広報かさい(兵庫県加西市)

2021年6月号

■高橋順一 Jyunichi Takahashi
1978年生まれ。北条高校卒業後、大阪で就職。IT系ベンチャーや商社、通信会社などを経て、2018年に就農。2016年から家族で加西にUターンしている。現在、「たかはし農園」の代表。

5月号からスタートした表紙「キラリびと」。地域で活躍されている方を毎号ご紹介します。
第2回は、トマト農家の高橋順一さん。ご家族で大阪からUターンし、夫婦二人三脚でトマトを栽培しています。高橋さんにとって「これまでの人生の集大成」と語った『加西とまと』づくり。若くしてさまざまな経験を経て、トップ営業マンから農業に転職されたきっかけ、Uターンされた加西市の魅力、そして栽培のこだわりについて、お話を伺いました。

■トップ営業マンからトマト農家へ
▽「営業」は天職
「高校の時は、1日7時間ギターを弾いてた。音楽の道で生きて行こうと思ってました。でも、入った専門学校では上には上がいて挫折しました」。専門学校卒業後、IT系ベンチャー企業にアルバイトとして入社。「営業は自分にとって天職だと思いました」。最終的には部長まで昇りつめられます。その後、自ら情報システム会社を起業されます。「夫婦でがんばりました。でも、常に不安が付きまといました。20年、30年後まで続けられるのか」。会社を縮小し、経営を奥さまに任せ、高橋さんは、NTTのグループ会社に就職。そこで持ち前の営業経験を生かし、新人賞、社員特別賞を次々と獲得。支社を全国1位へ導いた立役者となります。

▽決断。大阪から加西へ
子どもが3歳になり、高橋さんは、子育てする環境がここでいいのか考え出します。同時に田舎への憧れ、農業への興味がわいてきます。「営業でたまたま加西に来てたんです。車の窓から見えた畦道の草に癒されたんですよ」。2016年、大阪から実家のある加西市に引っ越しました。都会生まれの奥さまも快諾してくれたそうです。

▽「どうにかなるやろ」妻も同じ考えでした
農業の思いが強くなっていく高橋さん。会社までの通勤時間は、農業関連の本を読みふけったそうです。
その時、転勤命令(栄転)が下されました。「これで、就農を決意しました。これまで二人でがんばってきた経験から、どうにかなるやろと思ってました」。2017年3月に退職、翌4月より農家としての道を進まれます。
「加西に帰ってきて、『加西とまと』を食べたら、すっごいおいしくて、これだと思いました」。トマトに決めたもう一つの理由は、逆にその難しさだと言います。「栄養成長と生殖成長とのコントロールが特に難しくて、これはやりがいがあると」。2017年9月より兵庫県立農業大学校の実践研修に参加されます。そこで、現在、師匠と仰ぐ農家の方との運命的な出会いがありました。「時々研修指導に来る人で、先生と真逆のことを言われる人がいたんですよ。直感でこの人だと思いました」。この方との出会いで、10年先まで進めることが出来たということです。
2018年9月に現在の地、常吉町で農業経営を始められました。

▽こだわりは「くんたん」
試行錯誤の連続だったようです。師匠のアドバイスももらいながら、徐々に栽培が軌道に乗り、今年から、農地の全体を使用し、2作にチャレンジしています。「こだわりは土です。厳密にいうと土でなく、くんたんを使用しています」。「難しいのはpH(ペーハー)調整と肥料のバランス。適切な対策をしないと枯れてしまうので真似できないです」とのこと。データを取りながら天候の変化で調整しています。今年の梅雨が例年より早いのも誤算らしいです。「みんなが(生産を)落とされる時はチャンスとも言えます。がんばりたいです」と気持ちを込めました。

▽喜びはお客さんの声
「最初はぜんぜん売れませんでした。みんな、人(生産者)の名前を見て買うんです」。努力を重ね、少しずつリピーターが増えていっています。お客さんから声をかけてもらうことが一番うれしい瞬間と言われます。

▽就農を目指す若者へ
「加西市は、気候が温暖な瀬戸内気候だが、朝夕の温度差が大きいのでトマト作りに適している。それに災害も少ない。自然の中、虫や鳥の鳴き声を聞き、季節を感じながら作物を育むことが出来るのがいいです」と微笑みながら語ってくれました。
これからも、美味しいトマトを作り続けてください。

・トマト本来のコクと酸味の少なさが高橋さんのトマトの特徴。いわゆる「昔ながらのトマト」を目指されています。
かさい愛菜館やイオンモール加西北条などで購入できる。
・看板犬のプッチちゃんは家族の人気もの。「フレンチブルドック繋がりでトマトも買ってくれるんです」プッチちゃんの“営業力”も飼い主譲り。