1959年、建築家フランク・ロイド・ライトが設計したソロモン・R・グッゲンハイム美術館が米国ニューヨークにオープンすると、そのデザインに批判の声が上がった。いわく「ライトの洗濯機」や「巨大なスイートロール」といった具合で、ニューヨーク・タイムズ紙も「どちらも重傷を負った建築と絵画の戦争」と表現した。

 今では象徴となったそのデザインは、収蔵品だけでなく外観でも人々を魅了する美術館や博物館の先駆けとなった。

「ミュージアムはかつて、ギリシャの神殿やローマのパンテオンのような建造物を想起させるものでした」と、米ハーバード大学の准教授として美術、建築の歴史を研究するパトリシオ・デル・リアル氏は話す。ただし、こうした建造物は荘厳で威圧的であからさまにヨーロッパ主義的なものになりかねない。「社会の多元化に伴い、人々はさまざまな表現を求めるようになり、ミュージアムの形やイメージも変化せざるを得なくなりました」

 その結果、ローマ風の柱は過去の遺物となり、アルミニウムを格子模様にカットしたデイビッド・アジャイ氏による米国ワシントンの国立アフリカ系米国人歴史文化博物館や、球体のプラネタリウムが宙に浮かぶ中国上海天文博物館のような革新的なデザインが生まれた。2021年7月にオープンしたばかりの上海天文博物館を設計したトーマス・J・ウォン氏は「地球が太陽を周回するという実際の天文学的な動きを建物に与えることで、博物館を歩くことが教材になる」構想だったと説明する。

 21世紀に入り、印象的なミュージアムの建築ブームが起きたのは、ビルバオ・グッゲンハイム美術館に代表される「ビルバオ効果」によるものだと多くの専門家が考えている。1997年に開業したビルバオ・グッゲンハイム美術館は、フランク・ゲーリー氏が手掛けた官能的なガラスの曲線と輝くファサードによって、スペイン北部の都市ビルバオを現代美術の地図に載せた。

 かつてエッフェル塔やエンパイアステートビルが果たした役割と同じく、デザイン性の高いミュージアムは都市の輪郭や観光地としての魅力を一変させることに、人々は気付いたのだ。「美術館や博物館を訪れることは刺激的で思い出になるという感覚を人々は求めています」とウォン氏は話す。「美しい外観はそれを伝える助けになります」。建物の外でセルフィーを撮り、中では絵画や芸術作品を楽しむことができる。

 3Dモデリングや、洗練された素材や工具といった技術革新を取り入れた美術館や博物館もある。英国のV&Aダンディーでは、隈研吾氏が革新的なダムと精密なコンクリート板を組み合わせ、スコットランドの都市ダンディーのウォーターフロントに船のような新名所を誕生させた。

「これらの建築家の共通点は、象徴的な建物をつくることで観光客を呼び込みたいという気持ちです」とデル・リアル氏は語る。「都市が誇りに思い、喜んで受け入れる空間づくりを彼らは目指しています」。それでは、建物の外観と内部の収蔵品、展示の両方を見る価値がある16の美術館、博物館を紹介しよう。