広報やつしろ(熊本県八代市)

2021年5月号

■刀剣にみる武将の美学
◆刀(かたな) 無銘(むめい) 雲生(うんしょう)
国指定重要文化財 鎌倉時代 松井文庫所蔵

武士にとって刀剣(とうけん)とは、実用の武具(ぶぐ)であると同時に家の誉れであり、武士の美学を象徴する存在でもありました。
松井文庫には、現在三十七口(ふり)の刀剣が伝えられています。平安時代後期から室町時代までに制作された「古刀(ことう)」が多く、日本刀の五大産地を網羅する多彩さに加え、武士の本質をわきまえた実用性のあるコレクションとして高く評価されています。
一方、刀剣を納める拵は、趣向の異なるものを複数所持し、ファッションアイテムとして楽しみました。
松井文庫の拵は、肥後で制作された「肥後拵(ひごごしらえ)」。鮫皮(さめかわ)や朱漆(しゅうるし)など素材の持ち味を生かした塗鞘(ぬりさや)に、肥後の金工師(きんこうし)が手がけた渋好(しぶごの)みの金具が目を引きます。
本紙の写真は、松井文庫の刀剣を代表する「刀無銘雲生」(国指定重要文化財)です。実用と美しさを兼ね備えた鎌倉時代の名刀で、よく練れたきれいな地鉄から雲生(うんしょう)作と鑑定されています。雲生は、鎌倉時代後期に備前国津高郡宇甘(つだかぐんうかい)(現岡山市北区)で活躍した刀工(とうこう)。同じ備前でも、長船(おさふね)派とは作風を異にし、むしろ山城(京都)の来(らい)派や備中(岡山県西部)の青江(あおえ)派の影響が見られます。
八代市立博物館では、6月6日(日)まで春季特別展覧会「八代城主松井家の武器と武具」を開催しています。松井家の刀剣を堪能する滅多にない機会です。ぜひ来館ください。

八代市立博物館未来の森ミュージアム
学芸員 石原 浩