九十九島を巡る遊覧船みらい(174トン、乗客定員200人)が、2023年4月初旬から運休している。九十九島遊覧は、以前は2隻体制で運航していたが、新型コロナウイルス禍で乗客が減り1隻体制に。コロナ禍後も遠のいた客足が戻らず燃料の価格高騰などにも見舞われ、2隻体制復活の見通しは立っていない。
 遊覧船は佐世保市鹿子前町の九十九島パールシーリゾートを運営する第三セクター「させぼパール・シー」が運航。みらいは2015年4月に就航し、02年から運航していたパールクイーン(199トン、乗客定員280人)と2隻体制で市民や観光客らを楽しませてきた。
 遊覧船事業部によると、コロナ禍は通常一日1隻の運航体制にして、みらいとパールクイーンが交互に運航していた。コロナは収まったが、客足は以前ほどには戻らず、経費を抑えるため、23年度からは乗客定員が多く燃費がいいパールクイーンを運航させ、みらいを運休させることになった。
 みらいの運航再開の一応の目安は遊覧船の乗船者数が25万人を見込めること。みらいが就航した15年度には約40万人と過去最高を記録。それ以降も18年度までは30万人以上の乗船者数を維持していた。しかし新型コロナの影響で20、21年度は約10万人にまで減少。新型コロナが収まりを見せた昨年度は約19万人まで戻ったが今後の状況は「読めない」という。物価高で個人旅行を控える傾向にあることや、佐世保を訪れるクルーズ船客のとりこみに苦戦していることなどの事情があるからだ。
 また、燃料費やドックで受ける修理、検査などの費用も価格高騰の影響で跳ね上がっている。みらいの船舶検査の効力は昨年4月下旬に失効。検査を受けないと停泊中でも船内に乗客を入れることはできないため、停泊中にイベントを開催することもできない。職員らは運休してから船の劣化を防ぐため塗料の塗り直しや船底の付着物の清掃、定期的なエンジン起動などを行っている。
 来年は、みらい就航10周年、西海国立公園指定70周年と大きな節目を迎える。遊覧船事業部の福田久美子部長は「2隻体制で九十九島観光をけん引してきたので現状は残念。しかし収支改善のため当面は運休せざるを得ず、みらいの運航再開も慎重に判断したい」とした上で「営業、宣伝に注力して集客を増やし、来年に向け少しでもいい流れをつくりたい」と話した。