アストロバイオロジーセンター(ABC)は5月17日、太陽系外のホット・ジュピターなどの恒星を短周期で公転する巨大ガス惑星が、太陽系の惑星で最も強力な磁場を持つ木星よりもさらに強力な数十から数百ガウスの磁場を持ち、磁場生成とその強さは中心核(コア)の存在と密接に関係していることを明らかにしたと発表した。

同成果は、ABCの堀安範 特任助教らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

惑星の磁場は、内部に存在する導電性流体の運動で生じる電流を介して形成・維持されると考えられており、それは「ダイナモ理論」と呼ばれている。ダイナモ駆動によって生じる磁場は「固有磁場」と呼ばれ、太陽系の惑星では地球のほか、水星、木星、土星、天王星、海王星で確認されている。

その強さは、地球の場合、赤道付近では0.3ガウスほどで、最も強いのが南極域における約0.66ガウスだ。太陽系の惑星で最大の強さを持つのは木星で、地球の16〜54倍の強さ。平均するとおおよそ7.766ガウスとされている。

導電性流体は地球と巨大ガス惑星(木星・土星)、氷惑星(天王星・海王星)では構成する物質などが大きく異なることも知られている。地球では、ドロドロの流体とされる鉄・ニッケル合金でできた外核がその役割を担う。木星と土星では、2000K・100GPa以上の高温高圧の特殊な環境下でのみ存在できる電離した水素が金属的に振る舞う「金属水素」層が、強大な磁場を生み出す原動力となっている。そして天王星と海王星の巨大氷惑星では、これもまた高温・高圧環境下でしか存在できない水の特別な“相”である「イオン水」の領域が磁場生成の役割を担っていると考えられている。このように、惑星磁場の有無や強さは、惑星内部の熱的および物理状態と密接に関連しているのである。

こうした太陽系内の惑星について研究が進展すると同時に、観測技術が向上してきたことで、系外惑星の磁場の検出も試みられるようになってきた。2020年には、オランダ電波天文学研究所が運営する電波望遠鏡「LOFAR」により、地球から約50光年の距離にある「うしかい座タウ星」を短周期で巡るホット・ジュピターの「うしかい座タウ星b」(公転周期約3日、質量木星の約6倍)からの電波放射の兆候をとらえたという報告がされている。

そのうしかい座タウ星に、「HD 179949」、「HD 189733」、「アンドロメダ座ウプシロン星」を加えた4つの恒星はどれもホット・ジュピターを従えている。そして、その表面活動の時間変化がホット・ジュピターの公転運動と同期していたことから、太陽系外のガス惑星における磁場の存在を間接的に検出することに成功したとされている。これらのホット・ジュピターは、木星よりも強力な数十ガウスから数百ガウス程度の磁場を持つ可能性が示唆されているという。

なぜ電波によって磁場があるのがわかるかというと、惑星から放射される電波には磁場が関わっているからだ。主な電波放射機構として、「シンクロトロン放射」と「サイクロトロン放射」の2種類がある。シンクロトロン放射は、惑星磁場中の電子の加速度運動で生じる比熱的な電波放射だ。一方のサイクロトロン放射は、別名「オーロラ電波放射」とも呼ばれる。惑星の磁場に沿って運動する電子からの電波放射(=電子サイクロトロン不安定)で、電子の進行方向に集中する性質を持つ。

今回の研究では、系外惑星からの電波検出を見据えて、惑星磁場の情報から、未解明の部分が多い系外惑星の内部を探る手法が検討された。ホット・ジュピターやそれよりも小型な「ホット・サターン」などの短周期巨大ガス惑星が注目され、その形成後から100億年間にわたる熱史の中で、惑星内部の磁場生成と磁場強度の変化についての分析が行われた。

その結果、木星の約50%以上の質量を持つホット・ジュピターでは、惑星磁場の発生と強度は、中心核の大きさなど、惑星の内部構造にあまり影響を受けず、数十から数百ガウス以上の強力な磁場を保有する可能性が高いことが確認された。

一方、土星質量(木星質量の約30%)以下のホット・サターンでは、中心核が小さすぎると、誕生から数千万年(最大で数億年)ほどは磁場が生成されないことが判明したという。つまり、土星質量以下の短周期ガス惑星における磁場の有無は、惑星内部のコアに関する手がかりとなるとする。

以上から、観測的に示唆される通り、ホット・ジュピターでは太陽系の地球や木星と比べて、強い磁場が長時間維持されている可能性が高いことが明らかとなった。強力な固有磁場を保有すると理論的に予想される太陽系外のホット・ジュピターでは、中心星からの激しい高エネルギー粒子(主に、恒星風やコロナ質量放出に伴う電子)の照射にもさらされることから、地球や木星、土星で観測されているよりも遥かに激しいオーロラ現象が生じていかもしれないとしている。

なお、地上の望遠鏡でこうした系外惑星のホット・ジュピターの強力な磁場を観測しようとしても、現在の電波望遠鏡では観測が困難である可能性があるという。それは、地球の電離圏に存在するプラズマによって遮断されてしまう可能性が高いためだ。

しかし、アルマ望遠鏡以来の国際的な大型電波望遠鏡である「SKA」(Square Kilometre Array)など、将来の電波望遠鏡であれば検出が期待できるという。こうした高性能な新型電波望遠鏡が稼働を開始すれば、より多くの系外惑星の磁場に関する情報が得られるだろうとしている。

2021年5月20日訂正:記事初出時、研究者のお名前を誤って苗字を抜く形で記載しておりましたので、当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。