金沢大学は9月17日、知的能力に重度な遅れのない、自閉スペクトラム症を持つ3歳から8歳の児童の心理検査・知能検査のデータを解析し、コミュニケーション能力の1つである「共同注意」の異常が大きいほど、知能が低くなることを確認したと発表した。

同成果は、金大附属病院 神経科精神科の佐野滋彦助教、金大 医薬保健研究域医学系 精神行動科学の菊知充教授のほか、子どものこころの発達研究センターの研究者も加えた研究チームによるもの。詳細は、自閉スペクトラム症および密接に関連する神経発達障害を扱う学術誌「Autism Research」に掲載された。

海外でのこれまでの研究から、神経発達障害の1つである自閉スペクトラム症(ASD)を持つ児童において、ヒトにおいて生後半年ほどから見られる、他者とコミュニケーションするための能力の1つである「共同注意」という脳機能の異常と知能の関連性が指摘されている。

共同注意は、例えば幼児が自分の気になるものを指さして、母親などにも見てもらおうとするなどの行動で表されるもののことで、自閉スペクトラム症児においては、こうした行動の出現する年齢が遅かったり、出現する頻度が小さかったりするなどの異常が見られるという。

しかし、過去の研究では、対象を知的能力に重度の障害を持つ児童と中心としていたことから、共同注意の異常と知能の関連が、ASDを持つ児童すべてにおいて見られるものかどうかは不明であったという。そこで研究チームは今回、知的能力に重度の障害を持たない児童を対象に、共同注意の異常と知能の関連を調査することにしたという。

今回の調査で対象とされたのは、ASDを持つが、知的能力に重度の障害を持たない3〜8歳の日本人児童113名。心理検査で評価される共同注意の異常と、知能検査で評価される知能の関連に対し、統計解析での評価を実施したところ、これらの児童において、共同注意の異常が大きいほど知的能力が低くなり、両者の間に統計学的に有意な関連があることが判明したという。これは過去の海外の研究と一致する結果であり、ASDを持つ児童において、知的能力障害の有無と無関係に、共同注意の異常と知能が関連することが確認されたという。

なお、今回の研究成果により、ASDを持つ児童全般において、共同注意を改善する治療を行うことで知能も高めることができ、将来の学校や社会における適応を改善していける可能性が示唆されたと研究チームでは説明しており、今後は介入研究を行い、共同注意を改善することで実際に知能が高まるのかどうか、検証していく必要があるとしている。