米航空宇宙局(NASA)は4月16日、人類を再び月に送る計画で、月面に宇宙飛行士を着陸させる機体の建造をスペースXに委託したと発表した。「アルテミス計画」と呼ばれる今回の計画では、募集した宇宙飛行士をNASAの有人宇宙船「オリオン」に乗せて大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」で打ち上げ、月の軌道に届ける。そこから宇宙飛行士はスペースXのロケット「スターシップ」に乗り換え、最終的に月面への着陸を目指す。

 契約金額は29億ドル(約3100億円)だ。この未来的なデザインの宇宙船は、現在まだ試作段階であり、米テキサス州の施設で飛行試験が続けられている。今回の計画にはスペースXのほか、ジェフ・ベゾス氏が創業したブルーオリジン社(防衛企業ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、およびドレイパー研究所と提携)、米アラバマ州を拠点とする防衛企業ダイネティクスの2社も応募していた。

 NASAの野心的な計画、アルテミスのミッションと、スペースXが果たす重要な役割について、知っておくべきことは次のとおりだ。

NASAの「アルテミス計画」とは?

 2017年にトランプ政権下で発表され、2019年に名づけられたアルテミス計画は、1972年のアポロ17号のミッション以来、約半世紀ぶりに米国の宇宙飛行士を月面に送ることを目指している。月面に降り立つ宇宙飛行士には、初の女性および有色人種も含まれる予定だ。

 バイデン政権もこの計画の支持を表明している。ただし、トランプ陣営は2024年内の月面着陸を強く求めていたものの、NASAがこれに間に合わせるために必要とした予算は連邦議会で承認されていない。十分な予算が得られず、プログラムに必要なSLSロケット等の開発も遅れていることから、NASAは現在、有人月旅行が可能になる最短のスケジュールの見直しを行っている。その概要は次の通りだ。

 早くても2021年後半に打ち上げ予定のアルテミス1号のミッションは、オリオンとSLSによる無人の試験飛行となる。これに続くアルテミス2号は、SLSとオリオンを使用し、1968年のアポロ8号のミッションと同様に有人で月の周回軌道まで往復するが、着陸はしない。その後アルテミス3号がSLS、オリオン、そしてスペースXのスターシップを使って月面までの旅行を成し遂げる。

 月までの約40万キロの道のりを、宇宙飛行士はNASAの重量物打ち上げロケットSLSと、深宇宙探査船オリオンに乗って旅する。その後オリオンは有人着陸システム(HLS)にドッキングすることになっており、このHLSとして今回NASAが選んだのがスペースXのスターシップだ。HLSは最長で100日間月の軌道で待機し、到着した宇宙飛行士を月面に送り届ける。帰路ではクルーはスターシップに乗って月から飛び立ち、待機していたオリオンに移動して地球へ向かう。

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