世界各国で新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、旅行したり施設に入場したりする際に「ワクチンパスポート」が使われ始めている。すでに導入されたイスラエルなどの現状を紹介しつつ、公衆衛生上の“通行手形”に求められる機能や課題について、専門家に聞いた。

 イスラエルのオーレン・ローゼンフェルド氏は昨年、ドキュメンタリー映画制作者として、新型コロナウイルス感染症に関する何十もの映像を撮影してきた。しかし、いざ自分がテルアビブでワクチンを接種するとなると、写真を撮り損ねてしまった。

「看護師さんの動きがかなり速かったので。嘘の写真を撮りたくなかったから、2回目の接種まで待ちました」

 2回目の接種完了後、ローゼンフェルド氏はイスラエルの新型コロナウイルスワクチン接種証明書プログラム、「グリーンパス」へのアクセス権限を得た。ワクチン接種を受けた市民が、スポーツジムやレストラン、コンサート会場、映画館などに入場する際に要するものだ。

 このパスには、紙の証明書と、店舗や施設がスキャンできるコード付きのスマートフォンアプリの2種類がある。グリーンパスの保有者のワクチン接種が確認され、入場が許可されれば、スキャン後に緑色のチェックが表示される。

 イスラエルのワクチンパスポートは、この種のプログラムとしては世界で最も進んでいる。同国では成人の80%がワクチン接種を完了しており、このパスポートを得る資格を持っている。

 欧州連合(EU)も今夏、同様の「デジタルグリーン証明書」の発行を予定している。ワクチン接種、新型コロナウイルス検査結果、新型コロナウイルス感染症からの回復状況などの情報を、スキャン可能なQRコードにまとめ、住民が飛行機に乗ったり、加盟国の国境を越えたりできるようにする。

 米国では、ワクチン接種を受けたことを証明する唯一の手立ては、接種後に米国疾病対策センター(CDC)から発行される紙のカードだ。カードには、ワクチンの種類、接種日、接種場所などの医療情報が記載されている。世界保健機関(WHO)が黄熱の予防接種証明書として発行するイエローカードと類似している。

 しかし、一日も早く外国に渡航したい人にとって、このカードでは不十分かもしれない。アイスランドは3月、ワクチン接種済みの旅行者を受け入れるようになったが、当初はCDCのワクチン接種カードでは入国できなかった(現在は可)。CDCカードの偽物がネット上で販売されているとの報道もあり、再び外国旅行を楽しむためには、世界で信頼を得られる証明書を持つことが不可欠のようだ。

 いかにして機能的なワクチンパスポートを作成するか。また、パスポート内の個人情報をどのように保存し、共有し、保護するか。世界中の開発者が、目下そうした課題に取り組んでいる。

実際にはどんなもの?

 世界中の国々が、できる限り安全に、経済を開放し、人々が自宅や地元を離れられるようにする方法を模索している。そこで導入を検討されているのが、新型コロナウイルスに関連するその人の状況を証明できるワクチンパスポートだ。

 こうしたワクチン証明書がどのような形を取ることになるかはまだわからないが、デジタルアプリをワクチン接種記録と連携させ、国境や航空会社のチェックインカウンターで提示するためのツールがデジタルワクチンパスポートだ。データソースやデータの保存方法、表示内容などは、アプリを提供する組織や企業によって異なる。現在、多くのデジタルアプリが開発されているところだ。

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