ルイス・ロサスくんのご両親(ルイスさんとティナさん)は神道の結婚式を挙げたカップル!

11月15日は七五三の日だ。
七五三は、三歳の「髪置」五歳の「袴着」七歳の「帯解・紐落」のお祝いであり、子供を授けて下さった神様に子供の成長を感謝し引き続きのご加護を祈願する日。ところが、近年は、七五三は「着物を着て写真を撮るだけ」の日になっているようで非常に残念だ。

宮司として奉職するアメリカ出世稲荷神社(島根県松江市にある出世稲荷神社のアメリカ分祠(https://shintoinari.org/))では、毎年、着物サロンとコラボして七五三のご祈祷をご奉仕しているが、ご祈祷を依頼される方は着物サロンに申し込まれた方の約4分の1程度。大多数は、着物と写真のみで七五三の習慣を貫徹したと思われているようで、日本の伝統文化が失われつつあるのを実感する。
そんな中、今年は両親ともに日本に血縁関係のない家族からも七五三のご祈祷の申し込みがあり、嬉しくなった。

キカさんとキャサリンさんの息子ノヴァ・ダイアマくんはフィリピン系アメリカ人
7歳の七五三を御祝いしたエヴァ(愛羽)バズビーちゃんは、母親が日本人(由美子さん)、父親がアメリカ人(ジョン)
お祖母ちゃんのミシェル河田さん、お母さんのアリサ・カワタさんと親子三代で受け継いだ着物で7歳の御祝いをしたライラ・茜・ニーダムちゃん。50年以上前の着物とは思えない素敵な柄と美しい帯でした〜!

アメリカ出世稲荷神社は、社殿もなければ、決まった場所もまだない(皆様からのご協力をお願いします!https://shintoinari.org/get-involved/projects-building/)ため、七五三のご祈祷はレンタルスペースで行っている。秋祭りのタイミングでもあるので、七五三に加え、秋祭り、そして、今年は注連飾りワークショップも行った。

注連飾りワークショップの参加者。日本人は1人もいない……

神社のイベントは1人では不可能だ。毎回、ボランティアを募るのだが、率先して手伝ってくれるのはアメリカ人。また、祭の参列者も日本人は皆無だ。

ボランティアは、神道や日本に興味を持つアメリカ人たち

毎回、車で約2時間かけて手伝いに来てくれる超協力(強力!)ボランティアのアメリカ人の若者は、前世は絶対に日本人だったろうと思うほど、日本人っぽい
日本が大好きなこの若者は、名前をスカイ・ウィリアムスから、名字を涼風(すずかぜ)、名前を空(そら)に改名した。涼風というのは、叔父の奥さんの旧姓だという。

涼風空さん無しでは、神事が不可能!
搬入・設営・撤収・搬出、そして、神事のYouTubeライブ配信(https://www.youtube.com/channel/UCuCCDpv9-uTnwPWSFR3Q5hQ)の映像と音声のオペレーション、編集など全てを完璧にこなしてくれる!!

今回、カリフォルニア大学デービス校の学生4人が、車で6時間かけて手伝いに来てくれた。また、同サンタバーバラ校の大学院生も長距離バスとUberを駆使して来てくれたほか、サンタバーバラに住む神道稲荷会の会員も初日だけだったが、朝から夕方まで手伝ってくれた。
全員が日本と血縁関係はないが、神道や日本に興味のある人達で、何人かは片言の日本語を話す。

手水の作法を日本人参拝者に教える神道稲荷会メンバーのボランティア、ジャン・バードセルさん
ジャンさんは御朱印も集めている。秋祭りの御朱印

神社の活動をアメリカで開始して気づいたのは、欧米人の神道への興味と知識が、普通の日本人のそれを大きく上回っていること。
アメリカ出世稲荷神社には、崇敬会「神道稲荷会」があり、会員は現在約60世帯。居住国はアメリカだけでなく、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、アイスランド、南アフリカ、オーストラリアなど、文字通りグローバルだ。これまで日本人会員はいなかったが、カリフォルニア在住の家族が今月入会した。
 
お守りや御札も世界各国に発送している。ウクライナやイスラエルからもリクエストが来たのには驚いた。
ウクライナからの崇敬者に「みなさんご無事ですか? 郵便は機能していますか?」と聞くと、「私の住んでいるエリアは影響がほとんどありませんので、発送頂いて大丈夫です」とのこと。郵便は遅延があるものの機能しているようで、こちらからの郵便も無事に届き、先方からのお焚きあげの神札も2ヵ月かかったが届いた。戦争中でも、インターネットで連絡をスムーズに取ることができる事実に衝撃を覚え、祖父母や両親が体験した戦争とは様相が全く違うという現実を突きつけられた。当時は、家族の安否がまったく分からなくて辛かっただろう……。

