

原材料価格の上昇が避けられない一方で、多くの企業で商品に価格転嫁することが難しいのが現状です。為替は一企業ではどうすることもできない問題ですから、東京都としても4750億円の予算で中小企業の経営基盤強化に取り組むということです。厳しい影響を受ける企業への有効な対策が打ち出されることを期待したいものです。