全国の職人が熟練の技術を競い合う「第32回技能グランプリ」(厚生労働省など主催)が2月、北九州市で開かれ、長崎県から2人が銀賞を受賞した。30ある競技職種のうち、婦人服製作で西彼時津町で洋裁教室を開く馬場明子さん(67)が、紳士服製作で南部洋服店(長崎市五島町)の南部光伸さん(48)がそれぞれ輝いた。本県選手の銀賞受賞は22年ぶりで、2人同時受賞は初めて。
 技能グランプリは製造、建設、繊維などに関する職種で、それぞれの技能検定で特級などに合格している技能士が出場可能。都道府県ごとの選手団が開催地に集い、2年に1度開かれている。職種ごとに金、銀、銅などのメダルが贈られるほか、30職種を分類した4部門でそれぞれ内閣総理大臣賞が選ばれる。
 今回は計約380人が出場し、うち婦人服製作は24人、紳士服製作は6人。いずれも課題のジャケットを2日間の計10時間で仕上げ、丁寧な作業と技術、スピードが求められた。
 2人は今月、県庁を訪れて馬場裕子副知事に受賞を報告した。
 馬場さんは6度目の挑戦。母の勧めで短大の被服科に進学。学校に着ていく服はすべて自分で製作していた。卒業後は知人の注文を受け製作していたが技術に自信が持てず、夫の転勤で引っ越した関東では、いくつかの教室に通っていたという。
 ある先生に勧められ、6度目の挑戦で2009年に国家試験1級を取得。8年ほど前に本県に戻ってからも含め、5回グランプリに出場した。直近2大会は入賞できず悔しい思いを味わったが、年齢を考え今回で最後と決めて出場した。
 一緒に技能向上に励む教室の生徒らの支えがあったといい、「一緒にチャレンジする仲間がいたから頑張れた」。試験やグランプリに挑戦する後進の育成に一層力を入れたいと話す。
 1912年から続く紳士服オーダー専門店4代目の南部さんは、2度目の出場。出場資格の国家試験1級を取得直後の2011年に初めて挑んだが、入賞には届かなかった。
 父の博さん(79)と二人三脚で店を営みながら別のコンテストでも経験を積み、今回出場を決意。課題は前回出場時と同じストライプ柄のジャケット。シルエットの美しさなどが評価されリベンジを果たした。
 南部さんは「チャレンジしないと失敗も、成長や成功もない。大人もチャレンジすることが大事だと思った」と感想。「3度目の正直で、次は一番良い賞を」と、次の大会を見据えていた。