5月22日は「ほじょ犬の日」。22年前、身体障害者補助犬法が成立した日です。落とした物を拾ったりドアを開けてくれたり、手足に障害がある人をサポートする「介助犬」。愛知県にある介助犬の訓練施設で、5年ぶりに採用された新人研修生を取材しました。
「介助犬」トレーナーの養成は5年ぶり
愛知県長久手市にある「シンシアの丘」。ここでは、手足に障害がある人の生活を手助けする「介助犬」のトレーニングが行われています。
落としたものを拾ったり、冷蔵庫の中からペットボトルをとってきたり、服を脱がせるのを手伝ったり…。
障害がある人の手や足となり、日常生活をサポートするのが介助犬の仕事です。
「シンシアの丘」では、介助犬をトレーニングする「トレーナー」などを目指す研修生3人が今年4月に採用されました。
研修生の採用は、コロナ禍の影響で2019年から見合わせが続いていましたが、5年ぶりに入ってきた“新人”3人の活躍に期待が高まっています。
「人と犬の両方の役に立てる仕事がしたい」
研修生として採用された福岡県出身の山口まなかさん(25)。小さい頃から、とにかく動物が大好きだったといいます。
そんな中、福祉関係のボランティアに参加するうちに、介助犬などの補助犬について知る機会がありました。
「人と犬の両方の役に立てる仕事がしたい」とトレーナーを志望するようになった山口さん。
ゴールデンウィーク最中の5月上旬。福岡から愛知に単身で移り住み、研修所での生活にも慣れてきたころの山口さんですが、“訓練の壁”にぶつかっていました。
この日行われていたのは、介助犬をトレーニングするための基本動作を学ぶ研修です。
思うようにいかない研修…教えたい動作と違う!
「マグネット」と呼ばれる、磁石のように、人が手に持っている餌を犬になめ続けさせる方法で、犬に「おすわり」や「ふせ」などの動作を覚えさせる方法を学びます。
山口さんもチャレンジしますが、「ふせ」の姿勢に誘導したいのに、「おすわり」の姿勢になってしまうなど、なかなか思うようにいきません。
「手の位置が少し高いから座っちゃう」(研修担当のトレーナー)
手を差し出す高さについて、数センチ単位の細かな指導が入ります。
「『うまくいかなかった』という感情が犬に伝わってしまい、もっとできなくなるという悪循環になってしまった。」(山口さん)
「介助犬」は盲導犬や聴導犬と同じく「補助犬」の1種に位置付けられています。
厚生労働省によると、日本全国で活動している介助犬は、わずか58頭(2023年10月時点)。
一方で、潜在的に介助犬を必要としている人は1万5000人いるといわれています。
圧倒的に数が足りていないのが現状です。
「犬のことを1番に考えられるトレーナーになりたい」
犬は人間と同じように、得意なことや苦手なことが違うため「個性や性格に合わせるのが難しい」といいます。
介助犬のトレーニングには、犬1頭1頭の個性や性格を見極め、それに合わせてトレーニングをしていくことが求められます。
「犬のことを1番に考えられるトレーナーになりたいです。その子の個性に合わせることによってトレーニングが楽しいものだと思ってもらえるようにしたい」(山口さん)
山口さんは今後、9月まで、犬のトレーニングの方法を実践的に学んだり、犬や障害がある人について知識を深めるための講義を受けたりするなど、研修を重ね「トレーナー」としてのデビューを目指します。
メ〜テレ記者 福田真依