広報いいで(山形県飯豊町)

2021年9月号

■『てるてる坊主』
後藤幸平

天高く馬肥ゆる秋とばかりに晴れわたる好天と思いきや突然雲行きが変わり土砂降りの雨が、とまた思い出したように太陽が顔を出す。さっきから雨のち曇り晴れを何度も繰り返している。この季節はとにかく安定しないのが日本の常識である。女心と秋の空のことわざを思い出して辞書を引くと、男心と秋の空の故事の方が先にあったなどと解説されているから真相はよくわからない。
こんな天気であれば一番困るのが、お祭りの建元だったり、花火大会の主催者だったりだ。野外でするはずのビアガーデンを公民館の室内に変更しようかと悩み、バーベキューの炭火はどこに移そうかと混乱を重ねていつの間にか酔いが回り、雨でも晴れでもこうして飲んで歌えればいいのだと、にぎやかに夜が更ける。どこか懐かしくもある夏の終わり、秋の始まりの風景である。
しかし、いまは気まぐれな天気とは別の不安が社会を覆っている。九月十二日まで通常の二分の一の行動にしてほしいと山形県のコロナ対策本部から県民に行動ガイドラインが示された。まるで悪い夢を見ているようだ。でもこれは夢ではなく現実である。雨が降り続くとき、子どもたちは晴れを祈っててるてる坊主を軒先にさげた。子どもたちの心意気に習ってどんな時でも明日への期待と希望を忘れないようにしたい。気持ちを切り替えて前に向かおう。
中国やインドのそのさらに西の国アフガニスタンの状況がリアルタイムでテレビの画面に映し出される。恐怖に震える人々や子どもたちの姿を知る。私たちにできることは何だろうか。SDGsの持続可能な町を目指し、誰一人取り残さないなどと理想を掲げているというのに。ここはてるてる坊主を作るばかりではなく、できることから始めようか。
対立と憎悪を武力や罵(ののし)りで解決しようとしない、自分さえ良ければの考えを捨てる、民族の歴史を学び尊厳を失わない、力で資源や環境を買いあさらないなどすべきことは多い。理想が口先だけでないか、てるてる坊主はじっと無言で見ている。

(17:パートナーシップで目標を達成しよう)