水生昆虫をはじめ、無脊椎動物の中には呼吸のために水中に空気の泡を運ぶことがよく知られている。ところが、熱帯に暮らすトカゲも水中で、空気の泡を使って「呼吸」していることが判明、2021年5月12日付で学術誌「Current Biology」に発表された。

 研究によると、中南米に生息する6種のアノールトカゲは、水中で空気を吐いた際にできる泡を、頭にくっつけておくことができる。トカゲたちは、酸素を含んだこの泡を定期的に膨らませては鼻から吸い込んでいたという。研究チームは、この泡を実際に呼吸で使っているかどうかを確認するため、水中に15分以上潜るものも含め、30種以上のアノールトカゲを観察した。

 論文の第一著者で、カナダ、クイーンズ大学の博士課程に所属するクリストファー・ボッチャ氏は「この泡はリブリーザー(ダイビングで使われる循環式の呼吸装置)のような機能を果たしていると考えています」と語る。リブリーザーは、ダイバーが自分の吐いた空気を再度呼吸に使う装置で、これによりダイバーは水中に滞在する時間を延ばせる。

 なお、ボッチャ氏はナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーで、今回の研究はナショナル ジオグラフィック協会も支援している。

 オーストラリア、アデレード大学の生物学者ロジャー・シーモア氏は、トカゲの行動は、肺にたまった二酸化炭素を排出する助けになるのではないかと考えている。二酸化炭素は泡の大きな表面から水中へ逃げられるからだ。なお、シーモア氏もナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーで、今回の研究に参加していない。

 ボッチャ氏はさらに、酸素濃度の高い川では、泡が「えら」のような役割を果たし、水中の気体を取り込んでいる可能性にも触れた。ボッチャ氏はこの研究で、トロント大学の修士号を取得している。

身を守るために潜る

 熱帯には、色も大きさも多様な400種以上のアノールトカゲが生息する。特にユニークなのが、川に潜って捕食者から身を守る半水生のアノールトカゲだ。

 ボッチャ氏は研究のため、メキシコ、コスタリカ、コロンビアで半水生のアノールトカゲを捕まえ、観察して逃がした。半水生のアノールトカゲは、ヘビから逃げやすいように、しばしば枝の先端で眠る。「そのため、夜の方が見つけやすくなります」

次ページ:顔の周りに泡をつけた動画