長崎市は、昨年4月に鈴木史朗市長が就任して以降、急速に進む人口減少への対策に積極的に取り組んでいる。民間の知恵も借りながら施策を戦略的に展開するため2026年度まで3カ年の「アクションプラン」を今年2月に策定。その背景や施策の方向性を鈴木市長に聞いた。

 −長崎市の人口は既に40万人を割り込み、国立社会保障・人口問題研究所は2050年には約28万人まで落ち込むと推計している。
 若者に関して、進学や就職などで市外に転出する一方、市内への転入は減少しており、転出超過に陥っている状況は深刻だ。魅力的な雇用の受け皿が少ないのが大きな理由だろう。20代、30代の子育て世代が少ないため、出生数の減少も著しい。これらをいかに食い止めるかが課題だ。

 −今のペースで人口減少が続けば、将来の市民生活や地元産業にどのような影響が生じるか。
 公共交通など社会サービスが縮小し、さまざまな分野で担い手が不足するだろう。自治会など地域コミュニティーの機能は低下し、空き地・空き家が増加。道路などインフラの維持は難しくなり、学校の統廃合も進む。地域経済の市場が縮小し、活力がそがれる。

 −アクションプラン策定で重視した点は。
 「経済再生」と「少子化対策」を車の両輪に据えた。現在から将来世代まで豊かな暮らしを持続させる「サステナブル」、今以上に国際化を図る「グローバル」、生産性向上などにつなげる「デジタル」の3つのキーワードを長崎市の強みとし、人、企業、投資を呼び込みたい。各施策はPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルで効果を検証する。

 −長崎経済をけん引してきた造船業に代わる産業として期待する分野は。
 特に四つの分野を意識している。
 まずは観光・交流。高付加価値のサービスを推進し、客1人当たりの消費単価を高めたい。例えば長崎市は同じ被爆地の広島市に比べて、消費単価が高い欧米系の旅行者が少ない。広島市と連携して「平和観光」のプロモーションを準備している。
 次に、従来の造船業の強みを生かし海洋関連産業の脱炭素化を推進。新たなビジネスチャンスを見いだしたい。三つ目はデジタル産業。長崎大や県立大ではIT人材が育成されている。この強みを生かしIT企業の集積を図る。四つ目は生命科学。長崎大には国際的にも顕著な研究実績があり、関連する産業の育成に取り組みたい。

 −少子化対策にはどう取り組むか。
 先にも話した通り魅力的な雇用の受け皿がないことが、子育て世代の転入が進まない大きな要因となっている。そうした意味では経済再生が最大の少子化対策と考えている。
 それ以外の少子化対策もしっかり進めたい。(結婚や出産などに関する)価値観は多様化しており、個人の意思を尊重することが大切だ。その上で今以上に子育てを支えるコミュニティーを築きたい。
 住みやすさもあらゆる手段で追求していく。行政が大きな役割を果たせるのは規制緩和の部分。例えば住宅供給ではマンションなどの建設で容積率拡大などを実施してきた。今後も魅力的な住宅を供給できるよう施策を検討したい。空き家をリノベーションして、若い世代に安価で提供する民間の取り組みなども後押ししたい。

 −人口減少対策で県と連携できる部分は。
 これまでも移住支援や企業誘致などに共に取り組んできた。本年度は高度IT人材をバングラデシュから呼び込む事業を県、長崎大と進めており、引き続きしっかり連携したい。