ユダヤ系の親しい友人とハワイのヒロ大神宮に行った際、拝殿内に入っても友人は頭を下げることもなかった経験から、イスラエルからのリクエストには「家族も納得されていますか?」と発送前に問い合わせると「家族には内緒ですが、私は神道です」と返事が来た。
アメリカ出世稲荷神社のファンに神道に興味を持ったきっかけを聞くと、「キリスト教で育ったが、しっくりこなかった。アニメやマンガで神道を知り、非常に納得できる生き方だと思った。自分に合っていると思った」という返事がほとんど。そして、「キリスト教は、『〇〇をしてはいけない』というような、NGリスト、ネガティブ・リストばかり。一方、神道は『自然を、神々を、他者を敬いましょう』というようにポジティブな考えでとても良い」と、私自身、目から鱗な神道の考えに気づかされたことがある。教義・経典のない神道のNGリストと言えば、「不潔はダメ」「境内にゴミをポイ捨てしない」など、いわゆる常識のみだ。

今回、ルームメイトなど3人を誘って泊まり込みで来てくれたボランティアのスカイ・ペーシャさん。メキシコ系のルームメイト、デイジー・ロメロさんに手水の作法を説明
授与品テーブルを担当してくれた、グレイ・チェンさんと巫女志望のスカイさん。中国出身のグレイさんは日本語がかなり上手! 今回、車を提供してくれたのも彼だ

アメリカ人ボランティアとのやり取りで受けたカルチャーショックをご紹介しよう。
日本人で、特に島根人で、祭や祭壇を見たことがないという人はいないだろう。しかし、アメリカ人はそうはいかない。口頭と画像で説明して、祭や祭壇のイメージをつかんでもらうしかない。

サンタバーバラから空港バスを使ってLA入りし、泊まり込みで手伝ってくれたケイトリン・ユゴレツさん(写真右)は、大学院で神道の研究中。日本語ペラペラ! お父さんはキリスト教の牧師
寒風吹きすさぶ中、七五三の受付を手伝ってくれたデイジーさんと涼風ユキさん

日本人は、設営や撤収などで、いちいち指示をしなくても、周りを見て、テゴ(手伝い)が必要なところに駆け寄り、チームワークで素早く事を進める。神道の精神である共同体を大切にする文化があるからなのか、町内会のイベントや祭、学校の掃除などで慣れているからか??

ところが、アメリカ人にそれを期待してはダメ〜っ!一つ一つ指示をしなければいけない。それも事細かく。例えば、「あなたは、この緑のバッグをテントの中に持って行き、バッグを丁寧に置いて、開けて、中のものを慎重に取り出してください。お供え物を載せるテーブルですから、絶対に地面につけないでください。取り出して組み立てた後は、梱包材をバッグの中に戻し、バッグの口を閉めて、裏に持って行って下さい」という風に……。そして、別の人に向かって「あなたは、この人の手伝いをしてください」と作業を振り分けておかなければいけない。

自ら進んで「何をしましょうか?」という人は皆無だ。最初の頃は、こうした「いちいちの指示出し」は、差し出がましく失礼だと思っていた。また、長年、メディアの現場で仕事をしてきたために、指示を出さなくても動いてくれると思っていた。そうして、ボランティアがずっとおしゃべりしていて、結局、自分1人で全部やるハメになって頭にきていた。また、「現場に行ったけど、何も指示をされなかった。ぼんやり立っているだけで時間の無駄だから二度と行かない」と言われたりもした。

初日の直会は、松江出身の夫婦が経営しているレストランHASUの焼き鳥弁当を宮司のポケットマネーでご馳走

前述した超強力ボランティアの涼風さんは、いちいち指示を出さなくても、周りを見て、テキパキと作業を進められる人物。前世が日本人だと私が考えるのも納得いただけるだろう。
ある日、そのことを涼風さんに話すと、「アメリカの学校では、先生の指示があるまで、触ったり、作業をしたりしてはいけないという教育なんです。また、先生に許可をもらわない限り、むやみにいろいろ触ってはいけないことが多い」と教えてくれた。またもや目から鱗だった。

学生ボランティアは翌日の授業の都合で、最終日の直会は私と涼風カップルの3人だけになった。神道稲荷会メンバーの1人が直会代を寄付してくださった❤ ウエストLAのラーメン屋で。お疲れ様!

というワケで、最近は設営の手順を図解したファイルを事前に渡して、流れと全体像を掴んでもらい、役割分担もできるだけ細かく指示しておくようにしている。しかし、やっぱり設営に2時間以上かかってしまう……。

次回は、お正月のイベント。リトル東京に神社ブースを出す。7年近くやっているので、最近は「お正月にリトル東京に行けば、神社で初詣ができる」というのが定着してきたが、まだまだだ。時折、「日本からこのためにわざわざいらっしゃったんですか?」と聞かれてしまう……。
そして、もちろん!! テゴが必要!ぜひ、手伝いに来ていただければ助かります〜っ!そして、アメリカ分祠の社殿建立、不動産のご奉賛もお待ちしています〜!御利益ありますよ〜!!

お正月の神社ブースの様子。この日は、在米日本人も多く参拝する

著者:はせがわいずみ