あだち広報(東京都足立区)

2020年11月10日号

平成24年の区制80周年記念事業として始まった「文化遺産調査」。以降、区内の多くの「名家」から、貴重な美術資料が発見されており、「美と知性の宝庫足立」と称した展示会を行ってきました。本特別展では、「石出家」「日比谷家」から新たに発見された、希少な美術品や歴史資料を中心に展示。世界的にも貴重な作品を間近で見られるまたとない機会です。ぜひお越しください。
期間:11月29日から3年2月23日(月曜日休館。祝日の場合は開館し翌日休館。12月28日から3年1月4日休館)
開館時間:午前9時から午後5時(入館は4時30分まで)
入館料:200円 ※団体(20人以上)は100円。70歳以上または中学生以下の方は無料
アクセス:亀有駅北口から東武バス(八潮駅南口行き)に乗り、「足立郷土博物館」下車徒歩1分など

■広報番組!
3年1月に「名家のかがやき」をJ:COM(ジェイコム)チャンネル足立で放映予定。お楽しみに!

■文化も支えた郷士(ごうし)たち
江戸時代、足立の農地を開いたのは郷士(★)たちでした。彼らは学問や書画文芸にも精通しており、江戸の武家文化を代表する狩野派の絵画をその生活の中で広めるなど、文化の担い手となっていました。「石出家」「日比谷家」は、現在の足立区の礎(いしずえ)を築いた中心的な郷士の家柄で、足立の歴史を語る上では欠かせない名家です。
★武士の身分のまま農業に従事していた者や、武士の待遇を受けていた農民

□石出家(濱田家)
石出家は千住大橋建設に尽力し、「千住のまち」をつくった一人である石出掃部介吉胤(いしでかもんのすけよしたね)(名字帯刀(◆)を許された千住宿の総代)を祖先にもつ名家。現在、地域交流・アートの場として活用されている「仲町の家」は吉胤子孫の別邸。江戸中期ごろから埼玉県杉戸町の濱田(はまだ)家と代々交流し、深い縁戚関係にあったため、同一の名家と見なされている。
◆名字を名乗り、太刀を腰に差す武士の特権

□日比谷家
徳川家康(とくがわいえやす)から好遇を受けていた郷士の家柄で、現在の梅島・島根・中央本町地域の開発に当たった日比谷小左衛門(ひびやしょうざえもん)を祖先にもつ名家。もとは、北条(ほうじょう)家の家臣であり、鎌倉幕府の終焉に伴い、この地に移り住んだと考えられる。日本で最初の和独辞書「和獨對譯字林(わどくといやくじりん)」を出版した日比谷健次郎(ひびやけんじろう)は北辰一刀流(ほくしんいっとうりゅう)の免許皆伝であり、剣術道場を開き、幕府講武所(武芸訓練機関)とも連携していた。「武術英名録」には土方歳三(ひじかたとしぞう)と並んで名前が記載されているなど知勇を兼ね備えた名家。

■世界に数点の名品
「西王母(せいおうぼ)・東方朔図屏風(とうぼうさくずびょうぶ)」狩野探信守政(かのうたんしんもりまさ)当館蔵 濱田家伝来資料
解説:狩野探信守政は狩野探幽(かのうたんゆう)(江戸前期に活躍した狩野派の絵師で、江戸絵画の基礎を作ったとされる人物)の三男。二つの屏風が対となっている江戸前期の作品で、間近で見ると細部の描写や鮮やかな色彩が美しく、時間を忘れて見入ってしまう。現存する守政の屏風作品は世界でも10点に満たず、大変希少な逸品である。西王母は古代中国の仙女(せんにょ)。宮殿の庭には3,000年に一度実がなる桃の木があり、実には不老不死の効能があったという(西遊記で孫悟空が盗もうとした桃としても描かれている)。その桃を盗み800年生きたという伝説を持つ男が東方朔。桃をささげ持つ仙人の姿で多くの画家が長寿を願うおめでたい画題として描いている。

■墨絵の名筆
「雲龍図(うんりゅうず)」
高田円乗(たかだえんじょう)
当館蔵 石出家伝来資料
解説:黒雲から姿を現す龍を、巧みな墨の濃淡で描いた一作。高田円乗は、江戸後期の狩野派の絵師。石出家には円乗に弟子入りした人物がいたことから、円乗の作品や絵手本が多く伝わっており、このような狩野派の資料がまとまって残っている例は、全国的にも稀である。

場所・問合せ:郷土博物館
【電話】03-3620-9393
東京都足立区大谷田5丁目20−1郷土博物館