去年以降、相次いで誕生した東海3県の「女性の自治体トップ」。ただその数は、男女均等には程遠い現状があります。

岐阜・岐南町 後藤友紀町長

 岐阜県岐南町の後藤友紀町長、47歳。2人の子どもを育てる、母親です。

 「ハラスメント問題」で揺れた岐南町。

 前の町長の辞職に伴う4月の町長選では「変化」を訴えて初当選し、県内42の自治体のうち、「唯一」の女性トップとなりました。

 岐阜県では、34年ぶりのことです。

町長になって実感したことは?

町の関係者らとの会議で、女性は町長ひとり

 町長になって2カ月。

 仕事をする中で実感したのは、「周りの女性の少なさ」だといいます。

 「総会や懇親会、会議でメインになるのが男性」(後藤町長)

 この日は、町の関係者らとの会議に出席。

 出席者17人中、女性は町長ひとりでした。

 「政治家を務めるなかで思うのは、一緒に仕事をする人が女性ばかりではない。特に政治社会というのが、割と男性が多い業界かなと思う。私が男性だったら、そうやって言われないだろうなという局面は結構ある」(後藤町長)

東海3県で誕生した女性の自治体トップは5人

東海3県の女性の自治体トップ

 去年から今年にかけて、東海3県で相次いで誕生した「女性の自治体トップ」ですが、全体を見てみると、125の自治体があるうち、女性トップは現在5人。

 後藤町長と、愛知県碧南市の小池市長は、今年4月に当選したばかりです。

 今月には岐阜県池田町と愛知県東郷町でも町長選がおこなわれましたが、池田町は女性の候補者はいませんでした。

 また東郷町は当初、30代の女性が立候補を表明していましたが、SNSでの「若い・女性しか取り柄がない」「町民を舐めている」などの誹謗中傷がきっかけで体調を崩したことが、立候補を断念した大きな理由のひとつだといいます。

町長選立候補に、家族の反応は…

町長選に女性が立候補したのは、町政67年で初

 岐南町でも、町長選に女性が立候補したのが町政67年のなかで初めてのことです。

 Q.町長選挙に立候補することを伝えたときの家族の反応は
 「『迷惑だからやめてくれ』と言われた。自分は良いが、支える家族はすごく負担があるだろうなと」(後藤町長)

 かつては、専業主婦だった後藤町長。

 保護者として、PTA役員などを経験するうちに町政に興味を持ち始め、8年前から議員になりました。

「子育てとの両立」の難しさ

子育てとの両立の難しさ

 子どもたちにとって、よりよいまちにしたいと、反対する家族を何とか説得して、町長選に挑みましたが、実際に町長になって感じたのは、やはり「子育てとの両立」の難しさでした。

 「家に帰る時間が遅くなったり、休日も仕事があるというなかで、子育てには休日はないわけで。仕事と家庭を両立していくところで、私一人ではできないことが増えた」(後藤町長)

 共働きしている夫や、同居の両親と協力しながら育児はしているものの、町長として出席しなければならない行事や会議は、議員時代より大幅に増えたといいます。

 「子どもか仕事かのジャッジをしないといけないことが、すでに環境が整ってないのではないかと」(後藤町長)

女性が政治家に「なりにくい」背景

男女の地方議員へのアンケート

 内閣府の調査によりますと、「議員活動と家事や育児の両立が難しい」と感じている地方議員は、男性が14%ほどなのに対し、女性は約34%にのぼります。

 家事・育児の役割を女性が担うことが多い傾向にあることが、女性が政治家に「なりにくい」背景にあるとみられます。

 今、6月定例議会が開かれている愛知県。

 102人の県議会議員のうち、女性は8人にとどまります。

 わずか7.8%で、全国で5番目の少なさです。

 女性議員の「少なさ」について、大村知事は――

 「女性の育児・介護を男性とシェアすることが一番だと思うが、実際、選挙に立候補するかは本人の判断になると思うので、環境を整備することが必要」(愛知県・大村秀章知事)

「政治は男性社会」というイメージ

セミナー参加者(30代)

 その愛知県で先週、民間企業で働く女性管理職らを対象にしたセミナーが開かれました。

 政治への興味について、参加者に聞いてみると――

 「男性がやってきてくれたおかげかもしれないが、女性の意見は反映されにくいというか、そういう部分は感じる」(参加者・30代)

 「子どもを育てながら、どうやって選挙に出るのだろうとか。まだまだ男性社会だなという印象があるので、企業以上に色んな壁がある」(参加者・30代)

 女性の多くは、「政治は男性社会」というイメージを持っているようです。

絵本で“無意識の思い込み”を払拭

絵本「はんなちゃんそうり」

 こうした状況を変えようと、動き出した人がいます。

 愛知選挙区選出の伊藤孝恵参院議員は、4月に絵本を出版しました。

 「はんなちゃんそうり」

 総理大臣になりたい小学1年の女の子「はんなちゃん」が、クラスメイトから「女の子は総理大臣にはなれない」、「女の子の総理大臣なんて変」と言われるところから物語が始まります。

 「どうして、こんなに女性議員が少ないのかを議員になるまで気づかなかった。愛知県なんて特にそうだが、町なかに貼っているポスターは大体、男性。生まれたときからそうだったので、疑問に思わないっていう」(愛知選挙区選出 伊藤孝恵参院議員)

性別による無意識の思い込みを解消

性別による無意識の思い込みを解消

 国会議員として働く中で、女性議員の少なさゆえに、女性の立場で感じる問題意識が伝わらない難しさに直面。

 これを変えるために、子どものころからの性別による無意識の思い込みを解消する必要があると考え始めました。

 9歳になる、伊藤参院議員の娘は将来の夢として、総理大臣か駄菓子店かユーチューバーで迷っているそうです。

「女の子だから」と諦める必要はない

愛知選挙区選出 伊藤孝恵参院議員

 子どもたちが純粋に思い描く「将来の夢」。

 それを「女の子だから」と諦める必要はありません。

 「子どもたちには、一生懸命勉強すれば何にだってなれるというふうに思ってほしい。女性でも総理になれるという、当たり前のことに気づいてほしいし、1回読んで飽きてもよいが、そんなことを言っていたなと、心に残ってもらえればうれしい」(伊藤参院議員)